園児RPGテキスト外伝「宵の流星と暁の詩」第三章

―謎の語り部、過去と現在、時を越えて運命が交錯する― 序章はこちら https://togetter.com/li/1242608 第二章はこちら https://togetter.com/li/1246684
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無銘海姫 @Mumeinight

【「宵の流星と暁の詩」第三章前編】 #mmytxt

2018-08-17 21:21:10
無銘海姫 @Mumeinight

『ポポースカ大爆発を知っているかい?』 #mmytxt

2018-08-17 21:22:28
無銘海姫 @Mumeinight

酒場の片隅から聞こえてきたその言葉を発したのは、暗がりで人相はよく分からないが…リュートを携えた吟遊詩人のような出で立ちの男だ。 #mmytxt

2018-08-17 21:24:20
無銘海姫 @Mumeinight

彼が口にしたポポースカ大爆発という言葉に、皆がざわめき始めた。シカナも例外ではない。…ポポースカはここポポスノスクよりさらに北にある森林と海に囲まれた小さな村で、書物によると森林地帯で謎の巨大爆発現象が発生…。 #mmytxt

2018-08-17 21:27:13
無銘海姫 @Mumeinight

…一説には、流星の落下で…今から…1…1…シカナの思考をブリザードの如く激しいノイズが覆い、掴みかけた記憶がホワイトアウトした…。「…どうしたの?どうしたの、シカナさん?」ムメイがシカナの様子を気遣い、声をかける。「…いや、大丈夫。何でもないよ」 #mmytxt

2018-08-17 21:28:49
無銘海姫 @Mumeinight

――この状況を説明するには、時間を少し遡ることになる。 #mmytxt

2018-08-17 21:31:31
無銘海姫 @Mumeinight

「「こんにちはー」」「おぉ、賑わってるじゃねえか。空いてるかい?」ウィアドが酒場の店主に問いかける。店主は黙ってグラスを磨きながら、看板娘と思しき女性に目配せする。「三人ですね?こちらのテーブルが空いてますよ」彼女は三人を手慣れた様子で席に案内した。 #mmytxt

2018-08-17 21:32:17
無銘海姫 @Mumeinight

三人全員が椅子に座って少し経つと、再び看板娘が声をかけてきた。「注文は決まりましたか?」「ウイスキーを頼む」ウィアドは即答する。それからムメイとシカナの方を向いて言った。「俺の奢りだ、好きなだけ飲んでいいからな」 #mmytxt

2018-08-17 21:33:56
無銘海姫 @Mumeinight

次はムメイが看板娘に声をかける。「わたしはソーダ水にするわ」「ハーブソーダ水もありますよ」「じゃあそっちにしようかしら」シカナも興味があるようだ。「私もそうしようかな…ハーブソーダ水もう一つ」ふと思い出したようにムメイが口を開く。 #mmytxt

2018-08-17 21:37:02
無銘海姫 @Mumeinight

「そういえば船長さん、おつまみはどうするの?」「やっぱり海の上じゃ食えねえのがいいよな」「その気持ちすごくわかるわ」「…ヘーゼル…」ふとシカナが何かを手繰るように声を出す。「シカナさんも何か食べたいの?」「…ああ、私はヘーゼルナッツが欲しいね」 #mmytxt

2018-08-17 21:38:38
無銘海姫 @Mumeinight

「わたしも久々に食べたいわね、ヘーゼルナッツ二人分と…」ムメイがちらとウィアドの方を向く。「俺は馬肉の串焼きにするぜ」「これで全員分ね?」ウィアドがつまみを決めた所でちょうど看板娘が頼んだ飲み物を持って戻ってきた。 #mmytxt

2018-08-17 21:44:18
無銘海姫 @Mumeinight

三人が酒やハーブソーダを口にしている内につまみが運ばれてきた。そこには平和な時が流れるはずであった…あの言葉が発せられるまでは。 #mmytxt

2018-08-17 21:45:22
無銘海姫 @Mumeinight

ポポースカ大爆発。その言葉を聞いたシカナは思わずヘーゼルナッツを取り落とした。ウィアドも肉を喉に詰まらせかけたが、すぐに飲み込んだ。ムメイはソーダ水を一口飲むと、グラスを置き周囲の様子を確かめる…異変はすぐそば…同じテーブルで起こった。 #mmytxt

2018-08-17 21:48:56
無銘海姫 @Mumeinight

シカナの様子がおかしい!「…どうしたの?どうしたの、シカナさん?」ムメイがシカナの様子を気遣い、声をかける。「…いや、大丈夫。何でもないよ」―― #mmytxt

2018-08-17 21:49:40
無銘海姫 @Mumeinight

気がつくとあの男が酒場の隅の暗がりからカウンター側に歩を進めている。ワインレッド外套に銀髪の青年だ。彼はカウンターの空いている席に無造作に腰を下ろすと、視線を三人の方に向けた。シカナが口を開く。「あなたは…?」「僕?名乗るほどのものじゃないけどね」 #mmytxt

2018-08-17 21:51:08
無銘海姫 @Mumeinight

「僕のことはイツキとでも呼ぶといい、カナリア鳥めいて可憐なる少女よ」彼がやや芝居がかった口調でそう名乗ると、シカナは目を輝かせた。「…はい!」「ところで吟遊詩人の兄ちゃん」今度はウィアドが口を開いた。「ポポースカ大爆発…話には聞くが百年以上前の事だ」 #mmytxt

2018-08-17 21:54:26
無銘海姫 @Mumeinight

「北の果て、ポポースカの森の中でどでかい爆発があった。理由はよくわかんねえが流星が落ちたんじゃないかって言われてる。運のいい事に誰も巻き込まれなかったらしいな」書物にも記されている内容だ。シカナが黙って頷く。ムメイの表情は兜とローブで窺い知れない。 #mmytxt

2018-08-17 21:56:59
無銘海姫 @Mumeinight

「そういう事になってるらしいね」イツキが飄々とした調子で言葉を返す。「じゃあ、この話は知ってるかい?」そう言うと彼は語り出した…シバレリアの雪めいて降り積もる時に閉ざされた、残酷な物語を―― #mmytxt

2018-08-17 22:00:03
無銘海姫 @Mumeinight

『あれは、今からちょうど110年前のことだ』 #mmytxt

2018-08-17 22:01:13
無銘海姫 @Mumeinight

【「宵の流星と暁の詩」第三章前編終わり。後編に続く】 #mmytxt

2018-08-17 22:02:32
無銘海姫 @Mumeinight

Tips:ハーブソーダ水 ハーブ類を漬け込んで香りと風味をつけた炭酸水。酒場の定番ドリンクであり地域によって調合が異なる #mmytxt

2018-08-17 22:05:59
無銘海姫 @Mumeinight

Tips:ヘーゼルナッツ シバレリアに広く自生するハシバミの実。おやつや酒のつまみなどに人気 #mmytxt

2018-08-17 22:06:55
@hiiragi_r_t_d

ヘーゼルの色……そして怪しいイツキから事の真相が語られる! #mmytxt

2018-08-17 22:13:41
moyo @moyoko9000

#mmytxt 名乗るほどのものじゃない からのスタイリッシュ名乗りシリーズ大好き

2018-08-17 23:01:05
moyo @moyoko9000

#mmytx シバレリアのポンポンペイン大爆発は大変だったねうんうん

2018-08-17 23:02:11