園児RPGテキスト外伝「宵の流星と暁の詩」第二章

―吟遊詩人の少女と謎の女性が出会う時、物語は動き出す― 序章はこちら https://togetter.com/li/1242608
0
無銘海姫 @Mumeinight

【「宵の流星と暁の詩」第二章前編】 #mmytxt

2018-07-13 21:20:02
無銘海姫 @Mumeinight

「おや旅人さん、乗っていくのかい?」山道を行く馬車の御者は人影を呼び止めた。人影は無言で振り返り、金貨を手渡す。 #mmytxt

2018-07-13 21:21:09
無銘海姫 @Mumeinight

人影はオフホワイト外套を纏い杖を手にしている。フードを目深に被っており顔はよく見えないが、どうやらうら若い女性のようだ。彼女はそのまま黙って馬車に乗り込んだ。 #mmytxt

2018-07-13 21:22:32
無銘海姫 @Mumeinight

「行き先はどこまで?」御者の問いかけに、彼女は言葉少なに答えた。「北へ…行けるところまで」 #mmytxt

2018-07-13 21:25:43
無銘海姫 @Mumeinight

ポポスノスクの街並みは朝から賑わっていた。シカナは漁船や釣り船、交易船が集まる船着き場付近で吟遊しようとしていた。しかし…「あれっ」船着き場から美しい弦楽器の音色…先客か。吟遊詩人業界も厳しいのだ。 #mmytxt

2018-07-13 21:27:37
moyo @moyoko9000

#mmytxt ウエノ・ステーションからタッピ・ポイントに夜行列車とかで行きそうな雰囲気だ

2018-07-13 21:28:30
無銘海姫 @Mumeinight

ミヤコガルド吟遊詩人のほとんどは楽器の弾き語りスタイルで、シカナのような紙芝居スタイルはごく少数派だ。使われる楽器も小型のフィドルからリュート、ハープなど様々だ。中にはグランドピアノを背負って各地を巡る猛者もいるという噂だ。 #mmytxt

2018-07-13 21:29:33
moyo @moyoko9000

#mmytxt グランドピアノは持ち運びやすく駆け出し吟遊詩人もごあんしんだということは有名だ

2018-07-13 21:31:17
無銘海姫 @Mumeinight

そんな事を思いながら、聞こえてくる音色に奇妙な懐かしさを覚えたシカナの歩みは自然と船着き場へと向かっていった。港に繋がれているボートの上に人影が見える。その周りで何人かが演奏に聞き入っているようだ…シカナも誘われるように聴衆の間に入っていく。 #mmytxt

2018-07-13 21:32:18
無銘海姫 @Mumeinight

そのボートの上では澄んだ海水のようなライトブルー長髪を伸ばした女性が大粒の雫めいた青いクリスタルのついた装飾兜を目深に被り、レオタードとも水着ともつかないおよそこの北方の地には似合わぬ露出度の高い服装で座っている。外見年齢は二十半ばだろうか。 #mmytxt

2018-07-13 21:34:24
無銘海姫 @Mumeinight

女性は両腿の上にカンテレを置き、弦を爪弾いている。これはシバレリア北方では古来より伝わる神話的な楽器であるが、現在のミヤコガルド吟遊詩人に奏者はほとんどいない。シカナも書物での知識はあるが実際に演奏を聞くのは初めてだ。 #mmytxt

2018-07-13 21:37:35
無銘海姫 @Mumeinight

(何だろう、この気持ち…すごく懐かしく感じる…)シカナの目から何時の間にか涙が零れ落ちていた…。「あら、どうしたの?」気がつくと演奏はもう終わっており、カンテレ弾きの女性とシカナだけが残っていた。「あなたは…」「まぁ、名乗るほどの者じゃないけど…」 #mmytxt

2018-07-13 21:40:49
無銘海姫 @Mumeinight

「わたしは『海』のムメイ。よろしくね」「あのっ…私は『詩』のシカナ」「…もしかして…泣いてるの…?」「…あなたの演奏…とても懐かしくて…。でも、思い出せない…」膝をつきうつむいたシカナの涙が石畳に零れ落ちる。優しくその手を取ったのは、ムメイだった。 #mmytxt

2018-07-13 21:42:59
moyo @moyoko9000

#mmytxt 記憶関係の能力者かもしれない そうかなあ

2018-07-13 21:44:38
無銘海姫 @Mumeinight

冷たい風が吹く北方の港町で、シカナにはその手が一際温かく感じられた。顔を上げ、ムメイに問いかける。「…ムメイさんは…この町の人…それとも…?」ムメイはかすかに微笑み、答えた。「わたしはね…海の向こうから来たのよ」 #mmytxt

2018-07-13 21:46:09
無銘海姫 @Mumeinight

だが彼女が乗っているボートはかなり小ぶりだ。人一、二人と荷物がやっと乗る程度である…当然外海に出られるような代物ではない。「これで…?」シカナの疑問ももっともだ。「まあ、見てて」ムメイはイルカめいて後方宙返り跳躍すると、そのまま海面に飛び込む! #mmytxt

2018-07-13 21:48:00
無銘海姫 @Mumeinight

(えっ…!?)シカナは驚愕した。ムメイは両の手足をX字にぴんと伸ばすとバランスを保ったまま着水し…驚くべきことに、湖に張った氷の上のごとく海の波間に立って滑るように移動しているのだ!「…すごいね…」ふとシカナは妙なことに気がついた。 #mmytxt

2018-07-13 21:50:13
無銘海姫 @Mumeinight

両足は常人のそれではない。膝から下はカニめいた甲殻に覆われ、足首には関節がなく先端は刃物のようにシャープだ。その表面の透き通った鱗状の部位が海上を駆ける度に七色に輝く。「こんな風に海を渡ってきたのよ!」 #mmytxt

2018-07-13 21:51:39
moyo @moyoko9000

#mmytxt 海面スケート概念はロマンいいよね

2018-07-13 21:54:54
無銘海姫 @Mumeinight

「…もしかして…」シカナはある伝説に思いを馳せていた…輝きとともに大海を駆け安寧を見守るという精霊、もしくは女神の伝承…。 #mmytxt

2018-07-13 21:55:15
無銘海姫 @Mumeinight

【「宵の流星と暁の詩」第二章前編終わり。後編に続く】 #mmytxt

2018-07-13 21:55:58
無銘海姫 @Mumeinight

Tips:グランドピアノ 吟遊詩人ジョークとして「力が強い」「タフである」ことの例えに用いられる #mmytxt

2018-07-13 22:05:03
1 ・・ 4 次へ