140ssログ4月~8月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

人差し指、中指、薬指を通って小指。順番に口付けていくと、兄が笑う。焦らしてるのかい。楽しげな声は、反対の手を投げ出して。それにも同様に唇で触れた。僕は、誘ってみろと言ったのに。獅子を動かすには据え膳よりも飢餓だろう。蛇は待つのが得意なこと。拗ねた声が、畳へ体を引き倒した。(髭膝)

2018-04-02 07:08:44
やまたに @mw_snc

手のひらを合わせる。随分大きさが違うねぇ。そう言ってぎゅっと握るものだから、石切丸は目を細めた。可愛いと微笑ましくなるような、食らいたいと獲物を見定めたくなるような、そんな心地だ。そうしていると、反対の手も握られて、顔が近付いて。ここは、大して変わらないかな。唇を舐める。(石かり)

2018-04-02 07:23:59
やまたに @mw_snc

薄着のままの弟へ、とりあえずと目についた自分の上着をかける。兄者の真似みたいだ。ふふ、と上機嫌に笑う弟は単純で、だからこそ可愛くて。それと僕、どちらに包まれる方がいいのかな。意地悪を言えば、このまま抱いてくだされ、と返された。そうなると、僕こそ布一枚に簡単に鬼になりそうだ。(髭膝)

2018-04-02 07:35:27
やまたに @mw_snc

刃が煌めく。長い髪は弧を描いて。白装束はふわりと踊った。小さな金属がしゃらしゃらと音を立てる。ちらちらと見える瞳は宝石を嵌め込んだようで。動く君は、とても美しい。けれど、と石切丸は思うのだ。この腕に閉じ込めてしまいたいと。自分だけのものにしたいと。罪深いと知っていようと。(石かり)

2018-04-02 18:25:04
やまたに @mw_snc

太腿の紐を引く。体が揺れたものの、澄ました顔で。じゃあ、と髭切は結び目の下、足との境に指を入れる。かりかり、と袴を引っ掻いた。指の腹で肌を押す。兄者。赤い頬が、怒ってみせる。仕方ないなぁ、と引き抜いた指をぺろりと舐めれば、ますます赤くなって。なにを思い出したのかな、なんて。(髭膝)

2018-04-03 18:06:26
やまたに @mw_snc

兄者、と弟が笑う。僕だけに見せる幼い顔で、笑う。そこに少しの優越感と、ほの暗い欲望を覚えたのはいつからだったか。お前を、汚す夢を見たのは。隣で眠れば夢との境がわからなくなりそうで、髭切は昼間の縁側、そこに常駐する刀へと声をかけた。寝かせて。春告鳥はあっさりと隣を開けた。(髭→膝)

2018-04-04 07:15:06
やまたに @mw_snc

最近、兄者は鶯丸とばかりいる。それを嫌だと思ってしまうのは、兄を独占したいと思っているからだ。親愛も、尊敬も通り越して、俺だけのものにしたいと。ひょっとして、この気持ちに気付かれて、俺を避けるようになったのか。それは、悲しい。ぽたりと落ちた涙を、平安生まれの短刀は見た。(髭←膝)

2018-04-04 07:20:11
やまたに @mw_snc

春の陽にうとうとすれば、体が不意に持ち上げられて、誰かさんの膝の上。背もたれなのか敷き布団なのか、胸板に頭を乗せる。よしよしと頭を撫でられて、抗うことなく目を閉じた。ねんころり、と歌う声に、青江は本格的に眠りに入る。その前に唇を塞いだものの正体は知らないことにしてあげる。(石かり)

2018-04-09 06:55:06
やまたに @mw_snc

おとーと、おとーと。甘やかに呼ばれて、けれど己の名とは違うそれに膝丸は眉を寄せた。膝丸だ、兄者。いいからおいで。手招きされて近寄ると、ぎゅうと抱きしめられる。どうしたのだ。弟補給がしたくてねぇ。よくわからんが、まあいいか。身を任せると、厨でやらないでくれ、と当番の声がした。(髭膝)

2018-04-09 06:59:44
やまたに @mw_snc

朝だぞ。弟が優しい声で起こしてくる。兄者、朝だ。ぐちゃぐちゃの前髪を指先が避けて、なんとか持ち上げた瞼に薄緑が映る。ふああ、大欠伸をして。枕元に正座する弟の膝に頭を乗せる。兄者っ。責める声に目を閉じる。おやすみ、膝丸。それだけで黙るのだから、今日も僕の弟は可愛い。(髭膝)

2018-04-09 07:14:33
やまたに @mw_snc

弟は可愛いねぇ。言葉に弟はむすっとする。俺は可愛くない。そんなことないよ。弟は顔を背ける。今剣のようなのを、可愛いというのだ。旧交のある名を。もしくは、粟田口の短刀たちか。僕は、僕の弟が可愛いだけなのに。振り向く顔。僕の弟は、他にもいるのかい。いや、俺だけだ。そうでしょう。(髭膝)

2018-04-09 15:52:56
やまたに @mw_snc

饅頭、煎餅、八つ時の餡蜜に秘蔵の栗羊羹。沢山食べるねぇ。見ているだけで満腹になる量に青江が言えば、美味しいから、と。なら、青江は言葉を変えて。どれが一番お口に入れたくなったんだい、好物のことだよ。紫色が、きょとんとして。青江だよ。そういう胸焼けしそうな言葉を告げるのだ。(石かり)

2018-04-09 18:07:53
やまたに @mw_snc

薫風が、弟の笑い声を運ぶ。惹かれるように顔を出せば、天狗の子と戯れて。見守る大男は、目を細めて。髭切は、出した顔を引っ込めた。弟の偵察ならばバレないと、そう思ったのに。薄緑、あにうえさまがきていますよ。幼子の声。駆け寄る足音。兄者っ。笑う顔が眩しくて、目眩がしそうだ。(髭膝)

2018-04-15 17:52:32
やまたに @mw_snc

ぱたぱたと足音がする。その正体を石切丸は疑うことなく振り向いた。青江。白装束がふわりと動いて。君は、いつも嬉しそうな顔をするねぇ。彼はそうからかうけれど。だって、私のために足音を立ててくれるんだろう。その偵察まで鈍いわけではないよ、と赤い顔に笑ってみせた。(石かり)

2018-04-15 18:11:37
やまたに @mw_snc

逸話のない集合体と、逸話だけ残る消失刀と、政府とやらはなりふり構っていられぬようだ。静形は目の前の子供に話す。そいつは違うなぁ、と彼は笑うけれど。俺を出せって閻魔様と交渉したのさ。なんのためにだ。天下人の刀を手にしようと思ってな。どちらにしろ、逸話持ちの、遠い話だ。(薬宗+静)

2018-04-19 06:55:14
やまたに @mw_snc

気が狂いそうだ。膝丸は耳を塞ぐ。部屋の向こうで、白い薙刀が相棒を探している。しず、しず。普段のように、静形と呼んでくれればいいものを。しず、しず。あのひとの声が聞こえる。膝丸。手を剥がす、そのひとは。膝丸、膝丸。繰り返し、俺を呼ぶ愛しいひとは。(髭膝+静)

2018-04-19 07:06:50
やまたに @mw_snc

祈りが、降る。陽光や雨のように、きらきらと万人に降っていく。多分、そんな光景だ、と青江は思う。そんな、石切丸を見るのが好きだ。神へ祈る、神を仰ぐその横顔が。それを言うと、彼は少し困ったように。横顔では私が寂しいな、と真っ直ぐに青江を見た。(石かり)

2018-04-26 17:38:30
やまたに @mw_snc

手を繋ごうか。差し出した左手に弟は表情を変える。始めは戸惑って、次に眉間に皺が寄って、最後に溜息を吐いて手を出した。掴んでしまえば、されるがままで。兄者。うん、本丸に戻るまでね。しかし、刀が。躊躇うくせに、従順な弟だ。今日は、僕が守ってあげる。その意を知っているくせに。(髭膝)

2018-05-01 17:44:26
やまたに @mw_snc

お手をどうぞ、おひぃさん。小さな紳士に化けた短刀が誘うまま、宗三は右手を差し出した。握られる手は小さくて、今にも振りほどけそうで。ねぇ、薬研。一歩先を、耳を染めたあなたが歩く。この手の意味は、わかっていますか。行き先もわからず、刀も握れぬ僕がついていく、その意味を。(薬宗)

2018-05-01 18:02:17
やまたに @mw_snc

愛らしい鬼がいる。と、髭切は微笑んだ。むう、と拗ねる弟はこちらをなまくらにしてしまう。お前の遠征中に三日月たちと、ちょっとでかけただけじゃない。ちょっとではない。拗ねる。拗ねて、しがみつく。涙目が愛らしくて、降参してした。ごめんね、今度は待つよ。とたんに泣いた鬼が笑うのだ。(髭膝)

2018-05-05 17:59:54
やまたに @mw_snc

濡れた髪が首筋に張り付く。上気した頬に、潤んだ金色の瞳。薄い唇が開いて閉じて、そうして語りかける様から石切丸は必死に意識を逸らした。この子はそんな気がなくて、ただ湯上がりに寄っただけで。だから、手を出してはいけなくて。青江、今日はもう帰りなさい。そういうのが精一杯だ。(石→かり)

2018-05-10 06:54:17
やまたに @mw_snc

宗三くんも駄目、と青江は指折り数える。歌仙も駄目で、堀川も、鯰尾も駄目。加州の作戦も駄目で、あとは。あの朴念仁め。呟く言葉は苦々しい。据え膳くらい食らおうとしてくれ。そう思って、今夜も。ああ、薬研ちょうどいいや、相談があるんだ。そしてまた、彼の部屋を訪れる。(石←かり)

2018-05-10 07:00:55
やまたに @mw_snc

好きだぜ、何百目かのそれを薬研は音に出す。そうですか。返事はいつだって同じで。お前が、好きなんだ。はいはい。本気にしていない声が、何度だって返る。もう何百年言ってんだろうなぁ。六百年は聞いていませんでしたよ。まだ足りねぇか、と薬研は再び愛を語った。宗三は楽しげに聞いている。(薬宗)

2018-05-10 07:37:40
やまたに @mw_snc

猫を撫でる。ごろごろと弟の膝で丸まる姿を見て、髭切は己の顎を差し出した。どうした兄者。首を傾げる弟へ、撫でて、と告げる。猫ごときに妬いては鬼にも成れぬぞ。呆れる弟は言いながらも手を顎に添えて。ちゅ、と音が鳴る。唇を離した弟は得意気に、兄者はこちらがよかろう、と笑った。(髭膝)

2018-05-12 00:07:53
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