タイトル未定(継続中)

りえぷぅ @riem124blue

26 □□「ごめんなさい、ちょっとお手洗いにいってきます。」 別にえぇのに、彼女は気を遣ったっぽい。 空いた彼女の席に先輩が座る。 先輩「おまえ、楽器修理する仕事してんだよな？」 渋谷「あー…まぁ。」

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27 先輩「俺の友達がさ、音楽学校の仕事してんだけどさ、講師が足りないらしいんだよ。おまえの名前言ったら、そいつおまえのこと知ってて…上手くて有名なんだってな？(笑)」 渋谷「いや…そんなことないっすよ。」 先輩「是非来て欲しいってさ。給料、今の倍は約束するってよ？どうだ？」

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28 “誰が欠けてもあかん” ヨコの言葉がよぎる。 渋谷「いやぁ…ありがたいっすけど…今んとこで…すんません。」 先輩「………俺さぁ、離婚したんだ。」 渋谷「え…？」 先輩「アイツ…忘れられない男がいんだって…。」 声が出ぇへんかった。 それが誰を指すんか分からへんかったけど。

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29 先輩「…それはおまえのことかもしれない…。」 渋谷「…へっ……？」 変な汗が出てきた…。 渋谷「せ、先輩なに…言うてるんすか…。」 思わず視線を逸らす。 先輩「別に恨んで言ってるんじゃないよ。脅そうとかそーゆーんでもない。ただの報告。別れて半年にもなるしな…。」

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30 半年…。 先輩が知ってたやなんて…。 先輩「ははっ！そんな死にそうな顔すんなよ(笑)俺こう見えてモテんだぞ？知ってんだろ？てか、もう女いるし(笑)」 渋谷「えっ…。」 先輩「だから、本当に恨み節じゃねーよ(笑)…俺も再スタートしたってわけ。その友達んとこで俺も働くんだわ。」

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31 先輩と一緒に働くってことか…。 先輩「ホントに根にもってたら、誘わねーし。手土産じゃねーけどさ、おまえ連れてったら喜ぶと思うから、これは頼みごとだよ。マジで。」 そう言われてもなぁ…ホンマに辞める気はあらへんし…。 先輩「いや、とりあえずゆっくり考えてみてくれよ、な？」

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32 渋谷「…はぁ…わかりました…。」 顔をあげて先輩見たら、その後ろに彼女の姿が見えた。 目線で彼女に気付いた先輩が席を立つ。 先輩「邪魔したな。また連絡するわ。」 彼女に何やら言葉をかけて店の奥へ消えた。 □□「もう大丈夫だった？」 渋谷「あぁ…すまん、もう出ぇへん？」

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33 □□「え、うん、いいよ？ちょうどおつまみも無くなったもんね？」 何も聞かずニコニコする彼女。 ホンマに…俺にはもったいないくらいのえぇ女………。

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34 Shingo 村上「おまえ、親父さんの見舞い行ってるんか？」 横山「行くかいな、そんなもん。」 親父さんがまた入院したらしいが、この男は相変わらず。 まぁ知っとる。 どんな思いしてきたか、長い付き合いやからな。 横山「そんなことよりおまえ、嫁顔色悪いやん。体調悪いん？」

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35 村上「え？そぉなん？」 彼女は今、昼飯食べに外出中。 横山「えっ、そーやろ。な？〇〇！」 〇〇「はい、顔色悪いです。聞いたら大丈夫って言われましたけど…。」 村上「えぇっ？マジで？！」 横山「相変わらず鈍い男やなぁ…一緒に暮らしとるんやろが…ちゃんと見たりぃや…。」

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36 呆れた顔されて今朝の嫁の顔を思い出してみる…。 …わからへん…。 普通やったと思うけどなぁ…あ、もう先に食べちゃったとかゆーて食べてるん見てへんな…ホンマは食べてへんかったんやろか…。 ☆☆「ただ今戻りましたー。」 村上「おぉっ…おかえり！」

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37 思わず大きな声で言うと、驚いた顔して眉間に皺寄せた。 …そー言われて見れば顔色悪いような…。 横山「ほんなら俺もメシ行ってくるわー。〇〇は？」 ☆☆「〇〇ちゃん、行ってきていーよ。」 〇〇「はい、じゃあ行ってきます。」 ２人が出て行って彼女とふたり。

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38 村上「何食うたん？」 ☆☆「…お蕎麦。」 村上「あー、マルんとこじゃなかったんや？」 ☆☆「お蕎麦の気分だったの。」 村上「ふーん…うまかった？」 ☆☆「まぁ。」 村上「…おまえさぁ、今朝ホンマに飯食った？」 ☆☆「先に食べたって言ったでしょ？」

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39 村上「言うたけど…ホンマかな思て。」 ☆☆「何それ…。」 自分のデスクに座って背中を向けてたのに、くるっと振り返って俺を睨む。 村上「いやほれ…おまえなんや体調悪そうやから…。」 ☆☆「………自分では気付いてなかったくせに。」 村上「…おっしゃる通りです…すみません…。」

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40 また背を向けて仕事をし出す。 村上「ちょ…なぁ…どんな具合やねんて。」 ☆☆「たいしたことないから大丈夫。」 村上「おまえなぁ…もしかして蕎麦も食べてへんのとちゃう？どっか悪いんやったら病院行って来てもえぇねんでー？」 ☆☆「大丈夫だって。」 村上「おまえのゆー大丈夫は…、」

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41 ☆☆「もぉ！うるさい！」 村上「うるさいってなんやねん！心配しとるから…」 ☆☆「妊娠した！」 村上「はっ………？」 再び振り返った彼女がじっと俺を見た。 村上「今なんてゆーた…？」 ☆☆「妊娠した。まだ病院行ってないけど、検査薬で陽性だった。来てないし…たぶんそう。」

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42 ま、まじで…？！ 俺…親父になんの…？！ ☆☆「そーゆーことだから。大丈夫。」 びっくりしすぎてなんも言えん俺をそんままほっといて、また仕事をし始める。 村上「あ…あのさぁ…、」 ☆☆「んー？」 村上「いや…その…つわり？それで具合悪いん…？」 ☆☆「うん。」

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43 冷静な彼女を見つつ…俺もだんだん冷静さを取り戻す。 村上「病院早よ行かな閉まるんとちゃうの…。」 ☆☆「あさって公休だから、朝から行くよ。」 村上「いやいや！今日行けよ！」 ☆☆「今日は仕事でしょ。あさってちゃんと行くから大丈夫だってば。」

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44 村上「なんでやねん！もぉ～…今から行ってこいて！」 ☆☆「ちゃんと行くから！」 村上「アカン！！」 ☆☆「もぉー！そんなふうになるから言わなかったのよぉ！」 村上「なるがなぁ！あたりまえやろ！」 不服そうに俺を睨む。 村上「…頼むわぁ…行ってきてくれよぉ…。」

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45 彼女の隣のデスク、○○の席に座ると、彼女を椅子ごと回転させ自分と向かい合わせにする。 諦めて俺を真っ直ぐ見てくれた。 村上「朝も昼も食われへんとか、普通に心配やねん。妊娠やとしても、そうやないとしても、なんや…とにかく俺を安心さす思て行ってくれや？な？」 ☆☆「…わかった。」

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46 村上「ふは…よっしゃ。」 手を頭に乗せて雑に撫でると、笑顔でその手を払われた。 デスクの上を簡単に片付けて鞄を持ち、ちょっと俺の顔を確認してから事務所を出ていった。 はぁー…子どもかぁ…。 結婚したんやし、欲しいとも思とったし、想像なんかもしてなかったかゆーたら嘘やけど…。

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47 いやでも、それが現実になるかと思うと…。 横山「なにニヤニヤしてんねん、きしょくのわるい…。」 しゃあないやんかぁ…。 村上「よこぉ…どぉしよぉ～？」 隣の自分の席についた男に椅子ごと近付く。 横山「なんやねんもぉ…甘えんなよぉ…。」 手を振り払って、あからさまに嫌な顔。

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48 そんな顔されても嬉しいもんはしゃあない。 横山「それよりアレや、☆☆はどこ行ったん？銀行か？」 村上「ちゃう～病院や～。」 横山「あぁ？やっぱ体調悪いんか。」 村上「ん～ふははぁ～！」 横山「あぁぁぁ！もぉなんやねんて！嫁がそんな時になんでおまえは…」

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49 村上「子どもできたかもしれんねんてぇ～。」 横山「………なんて？！」 村上「子ども～！俺親父になるんやてぇ～！」 横山「まじかっ！！」 ○○「うわ！ホントですか！」 村上「あははは！ど～しよ～♡」 横山「困ってへんやないか！(笑)」 そーゆーヨコも嬉しそうで嬉しい…。

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50 Ryuhei 横山「取材？」 仕事を終えた先輩が、いつものように店に来てくれた。 丸山「はい。雑誌なんすけどね？」 横山「えぇやん受けたら。客増えるで？」 丸山「いやぁ、そこがちょっと問題で…。田口くんが独立したやないですか。お客さん増えたところで対応できるかどうか…。」