突発現パロSS、第一話

降って湧いた系SSの導入部
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鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

仕事帰りにいつも寄るコンビニ。大井が子供の頃は公園だったのに、何年も学校に通っている間に、思い出の場所はチェーン店に乗っ取られていた。今日も栄養剤と軽食を購入する為に店へと足を踏み入れる。 「いらっしゃいませ」 いつも居る同い年くらいの女性店員が、いつも通り挨拶をする。

2018-05-28 23:00:57
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見た目も愛想も良い、仕事ぶりも要領が良い。間違いなく、ビジネスの世界でそれなりに成功できるはずだ。ふと思い立って、彼女を会社に勧誘してみた。 「ねえ、口利きはするから会社員になってみない?」 酔っていると思われたのか、遠回しに断られた。

2018-05-28 23:03:35
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勧誘ももう何度目になるか。大井以外に客も居ない時、初めて彼女は自分の話をした。 「ここで、約束があって」 ひどく懐かしそうな声色で、見ているこっちまで感傷的な気分になる。ふと彼女の名札を見た。鹿島、さん?聞き覚えがあるような無いような。 「でも、やっぱり」 その先は聞き取れなかった。

2018-05-28 23:07:57
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翌日、大井は懲りずに勧誘へ向かった。断られると余計に諦めが付かない厄介な気分だった。 「会社員、興味あります。良ければお願いできますか」 今日まで断り続けたのは何だったのか、鹿島はあっさり承諾した。

2018-05-28 23:11:55
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数日後、異例の人事として一人の新人が入った。 名前を見て、驚きに眼を見張る人物が一人。 「香取、どうかした?」 「あ、いえ何でもありません大井さん」 「鹿島と申します。宜しくお願いします」 中途半端な時期だけに自己紹介もそこそこに鹿島は席へと案内される。 「鹿島」 「......香取、姉?」

2018-05-28 23:14:39
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大井は二人を交互に見る。 「本当に、鹿島なの」 「そうだよ香取姉」 香取も鹿島も今にも泣き出しそうで、状況は飲み込めないものの大井は慌てて間に入る。 「知り合いなの?とりあえず感動の再会は後にして、香取は業務に戻って。鹿島さんにはしばらく私が色々教えます」

2018-05-28 23:36:21
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割り込まれたのが残念なのか、鹿島は大井を悲しげに見る。香取はコーヒーを口にして気持ちを切り替えたようで、再びパソコンに向かった。 「じゃあとりあえず社内を案内するわ」 鹿島はカバンから会社のパンフレットを取り出した。三つ折りのそれには、大きく『球磨カンパニー』と印刷されていた。

2018-05-28 23:41:20