ベリアル・アンダーカバー ＃５

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ！」スモークドラゴンが叫び、うつ伏せに倒れ伏すと、背中を蹴り離れたガーランドもまた着地した。「ハイクは詠めまい」ガーランドは呟いた。「貴様は相当な使い手だった。誇って死ね」「サヨナラ！」スモークドラゴンは爆発四散した。　24

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「……」ガーランドはザンシンを解く。彼の動きを見とがめたニンジャは今の二人のみ。彼以外のソウカイ・シンジケートのニンジャが街区で派手に暴れているからだ。言い換えれば、ラオモト・チバがくだした命令は極めて非情。ガーランドのミッションの達成の為に他の者達が囮となるという事だ。　25

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しかもヴァニティら他のシックスゲイツは、その事すら知らされていない。真の目的は伏せられたまま、ただ漠然とした、落としどころのわからぬミッション……過冬に因縁をつけ、アラスカの街を荒らす、そんな汚れ仕事を引き受ける格好だ。否、汚れ仕事はこちらか。ガーランドは淡々と思考を巡らす。　26

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だがそれでも彼らはラオモト・チバを疑ったり、その忠誠を曇らせはしないだろう。それがソウカイ・シンジケートの在り方であり、ラオモト・チバはその信頼に応えるオヤブンである。いまだ未熟なインシネレイトは、ともすれば不平の一つ二つでも言うであろうが……。　27

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そして実際、彼ガーランドがラオモト・チバから直々に受けたミッションは、それほどまでに慎重に取り扱わねばならぬ問題であった。現在のシックスゲイツで最も古参であるガーランド以外に、この役目を果たせるニンジャはいない。特にヴァニティは幾つかの理由でこの真相へのアクセスには不適格だ。　28

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約10年前の月破砕以後、ラオモト・チバは己のルーツを無視できぬものと認識し、調査を続けてきた。それは深く秘された血筋であり、チバ自身もそのときまで……恐らくは彼の母の意志により……知らずに来た。それは「鷲の一族」という血筋だった。　29

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鷲の一族は電子戦争以前の世界を支配してきた血筋である。一族自体は既に衰え、何ら現実的な権力を有してはいない。だが、その血は大いなる禁忌「メガトリイ」の遺産への接触の権利を持つ可能性がある。仮に鷲の一族の末裔がラオモト・チバの他におれば、その潜在的な脅威ははかりしれない。　30

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ラオモト・チバの母の名は、ディアンタ。ニンジャソウル憑依を果たす以前のラオモト・カンが子を産ませた相手の一人である。ディアンタはラオモト・チバを産んだのちに姿を消した……ラオモト・カンの不興を買ったのか、自ら逃げたのか。今となってはわからぬ事だ。彼女は鷲の一族の末裔であった。　31

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そのディアンタはネオサイタマを遠く離れた地でユーリアという名を得、市井のオイランとして暮らし、若くして死んだ。……そのディアンタが、ネオサイタマに触手を伸ばすヤクザニンジャ組織「過冬」の首領との間に実子をもうけていたとすれば、どうだ。セキュリティ。メンツ。二つの側面の重大事。　32

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ガーランドは既にディアンタが故人となっている事の確証を、複数の情報から裏付けた。そして、この事実をシンウインターが得ていないことは幸いであった。ディアンタの心境は知る由もない。己の経てきた人生を語らず、血筋を語らず（あるいは知らず）、唯のオイランとして、貧しく死んだ。　33

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シンウインターは実の娘の存在を長く知らずに来た。彼とディアンタにどの程度のつながりがあったのかは知らぬ。彼がニンジャになる以前、過冬で頭角をあらわす以前の関係。ヤクザとその情婦といったところだろうか。実子の存在をニンジャとなった後に知った彼の歓喜はいかばかりか。　34

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ここに至り、まずはディアンタの死亡を確認。残るは、シンウインターのもとにいる筈の実子、オリガ。ガーランドのミッションの半分が完了した。……しかし。ディアンタに関しては、こうしてただ確かめればそれで済んだ。問題は実子のオリガだ。おそらくは過冬の首領の懐にあり、その現状は不明。　35

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「……」まずはオヤブンへの通信、現状の報告だ。ガーランドはクナイウィップを蹴り上げ、掴み取って懐に戻し、歩き去った。数分して再び戻って来た彼は、ディアンタの墓に花を供えた。これでよかろう、とばかり、短く頷いて、去った。　36

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【続く】