園児RPGテキスト外伝「宵の流星と暁の詩」第五章
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「おや旅人さん、乗っていくのかい?」山道を行く馬車の御者は人影を呼び止めた。人影は無言で振り返り、金貨を手渡す。 #mmytxt
2019-02-15 21:35:32人影はオフホワイト外套を纏い杖を手にしている。フードを目深に被っており顔はよく見えないが、どうやらうら若い女性のようだ。彼女はそのまま黙って馬車に乗り込んだ。 #mmytxt
2019-02-15 21:36:45「行き先は…と言っても、小さな村しかないよ」御者のその言葉に、彼女は言葉少なに答えた。「ポポースカ…忘れられない場所」 #mmytxt
2019-02-15 21:39:36結局、ムメイが戻ってきたのは朝になってからだった。「あの…どうだった?」宿から出てきたシカナの問いに、ムメイの表情が曇る。「誰も…いなかった」そして瓦礫の山に目をやる…既に衛兵隊による検分が開始され、野次馬達も集まり始めていた。 #mmytxt
2019-02-15 21:42:38「そんな…」「大丈夫よ、あの人はきっと生きてるわ」ムメイは優しくシカナを励ます。「もしかしたら…あの場所に向かったのかもしれない」「…ポポースカ…?」「多分ね」船着き場から海の向こう側に見えるのがポポースカの大地だ。陸路なら険しい山道を迂回せねばならない。 #mmytxt
2019-02-15 21:44:16二人の足では難しいだろう…だが、海路なら?海をまっすぐ渡れば、ポポースカの港まで辿り着けるだろう…だがシカナをそこまで運ぶには船が必要だ。「どうした、女神さん」ふと後ろから声をかけてきたのはウィアドである。「いいところに来たわ、ちょっと相談があってね…」 #mmytxt
2019-02-15 21:46:41「ムメイさん、それはさすがに…」シカナが口を挿むのも無理はない、二人のためにウィアドの船を動かして欲しいと言うのだ。「無理ですよねやっぱり」「力になるぜ。女神さんには命の恩があるしな、何かの縁ってやつだ」「ありがとうね!」「ただ…」彼は何か言い辛そうだ。 #mmytxt
2019-02-15 21:49:24「あの事があって船は今点検中だ…動かせるのは早くても明日になるな」「明日、ですか…」シカナは少し落胆しているように見えた。ムメイがウィアドに問う。「ねえ、次のポポースカ行きの定期船はいつかしら?」「…三日後だ」定期船は七日に一本しか出ていない。 #mmytxt
2019-02-15 21:51:43「まぁ船が動く時は真っ先に知らせるから、ゆっくりして行きな」「ねぇ、ところで…」ムメイが話を変える。「どうした」「わたしにくれた銀の杯あったでしょ?冒険者から買い受けたっていう…」「…あいつの事か…時々凄いもんを売りに来るからよく覚えてるぜ」 #mmytxt
2019-02-15 21:54:56ウィアドはそう言うと、少し真剣な目つきになった。「いつも仮面と外套で隠してるが、あいつはそんじょそこらの冒険者じゃねえ…幾つも修羅場をくぐってきた強者だ、俺にはわかる」その言葉にムメイも兜の下で表情を変える。「もしかしてその人…!」 #mmytxt
2019-02-15 21:56:58その様子を遠く二階建ての屋根の上から窺う襤褸装束姿の青年があった。「『サイレントナイト』…やはりか…」彼は常人離れした脚力で屋根を跳び渡り、山道の方へ姿を消した。 #mmytxt
2019-02-15 22:00:26「本当に、本当にあれで行くのか?」ウィアドはムメイとシカナを見た後…船着き場に繋がれたボートを見た。「まあ、女神さんなら大丈夫だと思うが…」二人はすぐさま返す。「私達にはあまり時間がないんだ」「大丈夫、うまくやってみせるわ!」これはどういう事か…? #mmytxt
2019-02-15 22:04:37一刻を争うならば、今すぐ動かせる船はムメイのボートしかない。一見普通の木造ボートだが操舵不能になった大型船でも海上を自在に動かせる彼女の権能をもってすれば、波の高い北方の外海でも問題なく航行可能である! #mmytxt
2019-02-15 22:07:28「…そうか、じゃあ達者でな!!」「船長さんもね。これ余っちゃったからあげる」ムメイはウィアドにあの時のヘーゼルナッツの袋を手渡した。「あーっ、でも船員のみんなの分残ってるかしら…」「俺が何とかする、気にせず行ってきな」 #mmytxt
2019-02-15 22:10:05ムメイは黙って頷くとボートの係留ロープを繋ぎ替え、一方を舳先にもう一方を己の身体に結ぶと海面に立った。「シカナさん、乗って」「わかった」シカナが乗り込む時もボートはほとんど揺れない。 #mmytxt
2019-02-15 22:12:22