突発現パロSS、第十五話

チャット=ライン
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鉢植えホットケーキ @in_KabeWall

大井に差し出された透明なコーラを飲みながら、鹿島はうとうととしていた。訓練と彼女とのやりとりとでだいぶ疲れたようだった。正直、今日はもう帰らせた方が良いと大井は思う。 考えを巡らせたところで、ちょうど香取が顔を出した。 「あの、お客様です」 「球磨、きたわよ!」 小さな客人を伴って。

2018-06-13 19:52:32
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外に居たのは暁一人だった。 「また来たのね。悪いけど、今日は姉さんには会わせてあげられない。伝言があるなら聞いておくけど」 「え?」 いつもならなんだかんだで球磨を呼んでくれるのに。それに驚いて間の抜けた声が出た。 「そこにブザーがあるでしょ?それがある時は取り込んでるってことなの」

2018-06-13 20:01:09
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「......そう。球磨も仮にも社長だものね。忙しい時くらいあるわよね」 暁にしては珍しく聞き分けが良い。 「じゃあ、測定だけ。私が駆逐艦の適性を失ってないかだけでも、確かめさせてほしい」 側で聞きながら、艦種の適性が変わる事があるのだろうかと香取は思う。 ざば、と海から音がした。

2018-06-13 20:08:32
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「大丈夫でち、適性なんてそうそう変わるもんじゃないから」 音のした方を見ると、水着姿の少女が二人、海の中から頭を出していた。 「あなたたち......艦娘?」 暁は関心がうつったのか建物を出て彼女たちに近づく。 「イムヤ達は通りすがりのダイバーよ?」 「軽装すぎる、艦娘ね!」 「名探偵でち」

2018-06-13 20:12:26
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暁を放っておいて良いものか悩んで、すっかり寝入っている鹿島に視線をやった。 香取に休憩を支持して、大井は暁のあとをついて行った。 「どう見ても暁と同い年くらいじゃない、なんで働いてるの!?」 「プロですから」 「答えになってない!」 「その二人は学校も出て然るべき訓練を受けたプロよ」

2018-06-13 20:17:49
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「大井さん......じゃああなたたち、何歳なの?球磨みたいに見た目が子供なだけってこと?」 「イムヤ、ゴーヤ達80歳くらいだよねぇ」 「......まぁ合ってるといえば合ってるけど」 イムヤは不服そうに波を手で砕いて遊ぶ。 「大井さん、本当?」 「本当、割と歳とってる」 「海に引き摺り込むわよ!」

2018-06-13 20:26:11
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「潜水艦......よね?ハードワークなんでしょ、足腰痛める前にさっさと引退した方がいいわよ」 「お気遣いどうも!」 「とにかくね、キミは何年経っても駆逐艦でち。あんまり夕張達の手を煩わせちゃダメだよ。ところで名前は何ていうの?」 ゴーヤと自称する艦娘は暁に二の句を継がせず畳み掛けた。

2018-06-13 20:39:28
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「暁よ」 「ふーん、何十年後だか分からないけど一緒に働く事があったらよろしくでち」 「言っとくけど私達身体はめちゃくちゃ丈夫だから!」 「んじゃおつかれさまでち〜」 ゴーヤ達は建物への海中の出入り口に向かって泳いで行った。 「先輩のありがたいお言葉だったわね、暁」

2018-06-13 20:45:26
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「なによ、何十年後って......」 暁がむくれていると、背後から鹿島と香取が近づいて来た。 「あら鹿島、もう起きたの?」 「すみません、居眠りしてしまって」 「なっ、仕事中に寝るなんてダメよ!」 「あ、暁さん......すみません」 「鹿島、腰が低いわね」

2018-06-13 20:49:34
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「でも、大井さんにコーラを頂いたおかげですっきり目が覚めました」 「関係あるかしらそれ」 「コーラにはカフェインが入ってるから眠気が吹き飛ぶのよ!」 「暁さんは物知りですねぇ」 香取に褒められながら、暁はいかにも子供らしい笑顔を浮かべた。 「ところで、暁さんまたいらしてたんですね」

2018-06-13 20:57:15
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「ええ、おつかいのついでに突撃に来たのよ」 「まっすぐ行って帰ってあげないと他の子が心配するわよ?」 「ちゃんと連絡したわ」 暁はチャット画面を開いて見せた。球磨の所へ行くという文の下に、スタンプが三つ送られていた。 「そういう連絡なら、私たちにもしてほしいものだけど」

2018-06-13 21:02:43
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暁は思案顔になった。 「球磨の個人的な連絡先を教えてくれるってこと?」 それはまずいだろう、暁の突撃手段を増やすだけだ。同じく大井の連絡先を教えるのもまずい。離れて暮らしているとはいえ姉妹、押せば球磨に繋がる可能性がある。 「私で良ければID教えますよ、そのアプリ私も入れてますし」

2018-06-13 21:07:31
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「鹿島、本当にいいの?」 「ふふ、お友達が増えるなら嬉しいです」 鹿島はスマホを取り出して暁とやり取りし始めた。 「すみません、私は未だに折りたたみ式のを使っていて」 「謝る事じゃないと思うけど......でも最新のに買い換えれば香取も鹿島達とチャットで会話できるわよ」 「検討します」

2018-06-13 21:11:36
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「それじゃ、暁はおつかいに戻るわ。おじゃましました!」 大井と香取に一礼し、鹿島にはバイバイと手を振って、暁は去った。 「では暁さんから訪問の連絡があったら、球磨さんにお伝えすればよろしいでしょうか」 「うーん、姉さんに今日の件を伝えてから決めましょう。とりあえずは私に連絡して」

2018-06-13 21:17:05
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はい、という返事に妙な熱がこめられた。大井への連絡の口実が増えたのは鹿島にとっても僥倖だった。 「さてお客様も任務に戻ったし......鹿島、今日はもう上がりなさい。明日は遅刻しても良いから、とにかくゆっくり休むように」 香取は若干気まずそうにしながら、鹿島にお疲れ様と声を掛けた。

2018-06-13 21:21:32