エマの目に『坂の上の雲』はどう映るか

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uroak_miku @Uroak_Miku

中三編第四章了。エマが今回もナイスなサポートと読者の代表役をしっかり務めてくれて、本当に助かっている。 現在完了時制論その2です。次で3。明治の言語政策についてさらに踏み込んでいくよ。

2018-07-24 14:39:54
uroak_miku @Uroak_Miku

斎藤秀三郎の英語研究は今の目で見ても驚嘆すべきものだと思うのだけど、本人も認めるように彼は英語ネイティヴとして育った半面、日本の書きものの素養に欠けるところがあった。 いやそもそも「国語」がまだない時代だった。

2018-07-24 18:08:24
uroak_miku @Uroak_Miku

もう少し後の時代に英語を学んだ夏目漱石は、漢学の素養をそなえ、今でいう高校課程からずっと英語オンリーでの授業を受けて育ち、ロンドン留学も果たしたまれな逸材でしたが、やはり「国語」のない時代のひとだった。 むしろ漱石の小説から「国語」は育ったのだから。

2018-07-24 18:29:06
uroak_miku @Uroak_Miku

「国語」と「英語」が、比較言語学的に進化していくことはついになかった。 学校の教科のことです。

2018-07-24 18:31:07
uroak_miku @Uroak_Miku

明治から敗戦までの英語教科書をたくさん読んでみて、面白いことに気が付いた。 会話文がほとんどないのです。 「マウント・フジは日本で一番高い山です」「ロビンソン・クルーソーはこう考えた」といった内容のものがほとんどです。

2018-07-24 18:36:43
uroak_miku @Uroak_Miku

だから和訳しても、それほど不自然なものにはならなかった。

2018-07-24 18:38:16
uroak_miku @Uroak_Miku

しかし敗戦後、教育改革の一貫として、英語教科書も大改訂された。 会話が主体となった。 少なくとも途中までは。

2018-07-24 18:39:17
uroak_miku @Uroak_Miku

会話において、日本語と英語は非常にかけ離れたところがあります。 「あなた日本語話せますか?」と相手に訊ねるとき 英語では「Can I speak English?」(私、日本語話していい?)という。 こんな感じで、日常会話になればなるほど、両者はかけ離れていく。

2018-07-24 18:50:07

訂正

 Can I speak Japanese?

uroak_miku @Uroak_Miku

そこで生まれてきたのが、ジャック&ベティ語。 「あなたはジャックですか」「いいえベティです」 「これはペンですか」「いいえちがいます。それは馬です」

2018-07-24 18:59:27
uroak_miku @Uroak_Miku

なんか変なんだけど、「です・ます」の力に助けられて、なんかそれなりに会話になってしまう、そういう文体ですね。 これが敗戦後に自然発生した。

2018-07-24 19:01:10
uroak_miku @Uroak_Miku

そして私たちの英語理解を、とことん妨げた。

2018-07-24 19:01:49
uroak_miku @Uroak_Miku

「Where are my pencils?」 これを「ぼくの鉛筆はどこですか?」とジャック&ベティ語では翻訳されてしまう。 しかし英語ネイティヴにこの文は「貴様俺の鉛筆どこにやった!」と聞こえる。 このネタはお気に入りなので何度でも紹介します。 pic.twitter.com/HTcoktdM9l

2018-07-24 19:04:30
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uroak_miku @Uroak_Miku

敗戦後に、会話文を強引に教科書に取り入れたために、教える側も学ぶ側もこの取り舵いっぱいについていけず、バランスを取るために生まれたのがジャック&ベティ語だった。 どんなむちゃくちゃな英文でも、これを使えばもっともらしいものになってくれる。 欠陥教科書でもまかり通る。

2018-07-24 19:07:59
uroak_miku @Uroak_Miku

このくらいのど派手なターン。 教育の現場は、とても対応できなかった。 pic.twitter.com/1LQq8kwU8a

2018-07-24 19:12:07
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uroak_miku @Uroak_Miku

それで「これは本ですか」「いいえ、猫です」式の、学校英語の翻訳に特化された文体が自然発生したとみます。

2018-07-24 19:20:42
uroak_miku @Uroak_Miku

おかげで、学習指導要領や教科書検定や教科書採択委員会による厳しい要求にも耐えうる(そのかわり英文と呼べないものに彩られた)英語教科書が、堂々とまかり通ることになった。

2018-07-24 19:22:36
uroak_miku @Uroak_Miku

…今書き進めている、今度の新刊は、こんなものではない、もっと深く、もっと痛ましいところまで踏み込む覚悟でいます。

2018-07-24 19:23:58