【英霊剣豪201x番勝負】第八節『美しき肉食獣』

劉度 @arther456

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（これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると助かります。忙しい方は後ほど投稿されるtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい）

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鷹が鳴いている。殺気を感じて逃げた動物たちが戻ってきたようだ。そうだ。決着はついた。私の目の前で膝をつく戦士は、胴を真一文字に切り裂かれ、夥しい量の血と臓腑をこぼしている。致命傷だ。例え人のようで人ではない、星空より来た鬼であろうとも。1

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恐るべき相手だった。岩すら容易く砕く筋力に、刃を弾き返す肌。敵を追い詰める容赦の無さと、傷を受けても怯まない獰猛さ。そして、そこから研ぎ澄まされた技が繰り出される。獣性と理性の融合。それは戦士の極み、剣の極地に違いない。だが、その姿は。「なんて醜い顔なんだ……」2

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いかなる動物にも当てはまらない、醜悪な顔。肌は土色、髪は無く、口は４つに裂けている。「ナンテ、ミニクイ、カオナンダ……」その口から、亡者の呻きのような声が漏れる。剣の極みとは、これほどまでにおぞましいものなのか？私が目指した最果てとは、こんなものだったのか？3

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鬼は震える指で、小手を何度か押した。小手の一部の光が目まぐるしく変化する。「ククク……」鬼が笑った。まずい。直感に身を委ね、私は走り出した。「ハァーッハッハッハッハッハッ！」鬼の哄笑を背に、ひたすら走る。目の前に崖。構わない。そのまま飛び降りる。直後、背後で大爆発が起きた。4

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【英霊剣豪201x番勝負】 第八節『美しき肉食獣』

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化け物たちを蹴散らし、立香たちはとうとう天守閣に辿り着いた。鋼鉄の天守閣の頂上で待っていたのは、獰猛な笑みを浮かべた着物の男。「キャスター・リンボ！」「お久しぶりですねぇ、カルデアのマスター！お体の具合はいかがですか？」「あなたの顔を見たら最悪になったよ！」「それは何より！」5

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《立香ちゃん！そいつから聖杯の反応がある！》「リンボが！？」《違う、その後ろだ！》リンボの背後には、怖気立つ気配を放つ、異界への大穴が開いていた。「なるほど。聖杯とやらの力で黄泉と現世をつなげ、化け物を呼び寄せているわけですか」はつなは冷静に場を分析する。6

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「ンン、どれだけ来たかと思えば、サーヴァントと、サーヴァントですらない人間が数名……」リンボは大仰に溜息をついた。「まるで話にならない。新免武蔵はどうしたのです？」「武蔵ちゃんなら今頃、海岸の英霊剣豪と戦ってるよ！」「なるほど、海岸ですか。それは遠い、あまりに遠い……」7

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「遠すぎて、もう１人の英霊剣豪には、刃が届きませんなぁ！」部屋の奥の暗闇から、頭に角を生やした女が姿を現した。「ようやく来たか」要塞村を襲おうとした、あの二刀流の剣士だった。「あの時の……貴方もやはり、英霊剣豪でしたか！」見覚えのある顔に、小太郎は身構える。8

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「新免武蔵を三浦義意如きに当てるとは、英霊剣豪が１人だけかとお思いだったようですな！その迂闊、我が最後にして最高の英霊剣豪で、戒めて差し上げましょう！」「最後と言ったか」「なに？」スカジャンの男が、リンボを睨んでいた。「其奴が、最後の英霊剣豪なのだな？」9

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「ええ、そうです。悔しいでしょうなあ、無念でしょうなあ！あと一騎倒せば拙僧の喉を食い破れるというのに、それを成し遂げる術がない！新免武蔵さえこの場にいれば！そうお思いなのでしょう？」「いるぞ」「は？」「宮本武蔵はここにいる」スカジャンの男は、右手に打刀を、左手に短刀を構えた。10

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「な――」それは紛れもなく、二天一流の構え。「先程の言葉、そのままお主に返そう」戦国の世を生きた剣豪。否、剣聖の気迫が、男から放たれる。「宮本武蔵が、１人だけだと思ったか？」「サーヴァントでもないのに、同一存在が２人……！？馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な！？」11

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「狼狽えるな、リンボ！」叫ぶと共に、女が飛び出した。「かくなる上は、真っ向勝負で斬り伏せるのみよ！」振り下ろされる二刀を、武蔵の二刀が迎え撃った。鋭い金属音が部屋中に響く。それが開戦の合図となった。リンボが呼び出した化け物と、サーヴァントたちが走り出す！12

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「おおおおおっ！」先陣を切ったのは、スキンヘッドの小太郎だった。巨体から放たれた拳が、鎧武者の亡霊を吹き飛ばし、その後ろの化け物たちも纏めて薙ぎ倒す。「ええい、何だこの敵の数は！」続いて段蔵が、押し寄せる鎌鼬の群れに、アサルトライフルの銃弾を浴びせる。13

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数匹の化け物が、女と斬り合う武蔵の背中を狙う。「チイッ！」武蔵は咄嗟に刀で防ぐが、女はその隙を見逃さず、刀を振り下ろす！だが、刃に鎖が絡みつき、武蔵の顔に届く寸前で止まった。「ぬうっ……！？」サーヴァントの小太郎が放った鎖鎌だ。そこへ肘から短刀を展開した段蔵が斬りかかる！14

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女はもう一本の刀で、段蔵の刃を防いだ。だがその時、段蔵の背中が展開した。「噴進機構、始動！」中から姿を表したのは、ロケットブースター！「うおっ！？」思わぬ加速に、女はバランスを崩した。その隙を逃さず、小太郎が踏み込んだ。顎を狙って拳を放つ！15

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「甘いわぁっ！」咆哮。次の瞬間、鎖鎌が切り裂かれ、段蔵と小太郎が吹き飛ばされた。倒れかけの状態から放たれた回転斬りにも関わらず、段蔵の刀や小太郎の小手にヒビを入れるほどの威力だった。「何という剣技……！」「剣のことは、よく知っているからな！」16

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そうした乱戦の最中、はつなは黄泉の穴に封印の術を掛けようとしていた。しかし、リンボが術を妨害している。「甘い甘い甘いぞ小娘ェ！陰陽術で拙僧に敵うとでも！？」リンボが放った呪符が矢のように飛び、はつなを狙う！「危ないっ！」間一髪、割って入った武蔵が、呪符を切り払った。17

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「無茶をするな！」「しかし、あれを塞げば、増援を止められます」「……ふむ」確かに、武蔵たちは数で押されている「なら、少し、前に出る。お主は立香殿を守っておれ」「何をするおつもりですか？」「言っただろう。前に出る」二刀を携え、武蔵が前へ――敵陣に向かって踏み出した。18

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当然、化け物たちは武蔵を狙う。まず、鎧の化け物が武蔵に切りかかった。武蔵は脇差でこれを受け止め、返す刀で一刀両断にする。次に、魔犬が２匹同時に飛びかかる。武蔵は両腕を振るい、頭を叩き割る。その次は槍を持った３匹の人狼。槍３本と二刀流、数の上では負けている。19

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突き出された槍を、武蔵は事もなげに切り払った。折れた柄を掻い潜り、人狼の一匹に刀を突き刺す。もう一本の刀で、人狼の顎を斬り上げる。これで２匹。３匹目が爪を振り上げ襲いかかる。武蔵は突き刺した刀を手放し、穂先を斬られた槍を奪い取った。これを口中に突き刺し、３匹を仕留める。20

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「成る程。宮本武蔵、と名乗るだけのことはあるようだ！」リンボは感心したように呟いた。敵を斬り殺しながら、武蔵は徐々に前へ進む。「だが！」リンボが印を切ると、武蔵の足元に数匹の幽霊が絡みついた。「む……？」武蔵の足が、鉛が巻き付いたかのように重くなる。その場から動けない！21