＃埼玉鎮守府 まとめ - お小遣いに交通費は含まれません（横須賀観光編） -

埼玉鎮守府渉外部 @SaitamaNavbase

「西太平洋の覇者たる7th Fleetの旗艦を知らんのか」 面倒くさそうな声が投げられた。 フネなら知っている。だが目の前にいるのは、いやまあ、普通の人間ではないが。 日本の艦艇以外にも搭載されているとは知らなかった。もっとも、彼の場合はその特殊な立場もあるだろう。 #埼玉鎮守府

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彼は白雪をちらと一瞥し、それからこちらを見た。 先にこちらに対応した彼女もそうだが、ごく自然な動作だ。 「艦娘との接触により、人間も『声』を聴く必要ができたのは知っているな？」 「ええと……オリジナルの"初期艦"との接触によるものですよね」 艦娘が頷く。 #埼玉鎮守府

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"提督"として着任した際に与えられる艦娘を俗に初期艦と呼ぶ。 この艦娘たちは、人類が初めて深海棲艦と交戦した際に最初に接触した駆逐艦5隻を元にしている。 我々"提督"が預かる艦娘は、各総鎮守府直轄になるオリジナルの艦娘の……理屈は分からないが複製みたいなものらしい。 #埼玉鎮守府

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「私たち艦艇と艦娘さんたちの間ではコミュニケーションをとることはできましたが、それを人間も聴けなければ円滑な意思の疎通ができないということで、大淀さんと明石さんの協力を得てシステムの開発が進められたのですよね」 こくりと首をかしげ、ひゅうがが確かめるように口にした。 #埼玉鎮守府

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「それで、あすかさんでの試験を経て搭載されたのが通称『艦魂』です」 正式な名称は書類の中にしか存在しない。 フネに搭載されたシステムは、まさしく魂そのものだと言われる。 それならヒトの姿を取る必要はないはずだが、なぜか大淀と明石が造り上げたシステムはそうなっていた。 #埼玉鎮守府

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「その姿もまちまちですしね」 ヒトの姿をしたフネが言うには。 フネは女性である。そのため本来であれば、艦娘たちのように女性の姿をとるはずだ。 しかし『艦魂』は彼女のように女の、そして彼のように男の姿をとっている。 #埼玉鎮守府

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「仮説ですが、『フネは女だが軍艦は男』という説があって、それで固定されていないのではないかと」 「ま、そこらじゅうに肌色の多い女どもがうろついていたら、士気は上がるかもしれんが風紀にはよくないだろうがな」 その言葉に、この場で唯一の艦娘に視線が集まった。 #埼玉鎮守府

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芋ォォォォォォいッ説明不要！！ #埼玉鎮守府 pic.twitter.com/CTzk9ExyYL

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「……すみません、私、あまり肌を見せたり変わった格好をするのが苦手で……」 「……いや、お前はそのままでいいんだ」 でも振袖か浴衣くらいは着てもいいんだぞ……割烹着でもいいぞ…… #埼玉鎮守府

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こほん、と旗艦殿はひとつ咳払いをして、 「まあ、なんだ。お前さんは艦娘にさほど興味がないようだな」 泣かば感心したように言う。 "提督"は、必然的に年頃の娘の姿をした艦娘を何十と従えることになる。そうとなれば、男女の仲になることも珍しくない。それが色恋沙汰でなくても。 #埼玉鎮守府

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「司令官は、どちらかと言えば装備のほうが」 言いかけた白雪を手振りで黙らせ、それを見た旗艦殿とひゅうがは一瞬不思議そうな顔になった。 「……そうでした、"提督"さんはそうやって呼ばれるのでしたね」 とんとん、と自身の本来であれば階級章がつけられる位置を示す。 #埼玉鎮守府

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彼女たちのように『艦魂』を持つ軍艦が、主に人間とコミュニケーションを取る際に構築されるヴィジュアルモデルには、階級を表す類いは一切つけられていない。 軍艦に固有の階級はなく、故に立場が変動することもない。そのため誰よりも低く、誰よりも高いと言われる。 #埼玉鎮守府

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対して自分が制服につけている階級章はというと、……少なくとも、提督だとか司令官だと言われる階級ではないし、本来であれば「艦を預かっている」などと口にすることもはばかられる。 そんな自分が『司令官』と呼ばれるのだから、実際に司令官を戴く軍艦にとっては奇妙な話だろう。 #埼玉鎮守府

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"提督"として"着任"した時点で少佐相当の階級が与えられるので、これ以下の階級の"提督"はいない。 しかし実際の階級は違う。非常に特異な立場なのだ。 「早く本物の艦隊司令官になれるといいな」 幾分か茶化す色を含んで一応の激励を寄越す旗艦殿に、渋い顔で頷くしかできなかった。 #埼玉鎮守府

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「艦娘さんと言えば……知ってらっしゃいますか？　近頃、特定の"提督"の指揮下にない、いわゆる『野良艦娘』さんが売買されているそうなのですけれど」 ふと。ひゅうがが幾分か視線をそらして口を開いた。それを受けて旗艦殿も眉をひそめる。 #埼玉鎮守府

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「お前さんがたが助けたうちのヤツなんだがな、どうもその野良どもを輸送している奴らを追っている深海棲艦に遭遇して追い回されたようだ」 先日交戦した海域は、あまり深海棲艦が目撃されることのない場所だった。それが艦娘でもない艦艇を追跡し攻撃をしたとなればただごとではない。 #埼玉鎮守府

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艦娘たちから報告を受け、こちらの司令部が所属する横須賀総鎮守府にも報告を行った際にその点は話題になったのだが、そういった事情があったのか。 「穏やかな話ではありませんね……」 今もその不埒な行為が行われているかと、白雪が不快そうな色をかすかに声に落として唸る。 #埼玉鎮守府

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建造される以外にも、艦娘は海上で発見される場合がある。だが、発見しても保護されるまでは海軍も法的な手出しができない。 艦娘の扱いは常に人間ではなくモノだ。だから人身売買には当たらないし、"提督"の指揮下にある艦娘であっても、決して人間に対する犯罪行為として裁かれない。 #埼玉鎮守府

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「どうも佐世保や舞鶴のほうにルートが多いようでな。そっちの奴らが巡回して監視しているんだが、すべてのフネをチェックするわけにもいかん。そうこうしていると、艦娘に釣られた深海棲艦が出てきて他のフネにまで襲いかかる」 #埼玉鎮守府

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「いっそ艦娘さんを囮にしようか、なんて話もあるんですけど……他の海域でも深海棲艦は出現していますから、結果的に人手不足になってしまうんです。それに対処するためにまた艦娘さんにお願いして、ってなるともう本末転倒ですし」 ままならない、と溜息をつく。 #埼玉鎮守府

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深海棲艦は艦娘に惹かれる、というが、艦娘だけを襲うわけではない。そして深海棲艦は日本近海だけでなく全世界的に出現していた。 現状艦娘を運用するのは直接に指揮を執る日本とその同盟国の米国のみであり、その米国も独自の、つまり米国籍の艦艇を由来とする艦娘を保有してはいない。 #埼玉鎮守府

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となると日本から艦娘を派遣することになるのだが様々な要因からそれも難しく、ごく一部の地域にごく少数が派遣されているに留まっていた。 確かに"提督"の数は多く、その指揮下にある艦娘もまた多い。しかし、だからと言って何でも屋をやろうというわけにはいかないのだ。 #埼玉鎮守府

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「今後これらの件についてもやり取りすることになるだろう。その時にはまた頼む」 気軽に言ってくれる。階級も立場もない艦艇自身に指揮権や決定権はないので、文字通り口約束だ。 とはいえ何かあれば出動しなければならないのは艦艇も艦娘も同じ。お互い世話になることもあるだろう。 #埼玉鎮守府

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最後にもう一度事務的なやり取りを交わして、それからプライベートな挨拶をする。 「またお話ししてくださいね！」 元気よく手を振るひゅうがと対照的に、関心をなくしたかにこちらへ背を向ける旗艦殿。 数歩歩いたと思うとピントが合わなくなるように姿がぼやけ、まばたきの間に消えた。 #埼玉鎮守府

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「映画みたいでかっこいいですよね」 声をなくす白雪にひゅうがが言う。 「あたごさんはジャンプして消えるのが好きみたいなんです。みょうこうさんはその場ですっと消えちゃったりするんですけど、きりしまさんもそうなんですよ」 「艦艇さんによって、好みがあるんですね」 #埼玉鎮守府