日向倶楽部世界旅行編第57話「予選六回戦 VS 天獄花鏡」

予選四回戦にも拘らずハイレベルな激闘を繰り広げたWヴィーストとなかよし伊勢型。そして時は経ち大会は六日目、輝かしい激闘の一方で、あきつ丸達のチームアイアンクロスは苦戦を強いられていた…
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三隈グループ @Mikuma_company

「私はみゆき、扶桑みゆき」 「鈴谷殿、ごめんなさい…」 「まだチャンスはある」 「姐様、任せました…ッ!」 「山城…勝つわよ!」 「お前なんかより出来る奴は山ほどいる」 「誰にでも光がある、輝ける場所がある」 「今、そこに居るのは誰だ?」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/9nl0plb7Si

2018-08-01 20:45:14
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 日向達の戦いはすごかったですね、とても激しいものだったので怪我をしないか心配で見ていられませんでしたが、終わった後の二人の表情はとても爽やかだったので安心しました。そうそう、今日で大会は6日目を迎えます、予選抜けが確定したチームも出始めていて、ニュ

2018-08-01 21:00:55
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【前回の日向倶楽部その2】 Cリーグ4回戦第一試合は、最上の機転により急展開を迎える。カウント奪取に向かう最上、そこに現れる伊勢、だがその伊勢を足止めしたのは、かつて最上と激闘を繰り広げた足柄だった。結果、勝利したのはWヴィースト、予選とは思えぬ白熱した試合に、会場は大いに湧いた。

2018-08-01 21:02:06
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第57話「予選六回戦 VS 天獄花鏡」

2018-08-01 21:03:09
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〜〜 ブルネイ泊地海上スタジアムオー…略して闘技大会は、今日で予選6日目を迎えていた。 ここまで各リーグ5試合が消化され、残りは2試合。全勝ペースで予選抜けを確定させるチーム、連勝で逆転を狙うチーム、好調なスタートを切りながらも、疲労で徐々に調子を落とすチーム…その様相は様々だ。

2018-08-01 21:03:48
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そしてその中でも、Gリーグに属するあきつ丸と鈴谷のチームアイアンクロスは、そのどれでも無い不安定なところにいた。 わかば組、TGS艦娘チームを打ち破り、2勝0敗のスタートを切ったチームアイアンクロスは、あきつ丸の早まりにより、三回戦の美少年艦隊との試合で敗北を喫した。

2018-08-01 21:05:05
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そこまでならまだ2勝1敗、十分取り返せる戦績だった。だがあきつ丸は艦娘としても、一人の人間としてもまだまだ未熟であり、そのメンタルにも虚弱さがあった。 そしてこの敗北は、そんな彼女の未熟な精神に、想像以上のダメージを与えていたのである。

2018-08-01 21:06:04
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続く四回戦、前日の敗北により、あきつ丸は完全に調子を崩していた。その崩れ方は凄まじく、折角洗練されて来た鈴谷との連携も全く取れないまま、まるで昨日艤装を受け取った艦娘のような酷い動きを見せた。 その結果、彼女達はさほど実力に開きの無いチームにあっさりと敗北してしまう。

2018-08-01 21:07:20
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その翌日、2勝2敗という負ければ後がない状態の五回戦。相手はGリーグ最下位の弱小チームだが、ここでまたしてもあきつ丸は失策、前日より更に悪化した戦いぶりの中で真っ先に脱落した。 鈴谷が奮戦し試合には勝利した為、3勝2敗というギリギリの成績で5日目を終えられたのは幸いであった。

2018-08-01 21:08:22
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3勝2敗、後2戦を勝利で終えれば予選抜けのチャンスはある。しかし今の調子のあきつ丸では、残る2戦を突破するのは不可能に等しいだろう。 何せ残る相手は4勝1敗と5勝0敗という好成績のチーム、Gリーグのトップ2なのだ。当然、これまで以上に苦しい戦いを強いられることとなる。

2018-08-01 21:09:26
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鈴谷がいくら強いからといって、あきつ丸との連携なしでこれらに打ち勝つのは不可能、勝利の鍵は彼女が握っている。 だが残念ながら、あきつ丸はそれを自覚できていない。ボロボロな状況でも試合は1日を待たずに始まる、果たしてチームアイアンクロスの運命は… 〜〜

2018-08-01 21:10:34
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〜〜 第二スタジアム控え室、時刻は午後0時。 試合を一時間後に控え、あきつ丸と鈴谷は一足早く待機していた。 「いち、に…いち、に…」 あきつ丸は準備運動とばかりに身体を動かす、ひたすらに動かす。それは試合に備えてのことであり、逃避でもあった。

2018-08-01 21:12:34
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そんな彼女を、鈴谷がコーラを飲みながら横目に見る、お互いいつもの調子であった。しかし試合が始まると、そのいつもの調子は崩れてしまう。あきつ丸は鈴谷と出会った頃よりもひどく、稚拙な動きしか出来なくなっていた。 (心持ち一つで変わるもんかねェ、人間つーのは)

2018-08-01 21:13:36
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屈伸運動をするあきつ丸を、鈴谷は瑠璃色の瞳で見つめる、そして励ますように言った。 「…あきつ丸ちゃん、あんま気張らないでさ、いつも通りやれば良いぜ、あたしも上手くやるからさ。」 彼女がこうした激励を送るのは最早習慣のようになっていた、何度も何度もやっていた。

2018-08-01 21:14:35
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それで何か変わるかと言えば、大して変わらなかった、変わらないからあきつ丸もこんななのだ。 励ましを受けたあきつ丸は屈伸運動を止め、鈴谷に背を向けたまま答える。 「…申し訳ありません」 「んぁ?」 「自分ではなく他の人なら、もっと上手く、貴女と組めたと…ごめんなさい…」

2018-08-01 21:15:36
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泣いてこそいなかったが、あきつ丸の背中は悲壮感が漂う。最も、組んだ相手に今更こんな事を言うというのは相当に失礼、同情出来る悲壮ではなかった。しかし鈴谷は機嫌を損ねる様子もなく、笑って答えた。 「…気にすんなって、これから挽回すりゃあいいさ、まだチャンスはある。」

2018-08-01 21:16:38
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彼女は一切責める事なくそう言うと、またコーラを飲む。あきつ丸は鈴谷の答えに沈黙を返すと、また準備体操を始めた。 とその時、コンコンと控え室のドアがノックされた。まだ時間ではないので鈴谷が目を細めていると、ドアが開いた。 「失礼するわ、ここがチームアイアンクロスの控え室かしら?」

2018-08-01 21:17:42
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現れたのは、変わった髪飾りと白いスーツに、パーマのかかった金髪が目を引く女性。なんとも奇抜な人物の登場に、鈴谷は一層顔をしかめる。 「…確かにここはアイアンクロスの控え室だけどよ、誰だあんた」 彼女が訊ねると、女性は金髪をファサッとなびかせて答えた。

2018-08-01 21:18:42
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「私はみゆき、扶桑みゆき。貴女達と対戦するチーム、天獄花鏡の者よ。」 扶桑みゆきと名乗るその女性は、スラッとした立ち姿と共に名乗った。扶桑とはついているが、鈴谷達にとって馴染み深い扶桑とは全くの別物といった風貌、そして人柄だった。 「んなるほど…」 鈴谷はそっけなく相槌を打つ。

2018-08-01 21:19:46
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そこへ、今度はみゆきが訊ねる 「貴女が鋼の鈴谷、そしてそちらがそのパートナーあきつ丸ね?」 「ああそうだよ」 「なるほど…よく顔を見せて」 みゆきは鈴谷達の承諾を得る前に、二人に近付いて顔を覗き込む。彼女はそれなりの年なのか、近くで見ると濃いめの化粧が目立った。

2018-08-01 21:20:44
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それはさておき、みゆきは鈴谷の顔を見て言った。 「…流石歴戦の艦娘、顔立ちも精悍ね」 「……そうかい、そりゃどうも」 評価したみゆきだが、鈴谷はこれっぽっちも嬉しくなさそうな顔を向け、低い声であしらう。そして次にみゆきは、あきつ丸の顔を覗き込んだ。

2018-08-01 21:21:39
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彼女の顔は白粉で覆われている、みゆきはそれをジッと見つめた。 「……うん」 「あ、あの…」 あきつ丸は困惑し、目を背ける。すると、みゆきは頷いて言った。 「…あまり元気がない顔ね」 「は、はあ…」 もうあまりにも図星なのだが、あきつ丸は返す言葉もなく声を漏らす。

2018-08-01 21:22:46
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するとみゆきは、スラッと髪をなびかせて言った。 「誰にでも胸を張る資格がある、生きる権利がある。誰にでも光がある、輝ける場所がある。」 「…はい?」 「私が昔かけられた言葉、貴女にも伝えておくわ。」 突然の言葉にあきつ丸と鈴谷はぽかんとするばかり、突然現れてこの人は何なのだ

2018-08-01 21:23:41
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そう戸惑っていると、今度はリーゼントにポンパドールな髪型の、男だか女だかよく分からない奴が入ってきた。 「姐様ッ!シツレイシャス!」 「山城、ちょうど良いわ、貴女も挨拶を。」 「ウスッ!波浪院山城ですッ!みゆき姐様の秘書をやらせていただいてますッ!」

2018-08-01 21:24:39
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最早何が何だかさっぱりだが、礼節はキチンとしている為、二人は何も言う事が出来ない。それを分かってるのか分かってないのかは知らないが、みゆきは何やら紙袋を置いて言った。 「これも何かの縁、化粧水置いていくわね、名刺も置いていくわ。良かったらうちの化粧品、試してみてね。」

2018-08-01 21:25:35
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