2018年5月26日

映画「トータル・フィアーズ」で読み解く国際政治と核問題

どんとこい
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うえだしたお @YT1093

さて、映画で読み解く現代史のお時間である。

2017-04-09 16:05:41
うえだしたお @YT1093

20世紀、世界は三度の危機を経験する。第二次世界大戦当時、原子爆弾の誕生でもう二度と大きな戦争は起きないだろうと誰もが安堵していた。こうした思惑に反して、終戦後わずか5年後に米中ソの大国が小さな半島で対峙する。朝鮮戦争(1950~1953)の勃発である。 pic.twitter.com/XUs1ELnrrt

2017-04-09 16:11:53
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うえだしたお @YT1093

北朝鮮軍の急襲に対して、劣勢に立たされた韓国軍は首都ソウルを放棄、釜山の臨時首都まで撤退する。米軍を主体とした国連軍の参戦後、奇襲と牽制上陸とによって北朝鮮軍を38度線以北に押し戻したのち、国連軍は黒い雪とともにやってくる雲霞の如き大軍団を目の当たりにした。抗美援朝義勇軍である。

2017-04-09 16:19:03
うえだしたお @YT1093

chinese human wave と称された抗美援朝義勇軍は、彭徳懐により志願兵だけを率いた「中国軍ではない軍隊」として現代戦争に参加する。だが、近代兵器の前には為す術もなく、ただいたずらに死体の山を築くばかりであった。 pic.twitter.com/JGkZplUqY9

2017-04-09 16:21:42
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うえだしたお @YT1093

劣勢を悟った中国政府は、毛沢東主席の命により周恩来首相が急遽モスクワへと派遣される。参戦と物資の援助を求める周恩来に対して、スターリンの答えは「陸軍は派兵しない、だが、北京上空はソ連空軍によって守ることにしよう」という消極的なものに留まった。

2017-04-09 16:25:11
うえだしたお @YT1093

航空優勢を維持していた国連軍は、反撃の勢いをそのままに北緯38度線を北上、平壌の陥落を狙った。P-51やF6Fといったレシプロ戦闘機が上空で見たものは、ソ連の最新鋭ジェット機、Mig-15編隊であった。旧式機はことごとく帰投、赤軍連合による航空優勢空域は「ミグ回廊」と恐れられる。 pic.twitter.com/bE4rNBrGaP

2017-04-09 16:32:18
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うえだしたお @YT1093

だが、国連軍はF-80、F-84などの最新鋭ジェット機を投入、ミグを追撃する。陸戦では補給線の伸び切った抗美援朝義勇軍を撃退するも、赤軍らは巨大な洞窟陣地を構築して持久戦へと移行する。ここに中国からの増援が到着、戦線は北緯38度線上で長期の膠着状態に入った。

2017-04-09 16:36:18
うえだしたお @YT1093

これにより戦局の悪化を恐れた米国のトルーマン大統領は、停戦へ向けた声明を用意する。だが、現場で指揮をとるマッカーサー元帥はこれを良しせず徹底抗戦を主張、中国本土(満州工業地帯)の空爆や放射性物質の散布、原子爆弾の使用を提案した。結果、任を解かれたマッカーサーは帰国、退役する。

2017-04-09 16:40:01
うえだしたお @YT1093

長い前置きになった。これが1951年4月の「朝鮮戦争核クライシス」である。

2017-04-09 16:40:51
うえだしたお @YT1093

世界が二度目の核危機を迎えたのは、朝鮮戦争停戦から9年後の晩秋であった。この夏、ソ連はキューバと極秘で軍事協定を締結したのちに、モスクワから戦術中距離核ミサイルを輸送する。「アナディル作戦」と名付けられた極秘作戦は、アメリカの喉元にナイフを突きつけるための、起死回生の秘策だった。 pic.twitter.com/8oi1fYTiQ5

2017-04-09 16:47:46
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うえだしたお @YT1093

キューバ危機は、いかにして回避されたのか。それはケネディ兄弟やマクナマラ率いる官僚集団(the Best and the Brightest)によるものではなく、現場の勇気ある指揮官による”叛逆”であったことは、過去に述べた通りである。

2017-04-09 16:50:19
うえだしたお @YT1093

世界は二度も全面核戦争の危機に直面した。これを案じた米ソ首脳は共通利益としての「軍縮」を提案する。デタント(緊張緩和)と称した協議はしかし、まだ産声を上げたばかりの未熟な概念に過ぎなかった。

2017-04-09 16:53:02
うえだしたお @YT1093

キューバ危機の終結から11年後、1973年10月、建国25周年を迎えたイスラエルでは「ヨム・キプル(贖罪の日)」というユダヤ教徒最大の祝日を迎えていた。敬虔なユダヤ教徒が休息日を過ごしていた午後、スエズ運河からはエジプト軍が進撃、ゴラン高原からはシリア軍が侵攻する。

2017-04-09 17:01:30
うえだしたお @YT1093

第四次中東戦争の緒戦はイスラエル軍の大敗に終わった。それまで三次に渡って中東戦争を圧倒してきた陸軍は、エジプト・シリア連合軍による電撃戦で壊滅的ダメージを被り、国家として危急存亡の時を迎えたのである。 pic.twitter.com/xCVwKxt06P

2017-04-09 17:06:01
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うえだしたお @YT1093

さて、映画「トータル・フィアーズ(the sum of all fears)」で読み解く現代史のお時間である。

2017-04-09 17:07:30
うえだしたお @YT1093

「トータル・フィアーズ」オープニングに登場する戦闘機はA-4攻撃機である。イスラエル向けには90機生産され、A-4Hと名付けられた。ゴラン高原の陥落、シナイ半島奪還が迫ったため、米軍に貸与された核爆弾を搭載して離陸する場面である。 youtu.be/MM9Z3gyv1U0

2017-04-09 17:37:23
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うえだしたお @YT1093

これに対しシリア軍は対空ミサイル(SAM)で迎え撃つ。冒頭のA-4H攻撃機を撃墜したミサイルは2K12、NATOコード:ゲインフルである。ソ連がエジプト・シリア連合軍に供与した、当時最新鋭の自走式短距離SAMであった。 pic.twitter.com/x5mqTDIFeC

2017-04-09 17:40:15
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うえだしたお @YT1093

このように、中東戦争には冷戦の縮図があった。ここではエジプト・シリア連合の名称で統一しているのだが、イスラエルが米国の支援を受けてなお単独で交戦したのに対して、エジプト・シリア連合軍はイラク、ヨルダン、レバノン、サウジアラビアなど10ヶ国に加えて4ヶ国の支援を受けている。

2017-04-09 17:43:33
うえだしたお @YT1093

エジプト・シリア連合軍を支援した4ヶ国には当然、超大国ソ連の名もあった。さらに、キューバ、北朝鮮、パキスタンといった共産主義国家も支援している(当時、北朝鮮空軍機が戦闘空域で確認されている)。

2017-04-09 17:46:15
うえだしたお @YT1093

映画では米軍により貸与された核爆弾が、シリア軍の対空ミサイルによる撃墜で紛失する場面から物語がはじまる。1973年の冒頭から29年を経て、現代の米国東海岸、バージニア州ウェザー山(Mt.Weather )に閣僚が集うシークエンスに移動する。

2017-04-09 17:53:01
うえだしたお @YT1093

Mount weather emergency operations center は実在の政府機関である。本来は20世紀初頭に連邦政府が用地買収、気象局が気象観測に用いたことからその名で呼ばれた。だが、朝鮮戦争後の1950年代には、核戦争対応型の要塞へと生まれ変わることになる。 pic.twitter.com/PTwgwmJWcJ

2017-04-09 17:58:53
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うえだしたお @YT1093

我々に親しみのある同規模の要塞としては、コロラド州コロラドスプリングスにあるシャイアン・マウンテン空軍基地(Cheyenne Mountain Air Force Station)が浮かぶのではないか。ふつう浮かばねえよな。ターミネーター3で主人公と女がシケこむシェルターである。 pic.twitter.com/HoPQ8z0hMd

2017-04-09 18:02:14
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うえだしたお @YT1093

余談だが、マウント・ウェザー要塞は花崗岩の硬い岩盤に覆われている。また、首都からほど近い場所にあることで、有事の際に移動が容易いことからこの地が巨大要塞の場として選ばれた。居住区、オフィス、発電所、病院施設まで備えた施設は、1975年に議会が調査に入るまで完全に秘匿されていた。

2017-04-09 18:08:04
うえだしたお @YT1093

マウント・ウェザーの場面では、核兵器の発射シークエンスに注目して欲しい。劇中では、統合参謀本部議長(制服組のトップ)が大統領に向けて核兵器の発射シークエンスを要請する。通常、大統領は樹脂製のカードを本人認証用のID表として携帯しており、国務長官ないし国防長官と二重確認している。 pic.twitter.com/VUKIrWwZFG

2017-04-09 18:21:08
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うえだしたお @YT1093

これは「核のフットボール」と呼ばれる移動式ブリーフケースの認証システムと同様に、合衆国大統領による核兵器の起動・発射プロセスを描いたものとなる。劇中ではロシア軍と交戦状態に入った後半にも登場する。

2017-04-09 18:21:26
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