2018年7月21日

ジャンル映画の垣根を超えた巨匠、橋本忍

黒澤明映画の脚本家として知られる橋本忍の、主に70年代の大作映画についての呟きです。(セルフまとめです)
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『訃報、橋本忍さん100歳=脚本家「生きる」「七人の侍」』 「構成の鬼といわれたこの人から、シナリオの根幹はフレーム(骨組み)にあるということを、ぼくはたたきこまれるように教わった。まさに“師”の名に値する人だった」(山田洋次/映画監督) mainichi.jp/articles/20180…

2018-07-20 23:40:31
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橋本忍は、監督作品「幻の湖」が妙な形でカルト化したことによって、若い人に半笑いで語られることが増えてしまったが、そのフィルモグラフィーを見れば、日本映画に偉大な功績を残した脚本家だと分かる筈だ。橋本忍を語る時に最初の方で失敗作「幻の湖」が挙がるのは、正常な状態とは言えないだろう。 pic.twitter.com/pELPUYUvL5

2018-07-21 00:28:34
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@fenice9999 老いにより鋭さを失うのは、どんな偉大な作家にも起こり得ることです。その業績を真にリスペクトするなら、揶揄するような扱いはしないのではないでしょうか?『幻の湖』を「面白がって」いる人の多くは、橋本忍の業績に敬意を払ってもいなければ、実は良く理解してもいないのではないか?と感じます。

2018-07-21 12:19:57
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橋本忍と言えば当然、黒澤明作品が代表的だが、私は世代的にも70年代の大作映画が印象深い。「人間革命」「日本沈没」「砂の器」「八甲田山」「八つ墓村」と並べると、70年代の日本映画は「橋本忍の時代」だったと言っても良い気すらする。そして、それは奇しくも黒澤明が苦闘していた時期と重なる。 pic.twitter.com/HS4MOGys37

2018-07-21 06:33:06
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『日本沈没』『復活の日』『さよならジュピター』『首都消失』。小松左京による終末テーマ作品の映画化は多い。壮大な世界を映像化するのは困難だから当時は不満が多かったが、今観直すと、どの作品もそれなりに頑張っている。しかし、最も小松左京作品の本質に触れたのは、最初の『日本沈没』だろう。

2018-07-21 12:35:03
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「日本沈没」は立ち見でも映画館に入れないほど大ヒットしたが、小松左京の原作を堂々と本格的に脚色していて見事だったと思う。「復活の日」や「首都消失」等の小松左京の終末テーマ作品の本質は“ディザスター物”というより“文明論”なのだが、それを最も理解していたのは橋本忍だったのではないか? pic.twitter.com/JHhpyxudEK

2018-07-21 06:59:55
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『日本沈没』には「日本が物理的に沈むかも?」というプレートテクトニクス理論を導入した自然科学的思考実験と「その時、日本人はどうするのか?」という社会科学的思考実験の2つの側面がある。その2面性は小松左京作品に共通する本質なのだが、脚本の橋本忍と監督の森谷司郎は、それを理解していた。

2018-07-21 07:26:09
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『日本沈没』は、当時のSFXの技術的限界等の制約を受けながら堂々とした映画文法を保っている。これは脚本の橋本忍と監督の森谷司郎に、SFやディザスター物などの「ジャンル映画」を作っている意識がなかったからではないだろうか?小松左京の『日本沈没』を、ただ真面目に受け止めて映像化したのだ。

2018-07-21 12:43:00
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橋本忍は「ジャンル映画」という概念自体が、あまりなかった人ではないかと思う。黒澤明は橋本忍の脚本を「掟破り」と評したそうだが、その掟破り性はジャンル意識の希薄さが生み出した効果ではないか。「このジャンルの映画では、こういう事はしない」といった制約を感じなかった人なのだ。

2018-07-21 13:21:19
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例えば、横溝正史の本格ミステリを怪奇映画にした『八つ墓村』の大胆な脚色を褒める声があるが、これも「市川崑がミステリだから、こっちはホラーで行こう」と考えた訳ではないだろう。橋本忍が横溝作品からインスパイアされた部分が、本来は推理のデコレーションである「時を超える怨念」だったのだ。 pic.twitter.com/PYcToECXPP

2018-07-21 13:52:41
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これは『砂の器』を観ても分かる。松本清張の社会派ミステリから、橋本忍は「ハンセン病の宿命」へと想像力を羽ばたかせている。『砂の器』が社会現象と言えるほどのヒットになったのは、「松本清張ミステリとして」ではないですよね。松本清張の世界は、良くも悪くも、あんなにウェットではない。

2018-07-21 13:59:48
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この「ジャンル意識の希薄さ」から来る想像力の飛翔が、上手く行けば『砂の器』のような成功作となるが、失敗すると『幻の湖』のようなワケの分からない作品になってしまうのではないか。『幻の湖』は、意識的に既存のジャンルをミックスさせたというより「何のジャンルか分からない」作品だった。

2018-07-21 14:30:25
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脚本家が監督に乗り出す場合、本来の得意技で勝負するよりも「脚本家としては出来なかった映画作り」にチャレンジしたがる傾向があるようだ。倉本聰の『時計』は少女の5年間の成長を、実際に主役の中嶋朋子を5年間撮り続けて描こうとしたし、北川悦吏子の『ハルフウェイ』はアドリブ・ドラマだった。

2018-07-21 22:26:50
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どちらも成功したとは言えないが、共通しているのは、緻密なドラマ作りを意図的に捨てていることだ。脚本家には得られない「偶然性」に憧憬があるのではないか?橋本忍の『幻の湖』にもそんな所がある。「構成の鬼」と言われた筈なのに、支離滅裂でとりとめがない。夢をそのまま書き起こしたようだ。

2018-07-21 22:35:29
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『八つ墓村』は大ヒットしたものの評価は高くなかった。しかし、意外に重要な作品かもしれない。これを境に、橋本忍作品には「オカルト的な怨念」というテーマが常に入り込むようになる。『幻の湖』『愛の陽炎』『旅路 村でいちばんの首吊りの木』全てそうだ。そして、全ての作品がどこか壊れている。 pic.twitter.com/qFQNiliH1N

2018-07-21 16:30:29
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『八つ墓村』の「パナビジョンの広大な美しい画面の中で繰り広げられるホラー」という映像設計は新しかった。しかし、これも橋本忍と野村芳太郎にホラーを作っているつもりがなかったからなのだろう。夜の幽幻たる山道を走る悪鬼のような山崎努はトラウマ映像で、後のJホラーに与えた影響は大きい。

2018-07-21 16:43:05
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渥美清の金田一耕助は原作者のイメージに一番近いと言われたが、これ1作で終わった。公開当時、若い頃にテキ屋でもあった作家の田中小実昌は「『八つ墓村』の渥美清からは、寅さんのテキ屋の口調のクセが完全に消えている。何気ないようだが、凄い役者なのではないか?」と評した。 pic.twitter.com/Kbastb24QO

2018-07-21 16:56:03
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橋本忍は現場での脚本の改変を許さないタイプだった。「脚本家が何ヶ月もかけて作り上げたものを、その場の思いつきが凌駕するはずがない」「黒澤明のような本当に力のある監督は、現場で脚本を変えたりしない」と主張していた。ここから、黒澤明が偶然ではなくコンテを重視する作家であることも判る。

2018-07-21 17:12:57
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現場での改変を許さない脚本家としては倉本聰がいる。少し前に、倉本聰とたけしの確執が伝えられたが、たけしは、むしろ現場でのハプニングを取り込むヌーヴェルヴァーグ的な役者であり作家であるから、その「才能のタイプのズレ」が確執の背景にあったのではないかと思う。 twitter.com/woody_honpo/st…

2018-07-21 17:18:38
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そして、勝新太郎の『影武者』降板騒動の背景にも、このズレがあったのではないかと思う。勝新太郎は、発言等を読む限り、役をガチガチに作り上げるのではなく、現場のハプニングやアドリブを自由に取り込んで演技したいタイプのようだ。しかし、黒澤明が求める演技は、そうではなかったのではないか?

2018-07-21 17:24:50
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『複眼の映像 私と黒澤明』橋本忍 「羅生門」「生きる」「七人の侍」等で黒澤明とタッグを組んだ、日本映画黄金時代の名脚本家、橋本忍が、黒澤明との歩みの全てを語る圧倒的ドキュメント。 store.south-sign.com/products/detai… pic.twitter.com/fCSEWzr4Md

2018-07-21 18:57:16
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