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映画「女神の見えざる手」で読み解く現代アメリカ

どんとこい
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うえだしたお @YT1093

兄弟そろって暗愚のボケナスという個人的な見解はさておき、このバカな弟君はアメリカ有数の著名ロビイストである。1979年暮れから1980年初頭にかけて、リビアを三度も訪問したばかりか、リビア政府から当時のレート(1ドル240円)で22万ドルの貸付を受けている。

2018-04-21 23:19:44
うえだしたお @YT1093

リビアに武器を密売して訴追されたCIAエージェントによると、ビリーが報酬として受け取った金額は200万ドルという説もある。いずれにせよ、当時の政権を担っていた大統領の弟が、テロリストとして悪名をはせたカダフィの利益代表であったという事実は、なかなかの皮肉である。

2018-04-21 23:21:13
うえだしたお @YT1093

また余談だが、安倍晋三の父であった安倍晋太郎が1980年にアメリカを訪れた際に、通商代表とランチミーティングを開催している。この時に安倍(晋太郎)がスピーチを行っているのだが、ロビイストによる原稿料は当時のレートで5000ドル(120万円)だった。試験に出ない豆知識である。

2018-04-21 23:24:21
うえだしたお @YT1093

ちなみに、アメリカ政治において伝統的に対中政策が厳しかった時代には台湾のロビイストが暗躍していた。後述するのだが、対中東政策が今も厳しい背景には、某国のロビイスト団体がある。この組織は、悪の権化だと思われている全米ライフル協会よりも強力かつ、比肩する資金力を有している。

2018-04-21 23:28:42
うえだしたお @YT1093

さらに余談を広げておこう。ロシア政府には「東方シフト」という喫緊の課題がある。先日のシリア空爆にも深く関与していたように、ロシアにはウクライナやシリア紛争における失態が重くのしかかっており、現在も財政はきわめて危うい状況にある。かくしてプーチンは中国との経済協力を模索してきた。

2018-04-21 23:35:44
うえだしたお @YT1093

プーチン政権下において軍事費は4倍に増加しており、ロシアの輸出額に占めるエネルギー依存度はプーチン政権以前の39%から、現在では70%という水準にまで高まっている。こうした背景も相俟って、プーチンは東方経済フォーラムとウラジオストクの自由港化で局面の打開をはかっている。

2018-04-21 23:39:39
うえだしたお @YT1093

ロシアの経済成長には、9.11以降の「対テロ戦争」における米ロ共同戦線という背景があった。原油価格の高騰は急速な景気回復を招き、同時に、対テロ戦争ではチェチェン介入を黙認させる成果をあげている。ところがこうした偶然はそう長く続かなかった。米国の戦略転換と、リーマンショックである。

2018-04-21 23:43:17
うえだしたお @YT1093

米ロの蜜月は解消され、アメリカはサウジアラビアと接近する。過去に中米大使まで務めたバンダル王子(安全保障会議長官)とのパイプにより、急進的イスラム主義者の台頭を黙認、結果的にISの誕生を許してしまうのだが、一方で中東の混乱はイスラエルの安全と原油価格の高止まりを実現している。

2018-04-21 23:47:13
うえだしたお @YT1093

このあたりの背景にある「陰謀論よりもオドロオドロしい、面白い話」は今後の別の機会に譲るとして、とにかく、ロシアは苦境を脱するために東方への活路を見出している現状認識だけは共有しておきたいところである。

2018-04-21 23:49:19
うえだしたお @YT1093

少々端折るのだが、ロシアでは現在、軍制改革による安保上の理由と、極東開発という財政上の理由から「鉄道」への投資を余儀なくされている。極東開発省は東方経済フォーラムなどを通じて、外国人投資家からの投資誘致を担っている。他方で、運輸省は交通インフラ整備に注力している。

2018-04-21 23:54:02
うえだしたお @YT1093

ここに一枚の写真がある。左の人物はロシア鉄道の前社長、ウラジミール・ヤクーニンである。彼もまた実業家であり、ロビイストだった。 pic.twitter.com/WubO30Mfvw

2018-04-21 23:55:36
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うえだしたお @YT1093

ちなみにこの東方シフトなのだが、現時点でまったく進展していない(笑)

2018-04-21 23:56:45
うえだしたお @YT1093

国が変われば、ロビイストの役割もまた変わる。いずれにせよ、ロビー活動とは「請願権」の形をかえた実現であり、利益代表と議員とを調整する仲介者と言い換えることもできるだろう。「女神の見えざる手」を味わう前提には、こうした常識を理解しておく必要がある。

2018-04-22 00:00:40
うえだしたお @YT1093

ところで、作中で主人公の元同僚を演じているこの男性、なかなか悪役がさまになっている。マイケル・スタールバーグは主演のジェシカ・チャスティンの大学(ジュリアード音楽院)の先輩にあたる人物で、劇中では銃規制反対派のロビイストとして暗躍している。 pic.twitter.com/0RqZuBe62U

2018-04-22 00:03:57
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うえだしたお @YT1093

このおじさんの出演作でいちばん好きなのは、メン・イン・ブラック3の宇宙人(グリフィン:多次元解釈を得意として、あらゆる可能な未来を解読できるキーパーソン)である。 pic.twitter.com/gtXLkPymQV

2018-04-22 00:04:52
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うえだしたお @YT1093

「女神の見えざる手」におけるクライマックスで、上院聴聞会のはじめに証言を拒否する場面がある。憲法修正第5条=自己負罪拒否特権をめぐる議員と主人公のやりとりは、なかなか白熱した見どころである。なお、日本国憲法では第38条1項において保障されている。 pic.twitter.com/nLuFyitPpv

2018-04-22 00:09:53
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うえだしたお @YT1093

たまに「黙秘権と自己負罪拒否特権の違い」を尋ねられることがあるけれども、一般に憲法で保障された自己負罪拒否特権を実現するために、下位法での手続き=具体的には刑事訴訟法における「黙秘権」が存在しているのだ。

2018-04-22 00:11:27
うえだしたお @YT1093

なお、自己負罪拒否特権の制度趣旨にさかのぼって解説すると、専門的な解釈を一通り並べるだけでも丸一日かかってしまう。とくに不利益証拠の利用を禁止した法理とその制度化(いわゆる刑事免責制度)のあたりは、たぶん実務家に説明してもわかりにくい分野ではある。

2018-04-22 00:15:11
うえだしたお @YT1093

それに、自己負罪拒否特権と黙秘権のあいだには大陸法と英米法の違いを正しく整理する必要がある(糾問主義と職権主義の区別など)。とっても面倒な作業になるので、ぼくはやらない。実務にも関係ない。曲学阿世の徒らに任せておけばよい作業である。

2018-04-22 00:17:11
うえだしたお @YT1093

ところで、敵対する古巣のロビイストであるこの女性、前田敦子や地獄のミサワよりも顔面のパーツが中央に寄っている。 pic.twitter.com/WjBBYg44gC

2018-04-22 00:21:14
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うえだしたお @YT1093

だが、なかなかどうして首から下は完璧なプロポーションなのだ。映画の細部にこういう味わいぶかい発見もあるので、目を皿のようにして眺めてみるとよい。 pic.twitter.com/Zrh5EQRGSX

2018-04-22 00:22:06
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うえだしたお @YT1093

「女神の見えざる手」において、女神は絶体絶命の窮地に陥るのだが…すべてを失いつつある主人公に起死回生の手段はあるのか、それとも…。つづきは映画を見てのお楽しみである。

2018-04-22 00:23:40
うえだしたお @YT1093

上院倫理規定違反を巡る聴聞会=物語のクライマックスは、ロビー活動と収賄の分かち難い関係を背景としている。事実、アメリカの現代政治にはロビー活動と議員の蜜月はもちろんのこと、ロビイストとロビー団体が、議員の政治資金獲得における「集金マシーン」としての役割を果たしている現実がある。

2018-04-22 00:27:39
うえだしたお @YT1093

ロビイストたちは議員への政治献金を細分化して、議員との接触を日常の業務として既成事実化することで、かえって献金の賄賂性を希薄化する手段であった。旧約聖書「申命記」の下りを引用した理由である。(おしまい)

2018-04-22 00:31:44