ベリアル・アンダーカバー #7
彼は4643営業社員にUNIXコールを行った。「モシモシ」『モシモシ!やっと繋がりましたね!正直、ビジネスとしてこのアブセンス感は信頼感に曇りが生じるものでシツレイですらあるのではないですか!?私は放置されたに等しいですよ!クローンヤクザは細かい状況説明ができない!』「そう仰らず」 23
2018-08-21 23:02:31営業社員はこの異国の空の下、トレーラーの助手席で、融通の利かないクローンヤクザ運転者の隣でさぞ心細かったことだろう。『ただでさえこのような深夜に……ヨロシマンは24時間喜んで労働する企業戦士だ。しかし、シツレイには敏感です。取引条件の再考を上席に打診したくなってきます!』 24
2018-08-21 23:04:56「良い関係を築きたいものです」カークィウスは無感情に言った。『工事中なので道を変えます』通信機から、クローンヤクザの声が聞こえた。『何ッ!?この期に及んでまたルート変更ですか!?本当に工事なのかね君ィ!さっきから君ねェ!』『ブレーキが壊れてしまいました』『アイエエエエ!?』 25
2018-08-21 23:09:03カークィウスはUNIXモニタに情報を展開。車両の現在座標に目を細める。光点は速度を上げ、中央区の指定ポイントに矢のように向かっている。当然それは現在ソウカイ・シンジケートの者どもが雪隠詰めされている交差点だ。ナムアミダブツ。メンポの下で、カークィウスの口角は上がっていただろう。 26
2018-08-21 23:11:35あと数分で、悲劇的廃液流出事故が発生する。カークィウスは……「……?」光点が停止した。遅れて、悲鳴があがった。『アイエエエエエ!』そして、衝突音。KRAAAASH!何かが、違う!彼のニンジャ第六感は即座の行動を示唆していた。彼は鳥籠の一つを開け放ち、鸚鵡を外へ取り出す! 27
2018-08-21 23:14:26窓際へ歩きながら、カークィウスは鸚鵡にカラテを注ぎ込んだ。十分なカラテ充填を終えると、鸚鵡は内なるエーテルに輝き始めた。邪悪な輝きである。カークィウスは鸚鵡を外へ放つ!たちまち彼は盲目となり、かわりに鸚鵡の視聴覚が展開する。……急がねばならない! 28
2018-08-21 23:16:12BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!ホローポイントは道路の真ん中で仁王立ちしたまま、引き金を引き続けた。ニンジャといえど、ノーブレーキ速度のトレーラーの大質量に衝突されれば爆発四散は免れない。だが彼は冷徹に撃ち続けた。引き金を引くとき、彼のニューロンは澄み渡る。 30
2018-08-21 23:18:47そしてその行動はヤバレカバレでもなかった。ホローポイントは銃弾の一つ一つをニンジャ動体視力・ニンジャ洞察力・ニンジャ第六感の総動員の中で導き、必要とされるポイントに正確無比の衝撃を与えていった。その瞬間、彼は呪いや狂気や依存から自由だった。彼は嬉しく思った。 31
2018-08-21 23:21:16SLAM!……KRAAAASH!トレーラーは横転し、スピンし、ガードレールをへし歪めながら、ホローポイントの眼前に迫る。ホローポイントは仁王立ちしたまま、淡々とマガジンのリロードを行う。トレーラーは……道を塞いだ状態ではあったが……彼の鼻先1インチ地点で、停止した。 32
2018-08-21 23:23:13KRAAAASH!「アバーッ!」ガラスを突き破り、助手席から射出されたサラリマンが、ガードレール外へ飛び、カニ養殖プールに落下した。「アイエエエエ!アババババーッ!」水飛沫と沈黙。ホローポイントの意識の外だ。彼の注意は、オーロラゆらめく空を斜めに飛翔する鳥影に向けられた。 33
2018-08-21 23:25:18「や……やりましたぜ!」交通標識の上に止まり木めいて止まったブルハウンドが声をかけた。「これでひとまず一番ヤベェ事態は避けられたといっていいんじゃないですか……アイエッ!?」ホローポイントの視線を追った彼は息を呑んだ。鳥影は旋回し、彼らのニンジャ視力の視界の中で、質量を増した。34
2018-08-21 23:30:18瞬時にパンプアップした鸚鵡は有翼のニンジャの姿を取り、羽ばたきながら降下した。ホローポイントは痰を吐き捨て、銃を向けた。既にブルハウンドは高架下へ飛び降り身を隠している。「ドーモ。ホローポイントです」先手を打ってオジギする。有翼のニンジャが返す。「ドーモ。カークィウスです」 35
2018-08-21 23:34:12「あら……スゴイ」ホローポイントの耳元でディアボリカが囁いた。「相当やれそうなニンジャじゃない。お望みにかなう相手が出てきたんじゃないかしら……相当おかんむりのようだし」「うるせェぞ」「キリングフィールド・ジツで、うふふ……捕らえ損ねたら、また私と二人きり」「うるせェぞ……!」36
2018-08-21 23:37:47「クロスカタナ紋。ソウカイ・シンジケートだな」カークィウスが言った。「やってくれたな。別動隊がいたか。いかにしてイチモ・ダジンを知り得た」「そんなもんニンジャの一匹二匹痛めつけりゃ簡単よ」ホローポイントは答えた。強調し、繰り返した。「死ぬほど、痛めつけりゃあよ……簡、単、だ」 37
2018-08-21 23:42:47「情報を繋ぎ合わせたか?なかなか油断のならぬニンジャだ」「とにかくよォ」ホローポイントは突発的にぶるぶると震え、やや恍惚とした笑みを浮かべた。「何だかしらねェが勝手はさせねえ。なあ。俺はよォ……とにかく殺してェんだよ……」カークィウスはもはや答えず、カラテを構えた。 38
2018-08-21 23:46:58BBLAMNN!銃弾がイクサの口火を切った!「イヤーッ!」カークィウスは側転回避し、瞬時にホローポイントの側面ワン・インチに至ると、電撃じみた速度のチョップを繰り出す!「イヤーッ!」ホローポイントは左の銃底でチョップを受け、脇腹に右の銃を当てて引き金を引いた!BLAM! 39
2018-08-21 23:50:25「ヌウッ……!」カークィウスは身を翻し、転がって間合いを取った。脇腹へは銃弾がかすめただけだ。接射であったが躱された。ホローポイントはこの者のカラテ強度を確信した。不用意なキリングフィールド・ジツは不本意な結果を招くことになる。気に入らなかった。 40
2018-08-21 23:52:58ここまで彼はキリングフィールド・ジツを濫用し、目的達成の為に最短距離を動いてきた。それもこれも、ザルニーツァとのイクサでブザマを晒した恥辱をそそぎ、シックスゲイツの中での遅れを取り戻すためだ。ナメられれば足元を掬われるのがヤクザニンジャの世界である。 41
2018-08-21 23:56:01過冬によるイチモ・ダジンを封じ、この高位ニンジャを倒せば、まずは復帰の狼煙としては上々。その為に己を駆り立て、自らを銃そのもの、非情な殺しの機械と化す。汚名返上に邁進する事で、呪いに打ち克つ事もできる……!「シニサラセ!」BBLAMNN!ホローポイントは二挺拳銃並行同時射撃! 42
2018-08-22 00:01:09「イヤーッ!」羽根のスリケンが銃弾を迎撃し、弾き逸らす!ホローポイントの防御は間に合わない!「イヤーッ!」「グワーッ!」瞬時に踏み込んだカークィウスがポン・パンチを見舞う!ホローポイントは横転トレーラーの腹に背中から衝突!「グワーッ!」苦痛を噛み殺し、銃を向ける! 43
2018-08-22 00:04:46BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!撃ちまくるホローポイントに、カークィウスはキリモミ回転しながら再接近!カラテ乱打!「イヤーッ!」「グワーッ!」 「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」視界が真っ赤に染まり、ニンジャアドレナリン過剰分泌!ホローポイントは歓喜する! 44
2018-08-22 00:06:11彼は両手をだらりと垂らし、血走った目を見開いた。カークィウスのカイシャクを受け入れるように。ソーマト・リコール現象の中、カークィウスは狙いすましたチョップ突きをゆっくりと構える。ここだ。ホローポイントの笑みが深まる。サップーケイだ。「ふふふ、死ぬのね……」ディアボリカが笑った。45
2018-08-22 00:09:21しかしその次の瞬間に起こった出来事は、その場の他の誰もが望まぬことだった。ギュグン。カークィウスのチョップ突きがぎこちなく引き戻された。カークィウスとホローポイントの目が、その手首に絡みついたものを追おうとした。鋭利なクナイで彩られた鞭……一瞬後!「イヤーッ!」「グワーッ!」 46
2018-08-22 00:11:21カークィウスの身体が宙に跳ね上げられる!それは……おお、ナムサン!ホローポイントが嫌というほど知っている武器。クナイ・ウィップ。その使い手は……ナムサン……ガーランドである!言葉なく、ただ、冷たい眼差しがホローポイントを射る!「ザッケンナコラー!」ホローポイントは銃を構える! 47
2018-08-22 00:14:14