カウンシル・フジミ #2

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆ガンドーは現世の視界に立ち戻り、ゾーイを見た。ゾーイは立ち上がり、掌を上にした。そこに、拳大のエメツの塊が現れた。いとも容易に。カラスは驚きに黒い目をまるまると見開いた◆

2018-06-12 22:01:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マジか」「エメツ……こんなに大きな」スーサイドは呻き、スージーは身を乗り出した。「どうやった?手品かい?いや、違うわね、そりゃ違うわね」「……」シキベは光通さぬ黒い塊に顔を近づける。「間違いないッスね。エメツ」細部を見て取る。「それも、市場にそう出ない純度」 1

2018-06-12 22:04:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大丈夫ですか」コトブキはゾーイを気遣った。ゾーイは頷いた。「自分でも、無理はしたくない。これくらいなら全然平気だよ」皆を見渡し、「今は缶ビールもスシも要らないよね」「そりゃ欲しがるわけッスよ、特にヤクザニンジャ組織ともなれば」「恐らくソウカイヤも黙っておるまい」と、フジキド。2

2018-06-12 22:09:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「他のモノはどうだ」スーサイドが尋ねた。ゾーイは少し考え、答える。「大きさとか、複雑さによる。生き物は難しいし、機械とか武器とか、そういうものは時間がかかるし……無茶をしたらいけない事が、さっきわかった」コトブキも厳かに頷いた。「いけないんです。とても良くない事が起こります」 3

2018-06-12 22:11:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「油田みたいなもんだな。良くない事が起こるってのは?」「汚染されるというか……」コトブキは喩えを探し、諦めた。「とにかく、欲をかいてはいけないと感じました」「奴は何処まで知っているのか……血眼になってお前を探すからには、全部か」スーサイドは考えを巡らす。「エメツを欲する……?」4

2018-06-12 22:16:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か懸念が?」シキベが尋ねた。スーサイドは腕を組んだ。「シンウインターは今更どうしてそんな事にこだわる。奴はエッジカム火山をシメてやがるんだぞ。エメツの鉱脈を独占して、カネを刷ってるようなもんだ」「そりゃお前、コイツを野放しにしたらエメツの価値が下がり放題だろ」タキが言った。5

2018-06-12 22:19:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「このガキを消すか一生閉じ込めるかしねえと、鉱脈をシメてる奴は眠れねえよ。いや、はっきり言って今オレがこの話をIRCに流したら相場に影響が……」「やらないですよね」コトブキがロボを見た。タキはモニタの中で咳払いし、話題を逸らそうとして目を泳がせた。そして思い至った。「ア!待てよ」 6

2018-06-12 22:24:09
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「どうした」マスラダもタキを見た。タキはモニタの中で手を挙げて制止し、考えをまとめようとする。ロボも手を挙げる。ロボは腕を交差させ、首を傾げる。「繋がる……繋がりそうだぜ……例のデータだ。なあ、あそこで見つけた妙なデータ……クソが……あのサキュバスの野郎には一杯食わされてよ」 7

2018-06-12 22:27:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「続けろ」「ガガピー」ロボが痙攣し、腹部のスリットからパンチシートが吐き出される。マスラダが手に取り、引きちぎると、そこに記載されているのは右肩下がりのグラフだ。一同はそれをじっと見る。「エメツの産出量。シトカのですか?徐々に減ってますね」シキベが眉根を寄せた。「これって……」8

2018-06-12 22:31:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「聞いたことがねえぞ。シトカのエメツが枯れてるなんて話は」スーサイドは訝しんだ。シキベに任せていたフジキドが口を開いた。「値を吊り上げる為にデータで危機感を煽る手口はままある。……だが、偽りのデータならば、わざわざ隠蔽はすまい」  9

2018-06-12 22:39:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それでゾーイ=サンを?ンンー……」シキベは考え込む。コトブキは少し首を傾げた。「そこまでの確証があるものでしょうか。ゾーイ=サン自身、力の濫用はこれまでは行って来なかったのです。彼女も試していないような事を、そこまでシンウインターが把握しているものでしょうか?」 10

2018-06-12 22:44:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゾーイは蒼ざめ、俯いた。あの日の出来事を思い出すからだ。マスラダがタキに向かって言った。「UNIXから奪ったものが、他にもあったろう」「あれも流すか?あの悪趣味なシロモノを?まあいいか」「悪趣味?何スか」ガガピー。モニタが暗転し、カラーバーが映り、やがて記録映像に切り替わった。 11

2018-06-12 22:48:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワーオ!アリガトウ!ホット!ホット!ホットダヨ!」ブアーン……ブアアーン……煽情的サクソフォンをBGMに、ガラスのテーブルの上で、ホットなカウ・ガールが背中を向けてTシャツを脱ぎ捨てた。ハートマークが映り、「スゴイ」とカタカナが「違う」タキの音声。映像がザッピングされる。 12

2018-06-12 22:51:35
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ザリザリ……UNIXモニタに映し出されるのはノイズ混じりのモノクロ映像。左下には日付時刻表示のデジタル数字。どうやらそれは天井カメラ映像の記録らしかった。映し出されているのは奇怪なありさまだった。一面のタタミと、等間隔に穿たれた、墓穴めいた長方形の窪み。窪みに寝かされている人々。 13

2018-06-12 22:53:43
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人々は裸で、腹の上で手を組んでいる……組まされている。額には「い11」「ほ44」のような奇妙な平仮名と数字の組み合わせが刻印されている。時刻表示だけが動いている……『アイエエエ!』寝かされていた者の一人がいきなり跳ね起き、周囲を見渡し、また悲鳴を上げた。『アイエエエ!?』14

2018-06-12 22:56:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

裸の男は走って逃げ出そうとした。しかし脊髄がチューブに接続されており、うまくいかない。チューブと格闘しているうちに、カメラの視界に、ツカツカと近づいてくるニンジャの姿が映り込んだ。『アイエエエエ!?』「イヤーッ!」ニンジャは男をチョップし、昏倒させた。ナムアミダブツ。 15

2018-06-12 22:57:53
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ザリザリ……【ココマデナ】の赤文字が黒画面に映し出され、映像は終了した。「これはまあ、恐怖映像だな。過冬のどっか、何かだろ。拷問なのか何なのか知らねえが。映像名は、オマーク。何だ?オマークってのは」「拷問っていうよりは、何かの施設……?」シキベが唾を呑んだ。 16

2018-06-12 23:02:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「施設。実験」その横で、フジキドが呟いた。その語気は底知れぬ憤りをはらみ、ジゴクめいた。「……過冬……!」「オマークだと?」スーサイドが聞き咎めた。「オマーク?」「知ってンのか?話が早ええ」と、タキ。「教えろよ。なんかの暗号か?人間資源を搬送だの何だのってデータがあってよ……」17

2018-06-12 23:07:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちょっと待て」今度はスーサイドが記憶を手繰る番だった。彼は頭を押さえ、唸った。……(違う)……(だが俺の事情を説明すると時間がかかるし、俺自身、当然明かすつもりはない)……(サキモノ社がやっていたのは、人工エメツの抽出実験だ)……。 18

2018-06-12 23:12:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DZという謎めいたエージェントは、あの時スーサイドが見ている前でUNIXデッキを操作し……深い階層を掘っていくと、その時モニタに表示されたのは……(オマーク)……(そこの子供らには生体LAN端子がある。このサキモノシティの住人はLAN増設手術が義務付けられているわけだ)……。 19

2018-06-12 23:15:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「人間……資源だと……?」スーサイドは呟いた。ロボが反射的に後ずさった。「なんだ?心当たりあンのか?そう、人間資源!で、その搬送先ッてのが火山で……オレ、何かアンタの気に障ったか?」「お前は気には入らねえが、そうじゃねえ」スーサイドは言った。「そうじゃねえ……!」 20

2018-06-12 23:21:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オマークってのはよ。人間を機械に繋いで、エメツを作る装置だ。ここじゃねえが、俺は以前にそれを見た。ふざけた場所だった。ガキどもが繋がれてよ……!」「人間からエメツ?」シキベが青ざめた。「ッて事は、産出量の減った部分を補うために、ええと、待ってください、過冬が、つまり」 21

2018-06-12 23:28:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「事実だ」マスラダが認めた。ヴォジャノーイとのイクサを、彼は淡々と思い起こしていた。断片的な証言を整理し、彼は端的に理解した。「過冬のニンジャが、選別だの何だの、胸糞悪い事をほざいていたぞ。奴らは人間を集めて、火山のオマークに送り込む。シンウインターは恐らくそこだ」 22

2018-06-12 23:33:44