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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 19:56:43
汝、裁判を枉べからず 人を偏視るべからず  また、賄賂を取べからず 賄賂は智者の目を暗まし 義者の言を枉ればなり         旧約聖書「申命記」 第16章19節
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 19:57:41
というわけで、映画「女神の見えざる手」で読み解く現代アメリカ政治のお時間です。 pic.twitter.com/QSnjmxDwsr
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:06:39
まず、映画が素材としている「ロビー活動」と「ロビイスト」とは何かについて触れておく必要があるのでしょう。このロビー、文字通りホテルのロビー(ラウンジ)、要するに待合室のことを意味しています。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:13:27
いまを遡ること149年前、アメリカに第18代大統領が誕生します。ユリシーズ・グラントは陸軍中佐出身の元軍人で、酒癖の悪さで除隊するという面白い人物でした。後の南北戦争では准将として参戦、多くの武功を上げるも、あまりの活躍に上官が嫉妬、「こいつは酒癖が悪い」という理由で解任されているw pic.twitter.com/7KoxyX7PQZ
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:18:02
南北戦争時代、上官に解任されたグラントはその戦績を見込まれて、テネシーの軍司令官に再任されている(大出世)。この稀代の戦上手は次々と南軍を撃破、北軍総司令官に出世するとFour star general(大将)で退官、翌々年には共和党大会で大勝、翌年の大統領選挙に勝利して18代大統領となったのだ。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:19:58
そんな歴戦の猛者は、合衆国の最高権力者となっても、妻のジュリアには勝てなかった。「煙草がくさい」という理由でホワイトハウスでの喫煙を厳しく禁じられたグラント大統領は、近隣にあったウィラード・ホテルを訪れて一服を楽しむようになる。やがて、その話を聞きつけた利益代表がホテルを訪れた。 pic.twitter.com/QjOOw5cLFF
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:22:20
現在はザ・ウィラード・コンチネンタル・インターナショナル・ワシントンDCという長たらしい名称のホテルなのだが、このロビーを訪れて、大統領への請願を行った故事にちなんで、利益代表者のことをロビイストと呼ぶようになった。近代民主主義における歴史の1ページである。 pic.twitter.com/FQSLxc2BUz
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:29:25
ちなみに、ロビイストの存在は合衆国における「請願権」の規定によって存在を担保されている。根拠条文は合衆国憲法修正1条(Bill of Rights=権利章典)に記された文言による。後段のみ引用してみよう。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:32:32
The right of the people peaceably to assemble, and to petitition the Government for a redress of grievances. 人民の平穏なる集会、及びに(不満からの)救済を求めるため、政府に請願する権利
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:35:18
厳密には「こうした権利を侵す法を制定してはならない」という記述なのだが、そんなことはどうでもよい。なお、日本国憲法における請願権は第16条に規定されている。こちらも(今回の連載では)どうでもよい。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:38:38
端的にまとめると、ロビイストとは多元的利害の存在する社会において、国民や企業の利益代表者となり、国家と国民およびに企業の関係調整をおこなう仲介者である。広義では請願権の代理人となり、狭義では、1946年以降のいわゆる「ロビイング規制法」に基づく代表者となる。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:41:54
さらに噛み砕くと「依頼者からの報酬を得て、議員と接触することで議会活動に影響を与えようと試みる人々」と言うことができるのだろう。日本では、政商やフィクサーがそのイメージに親しいだろうか。このあたりは「ロッキード事件」や「日歯連事件」など、関心があれば調べてみるとよい。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:47:09
さて、そろそろ映画に入ろう。「女神の見えざる手(原題:Miss Sloane)」は上院倫理規定違反を巡って、聴聞会前の想定問答(弁護士との打ち合わせ)から始まる。 pic.twitter.com/GYT4FewqAe
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:51:06
今回のやらかし先生こと、ロビイストのミス・スローンは銃規制キャンペーンを潰すために、独立系ロビイング団体「Cole Kravitz & Waterman」にやってきた銃関連団体(モデルは全米ライフル協会:NRA)CEOの依頼を断り、コール・クラヴィッツ&ウォーターマン社のCEOまで激怒させてしまう。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:56:19
ところがどっこい、ドSの女王はへこたれない。むしろ銃規制キャンペーン側のアドボカシーロビイング団体「Peterson Wyatt」にスカウトされて辞表を提出、銃規制法案のロビイストとして独立を企図するのだった…。 pic.twitter.com/fKvPhH774d
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 20:58:02
ロビイスト団体の類型についても補足しておこうか。主に以下の5類型になる。 1. 独立系ロビイスト団体 2. 企業内ロビイスト団体 3. 特殊協会ロビイスト団体 4. アドボカシーロビイスト団体 5. 労働組合 である。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:00:24
独立系団体とは、依頼人との契約に基づいて活動する渉外専門家である。広告やコンサルタント、法律業務との親和性もたかい。また、企業内ロビイストでは広報や渉外担当による働きかけが行われる。特殊協会ロビイストは、特定の組織=協会への利益誘導を担う渉外担当者である(後述)。労組は割愛する。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:02:46
「女神の見えざる手」に登場するロビー活動団体は、コール・クラヴィッツ側が独立系ロビイスト団体、ピーターソン・ワイアット側がアドボカシーロビイスト団体になる。なお、アドボカシー団体とは環境問題や人権、女性の権利や外国人問題など、社会的利益と公正をはかる「政府提言」を対象としている。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:03:38
まあ、要するに「巨大企業の利権」VS「香ばしいパヨク」みたいな安易な構図をむすんで映画的なわかりやすさを演出しているのだが、映画なのであまり深く突っ込まないようにしている。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:10:31
ふとしたことがきっかけで、己の全存在=富も名声も何もかもかなぐり捨てて、「銃規制」を巡る熾烈なロビー活動をくり広げることになるのだが…なにせ敵は潤沢な資金力を誇る全米ライフル協会である。ありとあらゆる手段で、主人公の赤毛を追い詰めてくる。このあたりはなかなか、映画手法的に面白い。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:20:36
たとえば公開討論会である。アメリカ国民はこの手のパフォーマンスを好むが、最も有名なものは1960年大統領選挙における、ケネディVSニクソンの討論会となるのだろう。 pic.twitter.com/jZz0Avwf0t
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うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:22:28
ケネディVSニクソンの討論会は、全米で7000万人が視聴したと言われている。興味ぶかいことに、テレビ放送を見ていた人の多くは「ケネディの有利」を確信している。一方で、ラジオ放送を聞いていた人の多くは、それまで優勢を伝えられていた「ニクソン有利」の判断を下している。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:25:29
1960年の大統領選挙討論会では、パーソナルカラーに基づくカラー戦略が話題となった。ニクソンは顔色が悪く年老いたように映り、一方のケネディは若くて健康なイメージを視聴者に与えることに成功している。グレーのスーツを選んだニクソンに対して、ケネディは濃紺のスーツに赤いタイを締めていた。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:28:15
このように、民主主義はしばしば「印象」によって趨勢の決まる危うさを孕んでいる。「女神の見えざる手」における不毛の巣の上の闘争(失礼)では、双方に印象操作を用いることで、銃規制法案の可決 VS 銃規制法案の否決 という立法過程を支配しようと試みるのだ。
うえだしたお @YT1093 2018-04-21 21:30:40
ところで、銃規制を巡る議論について少しだけ触れておこう。作中では、序盤の会話(スローンと、ヘッドハンティングを試みる、ピーターソン・ワイアットCEO=シュミットとのやりとり)に「ブレイディキャンペーン」という台詞が登場している。
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コメント

猫背侍 @peko_twi 2018-05-25 21:40:54
普段、一般の人々がそこまでメジャーだと思っていない(であろう)ものにドラマ性を見出しドラマ化するのは興味深く面白いなー
オレンジサイレージ @orangsai 2018-05-25 23:09:30
こうゆう話を映画として紹介してもらえるのはありがたい
岡一輝 @okaikki 2018-05-27 00:17:07
自分は『サンキュー・スモーキング』が面白く観られたから、コレも面白く観られるかな。
うえだしたお @YT1093 2018-05-27 02:05:23
この映画を取り上げた理由は「政治キャンペーン」というものの危うさと脆さを再考したかった、という点に尽きる。筆者は銃規制の必要性を感じている一方で、その手続きは憲法との整合性を満たした下位法による制限でなければならないと考えている。
うえだしたお @YT1093 2018-05-27 02:25:28
以下は余談ながら、政治思想や有権者の思惑とは、自由意思に基づいているようでいて、実際のところアーキテクチュアによる影響を強く受けていると見てよい。映画もまたその手段として、枚挙の暇がないほど多用されてきたのだが、本作品はロビイングと、その結果としてもたらされる社会構造の変革に着地している。
うえだしたお @YT1093 2018-05-27 02:25:53
映画はただの手段に過ぎず、必ずしも政治的な目論見を孕んだものとは言えないのだが、現代アメリカにおいて映画を通して銃規制を訴えたい意図には、「ミリシア(武装民兵)の解体」という深謀が隠されていることにも触れておく必要があるのではないだろうか。
うえだしたお @YT1093 2018-05-27 02:26:15
2021年以降、国際政治の環境変化とほぼ同時に、経済危機(欧州発、中国経由)の発生がアメリカという他民族国家の社会構造を大きく変える嚆矢となりうる。筆者は必ずしも銃社会や武装による抵抗を善しとしない立場だが、アメリカという国家が変革を迎えるとき、市民の武装抵抗権が大きな障壁となることは想像に難くない。
うえだしたお @YT1093 2018-05-27 02:26:55
アメリカという国家と国民が深刻な分断を抱えるとき、銃規制はいかなる結果をもたらすのだろうか。抵抗権を失ったアメリカ国民は、はたして新しい時代の新たな政府に、有効な手立てを講じることができるのだろうか。この物語を「銃規制に賛成」「銃規制に反対」という対立軸ではなく、多角的に捉えなおす一助となることを願っている。
うえだしたお @YT1093 2018-05-27 02:32:59
国家や政治を語る際には、個人や集団の意志が共同体に集約されてゆく過程と、共同体の意志が個人や集団を合理的に吸収してゆく過程の双方を見つめなければならない。「銃規制」を巡る生存権の在りかたを問いながら、その現象だけではなく、本質を捉えなおす試みを続けてゆきたい。
maxta @maxta 2018-06-10 06:37:30
修正第2条ゆえに銃規制反対派には一定の理があり、正直共感すら抱いていたが、ミリシアが実際に、共同体や信仰にもとる不正企業や強大な統治権力への抑止力かというと、それは幻想で実際はさらにひどくウディ・アレンが映画でいう「ナチ・タイプ」の巣窟なのではと思い始めた。そこに巨大キャンペーンを繰り広げうる「マシーン」が乗っかり、個人が翻弄される。
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