直優まとめ

直助くんと優馬くんの親友以上恋人未満なやりとり
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美桜 @shootandsay

「いま帰りなのか?」 「うん、そう。ナオは?」 「うちは今日半ドンだったからさ。帰ってごろごろしてたら、一紗にアイス買って来いって言われてお使いに来たところ。アイツほんとワガママだよなぁ」 がさがさと音を立てて下げていたビニールを持ち上げる直助の姿に自然と頬が緩んでしまう。

2018-07-16 10:24:20
美桜 @shootandsay

「それでコンビニに?」 「ま、奢ってくれるっていうからな、一番高いやつ買ってやった!」 得意げに言い切られ思わず吹き出してしまう。気づけば周囲の喧騒が戻ってきていた。 「っていうか、優馬、早く食べないと溶けるぞ」 「え?あ、あぁ、そうだね。じゃあ、いただきます」 礼を言って封を切る。

2018-07-16 10:24:21
美桜 @shootandsay

「やっぱ夏場は氷系のアイスだよなー。シャリシャリ感が最高にうまい!」 「ナオはいつでも美味しそうに食べている気がするけれどね」 「んなことないって。やっぱり食べ物でも季節感じたいじゃん?」 他愛のないやり取りに心が凪いでいく。もう一度振り返っても、背後には誰も、なにも、いなかった。

2018-07-16 10:24:21
美桜 @shootandsay

帰ろうと腕を取り歩みを速めた直助につられて優馬も小走りに駆け出す。 アスファルトに落ちた影がゆっくりと広がり優馬が立ちすくんでいた場所に大きなシミを作ると、次の瞬間、陽光に飲み込まれるように消えていった。

2018-07-16 10:24:22

『残照』

美桜 @shootandsay

「ゆーまー、二葉さんがスイカ切ってくれたから食おうぜ!」 ダイニングテーブルで夏休みの課題に手をつけていた優馬はキッチンカウンターの向こうから呼びかけられ顔を上げる。2cmほどの厚みに切られ大皿に盛られたスイカは見た目にも涼しくて、思わず口元が綻んだ。 「ありがとうございます」

2018-07-24 11:42:11
美桜 @shootandsay

おそらく調達から手配してくれたのだろう二葉に礼を言うと、穏やかな笑みが返される。麦茶のピッチャーを右手に、左手に重ねたグラスを持ってテーブルへとやってきた直助に続いて、二葉が重そうな皿を運んできた。 「せっかくの休みなのに勉強ばっか。頭痛くなんねぇの?」 「でも、課題だから」

2018-07-24 11:42:11
美桜 @shootandsay

残っている方が気になるのだと答えても、直助の同意は得られずさらに怪訝そうな表情をさせてしまっただけだった。広げていたものをまとめて端に寄せると、目の前に取り皿が差し出される。 「フォークかスプーンが必要だったかな?」 「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

2018-07-24 11:42:12
美桜 @shootandsay

「やっぱりスイカは直接かぶりつくのが一番だよな!」 言うや否や一切れ手に取り豪快にかぶりつく直助の姿に、二葉と顔を見合わせた優馬は思わず吹き出してしまった。 「そういえば、初めてこんな風にスイカを食べたの、ナオの家でだったね」 「それまではスイカって食べたことなかったの?」

2018-07-24 11:42:12
美桜 @shootandsay

「あぁ、そうじゃなく。うちはスイカって、一口サイズにカットされて食卓に出されていたんです」 「かぶりつくのがダメって窮屈そうだよな」 「たぶん、母さんが一切れ食べきれないタイプだったからじゃないかな」 倣って一切れ自分の取り皿に乗せる。種を口から直接吐き出す方法も直助から教わった。

2018-07-24 11:42:12
美桜 @shootandsay

「意外とスイカって体が冷えるもんね」 二葉に注がれた麦茶を受け取って優馬は尖った先端を口に含む。強い甘みが一瞬口の中に広がり実とともに溶けるように消えていった。 同じ物事でも違う見方があるのだと、直助と共に過ごすうちに気づかされることが多かった。これからも、きっとそれは変わらない。

2018-07-24 11:42:12
美桜 @shootandsay

学校から与えられた課題も確かに大事だけれど、こうして新しい仲間と過ごすことで見えてくる世界はそれ以上にこれからの自分にとって大事なものとなるだろう。いつも自分に新しい視点をくれる友人が隣にいてくれる幸せに改めて思い至って、優馬は幸福をかみしめるようにスイカに歯を立てた。

2018-07-24 11:42:13