140ssログ4月~8月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

貸してあげます。宗三から渡された髪結いの紐で、纏め上げられ。似合うと思うよ。蜂須賀からは、真新しい着物を着せられて。僕の目利きにかなったからね。歌仙からは鼈甲の帯留めが。最後のひとつは、初めから君が持っているからね。送り出す顔でそう言われる。さあ、幸せになるんだよ、と。(石かり)

2018-08-26 17:51:50
やまたに @mw_snc

はなれないで、と甘えた言葉は言えなくて。青江はただただ布団の中から彼の身支度を見守る。手櫛で髪を直して、一枚ずつ衣を纏って。狩衣で隠れる背中の筋肉が、伸ばした目尻の紅が、君を欲にまみれた男から清廉な神様に変えてしまうんだ。それを、寂しいと思うのも、わがままだろうか。(石かり)

2018-08-26 17:59:11
やまたに @mw_snc

つれないふりをして着替えるのも、実は大変なのだと君は知らないだろう。石切丸は内心思う。まだ君を抱いて眠りたい欲を振り切っているのに、恨めしそうに見ないでほしい、と。夕べの名残を残す視線は強烈で。全て捨ててしまいたくなるのに。ああ、平常心を。どうか神様、耐えさせてくれ。(石かり)

2018-08-26 18:03:40
やまたに @mw_snc

ぴたりと噛み合うのは、戦闘だけじゃなくて。君が笑えないときは僕が笑ってみせて、僕が泣きたいときは君が手を引く。僕らは補い合ってきただろう。青江はそう、自分から手を伸ばす。だから、僕はてのひらを繋ぐことに躊躇いはないし、君に笑顔が戻ったよ。そういうふうに、これからも。(石かり)

2018-08-26 18:09:01
やまたに @mw_snc

いきが、蝋燭を消していく。ひとつ、またひとつ。自ら傷つくなんて愚かだ、そう教えることを石切丸は出来なくて。だから、せめて。君が寄り添い続けてくれたように、私も傍にいさせておくれ。それでも、君を奪うものを許すことは出来ないことを、鈴の音に免じて許してほしい。(石かり)

2018-08-26 18:21:18
やまたに @mw_snc

うそを吐く。神様になんて興味がないよ。幼子を切ったことも気にしてないよ。君の言葉に傷付いてなんてないよ。そういうことにしたのに、君はいつだって僕の柔らかい部分に素手で触れるんだ。石切丸、本当は、ずっと君に祈祷の仕方を習ってみたかったんだ。他でもない、君に。(石かり)

2018-08-26 19:26:30
やまたに @mw_snc

えんもゆかりもない君に、心を縛られる。泣かれたわけでも、怒られたわけでもない君の諦めが、どうしてこうも気になるんだろう。青江さん、青江さん。一日、一月、百日を越えて、半年。どうして君が気になるのか。重ねた御幣の音に、この心臓の音が紛れるといい。君が好きだ。(石かり)

2018-08-26 19:33:12
やまたに @mw_snc

でえとをしよう。誘われて、青江は本丸を回る。初対面はここで。収穫した玉蜀黍は美味しかったね。馬が君の髪をよく食べていた。手入はいつも心配させたね。喧嘩の仲裁は歌仙さんの部屋が多くて。縁側で三日月に相談したよ。語られる思い出は、三年分。最後はきっと、一番慣れた君の部屋かな。(石かり)

2018-08-26 19:44:37
やまたに @mw_snc

いやなところはあるよ、と青江が言う。短気だとか、小うるさいとか。私だってあるよ、と石切丸が言う。ひとを振り回して楽しんでるとか、本心を隠してしまうとか。ただ、と続ける。好きなところに、嫌いなところは溶けてしまうんだ。僕だって、と青江も続ける。だから、僕はいつだって君が。(石かり)

2018-08-26 20:39:28
やまたに @mw_snc

ん。と、君は頷いて。うん、うん、普段のお喋りが、今日はなんだか大人しくて。でえとは気に入らないか、と少しも思えないのは、青江の癖を学んだからだ。大体は混ぜ返すように話して、少し近付くと背伸びして。子供のように辿々しく。そして、最後は言葉少なに。三年、近付き続けた愛しい子。(石かり)

2018-08-26 19:54:00
やまたに @mw_snc

ぐずぐずと、布団の中で微睡んだ。君とふたり、明かした夜は初めてではないけれど。青江、好きだよ。僕もだよ。その言葉すら、馴染んだものだけれど。どれだけ経っても、昨日の夜と今日の朝が一番幸せな瞬間で。来年の朝は、もっと青江が好きだろうね。君の言葉にまた頷く。(石かり)

2018-08-26 20:32:57
やまたに @mw_snc

すきだよ、と笑う青江は、いつも通りの謎めいた態度で。果たしてそれは、どういう意味なのか、からかっているだけなのか。それを随分悩んだものだ。石切丸は出会ったばかりの頃を思う。今も青江は戯れにそれを口にするけれど。私も好きだよ。そう言えば、真っ赤な君の意味などすぐ知れたのに。(石かり)

2018-08-26 22:14:05
やまたに @mw_snc

えらぶこと、選ばぬこと。刃ではなく、人の身を得て初めて出来たこと。青江はてのひらにそれを見る。選んだもの、選ばなかったもの、色々とあるけれど。そこへ、大きな手が重なって。青江、行こうか。かけられた声に、うん、と頷く。君が選んだのか、僕が選んだのか、それはわからない。(石かり)

2018-08-26 22:54:33
やまたに @mw_snc

なみだの痕を、太い指がなぞる。今日は当番があるのに。青江が文句を言えば、困った顔で。だって、君があんまり可愛いから。そうやって青江のせいにする。僕が可愛いと思えるのは君くらいだよ。今度は向こうに責任を押し付けて。真相は、互いに溺れてしまったせいだとふたり知っているけれど。(石かり)

2018-08-27 07:04:09
やまたに @mw_snc

がらがらと崩れたのは、鋼としての心だった。真新しい肉を剥き出しにした心臓が、君を見つけては跳ねる。怖い、ととうとう口にした。君といると、僕は。そんな弱音を、石切丸は簡単には受け止めて。私もほら、君といると恋心が叫ぶんだ。同じだよ、と抱き締められて、心臓が破裂しそうだ。(石かり)

2018-08-27 07:10:35
やまたに @mw_snc

くるしいことも、悲しいことも君と分けあいたいね。人の夫婦のようなことを石切丸は言う。嫌だよ、と青江は首を振った。だって、僕は君に一番格好つけたいし、君もだろう。弱いところを見せるのは、幻滅されそうだから嫌なのだ。なら、と石切丸が言う。楽しいこと、幸せなことをふたりで。(石かり)

2018-08-27 07:21:14
やまたに @mw_snc

おおきな手が好きだ。広い背中も、ほどよく柔らかい腹の肉も。それは誉めてるのかい。拗ねた大太刀の声に、青江は笑う。触れていた手を止めて。僕は好きだよ。それですぐに機嫌を治すところも可愛くて好きだ。この暴れん坊だけは、誉められないけどねぇ。次に触れた部分に、う、と声が上がる。(石かり)

2018-08-27 07:32:30
やまたに @mw_snc

しあわせの定義が、石切丸は緩い。大盛りのご飯に幸せという顔をするし、日向ぼっこに幸せだと呟く。茶柱が立ったら大騒ぎだ。そんな石切丸が、自分といるときに言うことは。君を幸せにしてあげたいんだ。あのねぇ、僕の定義も緩いから、君が隣にいるだけで十分なんだよ。(石かり)

2018-08-27 10:11:57
やまたに @mw_snc

あいを武器が語るなんて、と人間は言うかな。ふたり、手を繋いで誓う言葉。百人くらいは祝うかもね。肩を竦める青江に口付ける。もっとこの国の人は優しいだろうか。揃えた指輪を嵌めて。外つ国からも、きっとね。それは果たして希望だろうか。君を愛してる。それだけは真実なのだ。(石かり)

2018-08-27 12:02:21
やまたに @mw_snc

わたしの、と石切丸は青江を腕の中へ閉じ込める。私のだよ。あげないよ。子供みたいに大人の力で。ぎゅうぎゅうに抱き締められて、青江は微笑む。僕は決して逃げないのに。手放さないよ、大事にするよ。それは、人だけでなく、物としての喜びもくれるのだから。君も、僕のだよ。肯定が返る。(石かり)

2018-08-27 14:08:49
やまたに @mw_snc

せなかを晒す。それがどれほど危険なことか、戦の道具ならば皆知っている。無防備な背中が、石切丸の目に写る。それがどれほど愛しいことか、愛しいと表してくれていることか。青江。右手を彼に預けた。その意味も、君は知っている。だから、右の手を合わせて指を絡めるのだ。(石かり)

2018-08-27 15:27:56
やまたに @mw_snc

にっきを石切丸はつける。昨日戦ったこと、笑ったこと、全て。それは辿々しい人の身への慣れから始まり、戦況を憂えていく中で現れるひとつの名前。花が咲くように、実をつけるように増えて、広がり、いつしか君でいっぱいになる。なんだい、この日記は僕の観察日記かい。愛し子が微笑んだ。(石かり)

2018-08-27 21:02:39
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