バイオテック・イズ・チュパカブラ #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トゥルルルルルルル!! トゥルルルルルルル!! 課長机の上に置かれていた電話が不意に鳴った。二人は声を潜め、課長机をはさんで目を合わせた。(((私が取ろう)))とニンジャスレイヤーがジェスチャーを伝える。(((できるだけ引き伸ばして)))とナンシーもジェスチャーでこれに答える。

2011-04-17 19:28:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、研究員のヒデヨシです」ニンジャスレイヤーが受話器を取る。機転を利かせ、死体の胸バッジに書かれていた名前を拝借したのだ。「ドーモ、ヒデヨシ=サン。本社のオダワラです」受話器の向こうから冷酷そうな声が聞こえた。スピーカーモードに切り替え、ナンシーもそれを聞く。

2011-04-17 19:38:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「タイムイズマネー! 何故何日間も電話に出なかったんだね君はァ!?」オダワラの怒りがぶちまけられる。日本企業においては、現状把握や問題解決よりもまず、原因と責任の追求が行われる。オダワラはおそらく重役だ。「大変恐れ入ります」ニンジャスレイヤーはサラリマン時代のノウハウを駆使した。

2011-04-17 19:49:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャの件はどうなっているのか!?」と甲高い声でオダワラ。「大変申し訳ございません」「とんだイディオットだな、君は! 君では話にならん! 爆発事故に巻き込まれたチャベタ所長は発見されたのか?!」とヒステリックな声でオダワラ。「恐れ入りますが席を外しておりますので伝言をどうぞ」

2011-04-17 20:21:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一刻の猶予もない。マッポが動き出したとの報告もある。我々は今、Y-13ヤクザ部隊を率いて君らの研究所に向かっている。一時間以内に着くだろう。証拠を隠滅するのだ。これはセンタ試験ではないぞ。マッポには勿論だが、このクローンニンジャ計画を絶対にソウカイヤに知られてはならん。以上だ」

2011-04-17 21:12:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、オツカレサマデシタ」「ドーモ、オツカレサマデシタ」ニンジャスレイヤーは、相手の顔も見えないのにオーセンティックなオジギを行い、受話器を置いた。手が微かに震えている。鋼鉄メンポで覆い隠していたサラリマン時代の記憶が、一瞬蘇ったのだろう。愛しき妻子、フユコとトチノキの顔が。

2011-04-17 21:15:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「時間がないわ、二手に分かれて情報収集しましょう」とナンシーが提案する「万が一チュパカブラが接近してきても、このカラテ検知器があれば大丈夫だわ」。「わかった、ではこちらは爆発で倒壊した西区画を調べよう。地図によれば、地下研究施設への入口があるはずだ。ナンシー=サン、油断するなよ」

2011-04-17 22:25:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは四連続バク転で、レーザー光線トラップを軽やかに回避した。そのまま一瞬たりとて動きを止めず、壁に一列に埋め込まれたダルマめがけてスリケンを投擲する。ダルマが爆発する頃には、彼はもう前を向いて矢のように駆けていた。

2011-04-17 22:33:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

西区画に近づくにつれ、警備システムが危険になってゆく。こんな健康ドリンク工場は考えられない。間違いなくこの先に恐るべき秘密が待ち構えているのだ、と彼は確信する。直後、天井からディスコボール状のマシンガン発射装置が出現! 「イヤーッ!」無慈悲なジャンプパンチでこれを破壊し突き進む!

2011-04-17 22:37:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーと別れてから、ニンジャスレイヤーは一秒たりとて前進を止めていない。彼女がハッキングによって得た見取り図からすると、もうじき地下への入口だ。そのとき、天井からディスコボール状のマシンガン発射装置が2個出現! 「イヤーッ!」無慈悲なダブルジャンプパンチでこれを破壊し突き進む!

2011-04-17 22:43:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ついにニンジャスレイヤーは、銀行金庫的なドアによって封印された地下施設への入口を発見。「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」警戒色に塗り分けられた大型ハンドルを、ニンジャ筋力で強引に回す! 圧縮空気が漏れ出し、分厚い鋼鉄製の隔壁が撲殺されたマグロのようにだらしなく口を開けた!

2011-04-17 22:50:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階段を降りる時間も惜しい。ニンジャスレイヤーは飛び込み選手のように両膝を抱えながら、斜め前方への空中回転で一気に距離を稼ぐ!「Wasshoi!」そして着地! マフラー状の布をなびかせながらさらに駆ける! もっと速度を! 亡霊の如き悪夢を振り払うのだ! スゴイタカイ・ビルの悪夢を!

2011-04-17 22:54:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……何だここは?」崩落した廊下を諦め、壁を破りながら闇雲に突き進んだニンジャスレイヤーは、突然、開けた暗い場所に出た。一瞬、足が止まる。

2011-04-17 23:09:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

重犯罪刑務所の独房棟のように、左右に三階層の階段と廊下が並び、ショウジ戸で封印されていた。タタミ1枚分ほどの個室らしきものが、この空間内に数十個存在するのだ。天井の非常ボンボリがバチバチと火花を散らし割れる。ショウジ戸の奥で青白い光が明滅し、数十個の人影が浮かび上がった。

2011-04-17 23:12:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは不吉な胸騒ぎを覚えながら、最も近くにあるショウジ戸の前に立つ。そして勢い良く引き開けた! おお、ナムアミダブツ! そこには見覚えのあるクローン培養プラントが置かれ、ニンジャ装束を着た人影が正座したままうつむいていたのだ! 肉はもう無い! 骨だけの死体である!

2011-04-17 23:16:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴らめ、クローンニンジャと言っていたか……?」ニンジャスレイヤーはいいしれぬ怒りに心を支配され、隣のショウジも、さらに隣のショウジも開け放った。そこにはやはり、骨だけになったクローンの死体がニンジャ装束を着て、奇怪な溶液の中に正座の姿勢のまま浮かんでいたのである! コワイ!

2011-04-17 23:18:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時、奥の小部屋から物音が聞こえた! さてはチュパカブラか? ニンジャスレイヤーは右手でスリケンを握り、左手でチョップの態勢を取り、攻防一体の構えで駆け込む! だが意外にも、小部屋からは弱弱しい悲鳴が漏れ聞こえてきたのだ! 「アイエエエエ……誰か、誰か……!」

2011-04-17 23:22:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

小部屋は何らかの制御室のようだった。壁に埋め込まれた大型UNIXがグルグルと何十個ものテープを回し、パンチドシートを吐き出している。点滅するボタンパネルからは時折火花が散っていた。「アイエエエ……ここです……」その声の主は、片方の足首を倒壊したガレキに潰された研究員であった。

2011-04-17 23:25:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは研究員の上に馬乗りになり、襟首を掴み上げて質問する。「この施設は何だ? 手短に説明してもらおう。クローンニンジャ計画とは何なのだ?」「アイエエエ! ニンジャ! ニンジャアバーッ!」研究員は初め恐慌に陥っていたが、加減して平手打ちを入れると、おとなしくなった。

2011-04-17 23:29:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「時間がない、答えれば助ける」鋼鉄メンポの奥から情け容赦ない声が漏れた。「アイエエエ…」胸のバッジにタケシタと書いたその研究員は、泣きながら答える「計画は失敗に終わりました。ニンジャの体組織をもとにクローンを作成することはできたのですが、ニンジャソウルの複製は不可能だったのです」

2011-04-17 23:36:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『クローンニンジャ計画には、我が社にとって2つの利点がある……』ナンシーは課長室の机の引き出しに隠されていたマキモノ・ダイアリーを解読していた。記録者はチャベタ所長。『……ひとつは、ソウカイ・ニンジャによる支配のくびきを脱せること。もうひとつは、人類に新たな脅威を提供できること』

2011-04-17 23:42:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『我が社のキャッチフレーズ、“ビョウキ、トシヨリ、ヨロシサン”を思い出して戴きたい。我々は毎年インフルエンザを造り、抗体を販売してきた。延命治療を発展させ、老人ホームビジネスを展開してきた。だが人々は恐怖に鈍感になってゆく。もはや誰も重金属酸性雨を恐れない。新たな脅威が必要だ』

2011-04-17 23:44:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『それがニンジャだ。まだ技術的課題は大きいが、私が先日発明したカラテ測定器を応用することで、ニンジャソウル検出が可能になるだろう。クローンニンジャをウィルスのように放ち、ポータブル・ニンジャソウル検知器を販売する。キャッチフレーズはこうだ“隣の部屋にニンジャがいるかもしれない”』

2011-04-17 23:51:00