視える人が妖精の仕立て屋をする話

現代と妖精世界がごっちゃになっているがばがばファンタジーなのですべての出来事を大目に見てください。
10
乃井 @no_el_ty

「……困ったわ。妖精王の姪子様に魔法反射のドレスを仕立てるのに、彼女ったら、銀大蟷螂にアレルギーがあるなんて……!魔法反射の強度を上げるには銀大蟷螂の後翅が必要なのに……!」みたいな仕立て屋さんの話、誰か書いて。

2018-08-04 17:57:29
乃井 @no_el_ty

「わかんないーー妖精の IV型アレルギーわかんないよーー!!そもそもアレルギーに詳しくない!!!人間とからだの構造があからさまに違うくせにアレルギーとかいう人間語を輸入してくるからこーーいうことが起きるぅ!!!もーやだぁ!!!あたしはふつうの仕立て屋になりたかったんだぁ!!」

2018-08-04 18:04:24
乃井 @no_el_ty

「でもあたし視えちゃうから!チャンネル常に開きっぱなしで閉じらんないばっかりに!!妖精王からこんな手紙がくる!!ついでに女王から無茶振りしてごめんねって手紙までくる!!自由すぎる旦那の行動にフォロー入れられるティーちゃんは好き!!でもそうじゃなくて!!!」

2018-08-04 18:07:42
乃井 @no_el_ty

「落ち着いたか?」 「……はい」 「それで、私は何を狩ればいいのだ」 「待ってください、調べるんで……ええと、銀大蟷螂以外に、魔法反射の強度を上げるには……あ゛ーーーーっっこの古代語翻訳できない!!!Google先生の敗北!!!」 「む。……古き竜の言葉だな。随分と訛りのある……」

2018-08-04 18:16:19
乃井 @no_el_ty

「ホワイティさん読めます?!」 「読めん。が、この単語はわかる。古代妖精語だ」 「えっ、なんで妖精語?」 「竜語に表現する言葉がなかったのだろう。この方言のある地域にはいないものだからな……『透ける袖』だ」 「透ける袖?シースルー素材?なに合わせようかな……」

2018-08-04 18:23:46
乃井 @no_el_ty

「……しかし、『透ける袖』は私ではどうにもならない。誓いに反する」 「えっ。誓いってことは……フェアリー系なんです?」 「我々をフェアリーなどと呼ぶのはやめろと言っているだろう。……彼らは沼地にいる花の一族だ。人間はなんと言うんだったか。原初の海より生まれた貴い方々だ」

2018-08-04 18:29:50
乃井 @no_el_ty

「原初の海……沼の花……?オッケーGoogle………………ブルーロータス!うわ綺麗だな!これならこう!こうしてこう!!」 「ああ、麗しい。彼らの翅の色だ」 「…………翅なんですか!?じゃあだめでは!?」 「駄目というか、……まあ、駄目だろう」

2018-08-04 18:38:56
乃井 @no_el_ty

「……うー、じゃあ、やれることは人間の魔法反射防壁の術式を編み込むくらいしか……大体あなたがた元々の魔法反射力高いじゃないですか!?わざわざ人間なんかが作る魔法反射ドレス着る必要あります!?」

2018-08-04 18:42:27
乃井 @no_el_ty

「それはお前が我々に愛されている証拠だろう。愛しいものからの贈り物は何にも変えがたい」 「うっ。………………じゃあ、ふつうのドレスじゃだめなんですかね」 「それは。……"紫双貌の君"の現状を考えればこそかと」 「姪子様の?」 「人間の魔法反射は"目に見える"だろう?」 「派手に光ります」

2018-08-04 18:53:22
乃井 @no_el_ty

「おそらく王は、それを望んでいる。……その、水夫の足を嗅いだ猫のような顔をやめろ。淑女だろう。つまり、貴き紫の君は命を狙われているのだ。しかし、刺客は隠匿の魔法によって隠されている」 「隠匿するなら、目に見えるようなとこで魔法で決着つけようとは思わないんじゃ?」

2018-08-04 18:59:56
乃井 @no_el_ty

「必ず大舞台の上で仕掛けるだろう。何故なら、刺客が欲しいのは君の命ではなく、婿殿の絶望なのだから」 「…………あー!痴情のもつれ?!」 「身も蓋もない言葉で片付けるんじゃない。淑女だろう」

2018-08-04 19:02:26
乃井 @no_el_ty

「…………なんかあたし、いらんことに巻き込まれかけてません?」 「だから、女王が手紙を寄越したのだろう」 「………………ていうか、妖精の王が見破れないような隠匿の魔法を使うような相手の攻撃魔法を反射するようなドレスを、わたしが、作れるとでも………………?」

2018-08-04 19:04:54
乃井 @no_el_ty

「…………」 「…………」 「……それで、私はどうする。『透ける袖』以外のものならば、ヤマイタチの誇りにかけて用立てるが」 「無理矢理話を進めないでぇ!?」

2018-08-04 19:07:45
こさと(だいたい三味線) @cradleofraimu

@no_eL_t ざっくりらくがきですが!すてきなものをありがとう!! pic.twitter.com/TUJ5DXM5D0

2018-08-04 20:38:36
拡大
乃井 @no_el_ty

「これでよしっと。ごめんなさいグラさん、お待たせしました!」 「いいえ、構いませんよ愛しいひと」 「はいはい、いい加減その呼び方やめてくださいってば」 「愛しいひとを愛しいと言うたび、わたくしの鬣は喜びにうちふるえ艶を増すのですよ!……なんて軽い荷物でしょう、運び甲斐のない!」

2018-08-13 00:18:39
乃井 @no_el_ty

「まあ、ドレス一着ですからね……呼びつけるのもどうかと思ったんですけど、誰にも内緒で王に渡すならグラさんに渡すのが一番かなって……」 「構いませんよ、愛しいひと!嗚呼、女王に禁じられていなければ、真珠の首飾りを贈って差し上げるのに!」 「の、のーさんきゅー……」

2018-08-13 00:26:57
乃井 @no_el_ty

「ええ、ええ。謹み深いのも美点ですね愛しい人!結局このドレスには何をお使いになったのです?銀大蟷螂は使えなかったと風の一族が囁いておりましたが」 「あ、結局『透ける袖』の方々にご協力いただいて。ちょうど生え代わりの時期だったのが幸いして……ていうか妖精の翅って生え代わるんですね」

2018-08-16 17:16:25
乃井 @no_el_ty

「ええ、彼の方たちは花の一族ですから、生え代わりましょうね。枯れてまた咲く、繰り返す不死の一族ですよ」 「なるほどなー。……グラさんの角も生え代わります?」 「いいえ愛しい人、わたくしの角には神経が通っておりますから!そんなに熱視線を向けられてもお渡しできかねるのですよ!」

2018-08-16 21:13:14
乃井 @no_el_ty

「白くて綺麗だからアクセサリーにいいと思ったんですけどね……えーっとそれじゃあ、お代の話なんですけど」 「嗚呼、三つ編み!相変わらずあなた様は心得ておられる!願いを叶えるには代価が必要。これを破りたがる人間のなんと多いことか。だから一部の隣人から下等だと嫌われるのです」

2018-08-16 21:18:53
乃井 @no_el_ty

「ご、ごめんね」 「いいえ、いいえ愛しい人!あなたが謝ることではない。人は成したいように成す。わたくしたちもそうです。ないがしろにされるのならばわたくしたちもないがしろにする。対等にあろうとするならば、あなたとわたくしたちは対等です。愛しい人!」

2018-08-16 21:21:31
乃井 @no_el_ty

「妖精さ、あっいや、隣人、……あなたたちのそういうとこ、好きです」 「人はこれを相思相愛と申しますれば!やはりわたくしの真珠を受けられませんか?」 「いや、それはのーさんきゅーです……」

2018-08-16 21:24:33
乃井 @no_el_ty

「……はー。あの猛烈なプロポーズ癖がなければ、いいひと……いい妖精……いい隣人なんだけどなあ。……髪、不揃いになっちゃった。整えなきゃ。美容院……美容院なー……おっけーGoogle、エルフのやってる美容院」

2018-08-16 21:28:31
乃井 @no_el_ty

──妖精の類いは、兎に角ルールやきまりごとに厳しい。守らぬ者を罰し、容赦なく奪う。しかしルールの上の約束は必ず守り、小賢しい横紙破りをしない……もちろん真実を"黙っていて"惑わすようなことはするが、嘘は吐かない。だからこそ人間に屁理屈を並べられて丸め込まれてしまうことが多い。

2018-08-16 21:35:15
乃井 @no_el_ty

「……人間相手より、よっぽど疲れないんだよなあ」

2018-08-16 21:35:41
乃井 @no_el_ty

「いらっしゃいませ~」 「あの、予約したタチバナですけど」 「はい~タチバナさん!お待ちしてましたぁ!シャンプー台にどうぞ~」 「……え、えっと。エルフの店長さんは……?」 「あ~ごめんなさい、店長、長耳風邪ひいちゃってぇ、わたしワンオペなんですよ~」 「……人間……?」

2018-08-18 10:19:30