140ssログ2月

Twitterで書いてた雑多ssのログです。刀です。男同士です。
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やまたに @mw_snc

まぁ、似合いじゃないかい。くす、と笑ったのは髭切だ。どこが、と不服を表したのは青江。彼は御神刀なのに、と顔に大きく書いてある。どこが、ねぇ。髭切はすたすたと青江に近付いた。囁き声が届く距離。急に詰められて、え、と声が上がる。ほら、鬼さんこちら。手を鳴らす必要はないよね。(石かり)

2016-02-02 07:11:51
やまたに @mw_snc

いいこ、と兄が頭を撫でる。僕の弟は可愛いねぇ。名前こそ呼ばれないものの、その声は優しい。だから、これは我儘なんだ。そう膝丸は自覚している。黙秘している。触れて欲しいのは頭だけではないことを。弟だなんて呼ばないで欲しいことを。それら全部誤魔化すように、兄者、と呼ぶのだ。(髭膝)

2016-02-05 07:33:39
やまたに @mw_snc

あれこれ世話を焼くのが好きな弟が今日は来ない。雪の吹き込む縁側を髭切は歩いていく。さて別れたのは内番の前だったか。自室の障子を開けば、隅に丸くなって眠る弟。そうだね、寒いからねぇ。体温を分けるように隣に寝転ぶ。明日には季節を変えさせるから、今日はこうして寝ようね、なんて。(髭膝)

2016-02-11 19:52:58
やまたに @mw_snc

庭先に青江が見える。と、首を振る素振りにあれ、となった。彼はひとりだ。しいて挙げれば、梅の木の隣。石切丸ははよおく見て、それから、ああ、と庭に降りた。枝に髪が絡んでいる。それをひょいと解いてやって。すまないね、小梅の木。毛先のひとつも私のだから。(石かり)

2016-02-15 18:07:09
やまたに @mw_snc

春の匂いがするねぇ、後ろからそう抱きしめられて、青江は首を傾げた。梅でもついてるかい。いいや、桜かな。まだ咲いていないよ。首元を探る息が擽ったくて身を捩る。悪戯半分にかぷりとうなじに食いつかれて、ようやく思い至った。桜餅、君と食べようと思って、もらってきたんだ。(石かり)

2016-02-17 08:31:04
やまたに @mw_snc

草餅と桜餅、どちらにしますか。二つを差し出すと薬研は迷わずに桜餅を取る。あんたの色だから、と笑って。僕、僕ねぇ。ちらりと餅を頬張る薬研を見る。あ、と口を開けて、歯で嚙み切りすり潰し、飲み込んで。一粒残らず、胃に収まる。あんたも食べられたそうな顔してるな。さあ、知りません。(薬宗)

2016-02-17 08:58:44
やまたに @mw_snc

眠れない、と酒を呷るから薬研は没収した。そこから先は宗三の仕事だ。首根っこを掴んで布団へと放り投げる。それから薬研と左右を挟んで捕まえれば、懐かしくて嫌だと管を巻く。俺は、俺は。呟きに相槌を打つのは薬研の役目で。宗三はふあぁと欠伸した。きっと今日は炎の夢。それでも。(本能寺)

2016-02-17 09:50:30
やまたに @mw_snc

もぐもぐと髭切は桜餅を食べる。花といえば桜になってしまったねぇ。昔は梅だったか、と膝丸は頷いた。移り変わるものが多いことだ。僕たちも移ったね。それは主か、名前のことか。問うより早く、消えた餅の代わりに膝丸の指が食まれた。愛しさは移っても食べてもなくならないものだけど。(髭膝)

2016-02-17 16:34:14
やまたに @mw_snc

触れてもよいか、と月が問う。膝をついて請い願う。天下五剣にそうさせることの優越感はきっと誰も知らないだろうと、獅子王はくすりと笑って許可を出した。恭しく触れる唇は、されど二度は聞かない。自分の中の価値をよく知る男は、どうすれば思う通りにひとが動くかまで知っているのだ。(じじしし)

2016-02-20 11:35:52
やまたに @mw_snc

兄者兄者、と世話を焼く弟が夜は世話を焼かれているなんて誰が知っているだろう。水を飲まされ、体を拭われ、されるがままに瞼を閉じて。兄者が実は世話焼きなのも誰も知らぬだろう。弟が柔く微笑む。そうだね、僕が世話したいのは君だけだもの。(髭膝)

2016-02-20 11:58:50
やまたに @mw_snc

膝の上の寝顔は幸せそうだ。青江はくすりと笑って鼻を摘まんだ。とたんに眉間に皺が寄る。起きる前に離すと、頭を撫でる。一転して、ふにゃふにゃと気持ち良さそうだ。かわいいねぇ。愛しいねぇ。いしきりまる、呟いた名に、あおえ、と寝言。ああ、僕の顔の方がきっと幸せそうなんだろう。(石かり)

2016-02-21 19:47:55
やまたに @mw_snc

部屋の真ん中で弟がうたた寝している。普段凛々しい眉が、穏やかな曲線を描いていた。それでも、気温が低くなってきたのか、ふるりと震えて。そうなれば、髭切がすることなどたったひとつで。毛布ごと弟を抱き締める。とたんに、ほう、と吐かれる息に微笑む。君を暖めるのは僕の仕事だよ。(髭膝)

2016-02-21 20:02:50
やまたに @mw_snc

まあるくなって、炬燵にもぐる。そんな愛し子の姿に三日月は目を細めた。その内ごろりと腹を出すのもまるで猫のよう。そうやって寝ている猫に悪戯したくなるのは人の形を取ったせいだろうか。そう責任転嫁して、つう、と腹をなぞる。ふにゃあっ。おや、声まで猫のよう。(じじしし)

2016-02-21 20:06:01
やまたに @mw_snc

春は遠いね。そう呟いて青江はその懐へ潜りこんだ。胡座をかいた足の上に座るには硬いけれど、暖かいのだから文句は言わない。ひとの熱の誘惑にはまだ負け続けるしかないのだ。そうぴたりとくっつく青江を腕で包んで石切丸は苦笑する。春が来たら寂しくなるねぇ。なあに、たまには来るよ。(石かり)

2016-02-25 06:47:12
やまたに @mw_snc

雪だ。と短刀が遊んでいる。薄緑もあそびましょうっ。声に弟が反応する。今にも行くと言いそうな彼に、髭切は寒いねと呟いた。とたんに意識がこちらに向くのが心地いい。暖かい茶を用意しよう、毛布も、いやまず障子を閉めよう、と。そうそう、そうやって寒がりのお前もここにおいでね、吠丸。(髭膝)

2016-02-25 06:55:54
やまたに @mw_snc

東風吹かば、と梅花に髭切は呟く。君は忘れてもいいんだよ、と続けて隣にいる弟に。その春の風景から付けられた名など、とそう思って。弟は首を傾げて、それから唇を尖らせる。忘れるのは兄者だろう、俺は兄者のことは忘れんぞ。ああ、君はそちらを気にするの。髭切は満足そうに微笑んだ。(髭膝)

2016-02-25 07:15:34
やまたに @mw_snc

その名を捨てておくれ。春の熊野の君の名を。あの男の物であるその証を。髭切は何度も願う。名を捨て僕の元へ戻ってくれと。でなければ、僕らは後世に敵対した男の物として扱われる。さもなくば忘れてしまえ。花の香りが名を変えても変わらぬように、君は僕の弟でだけあればいい。(源氏兄弟)

2016-02-27 07:13:18
やまたに @mw_snc

ずっと小説で書こうと思ってたけど1000字もいかなかったやつ…。ロミジュリの一節というか有名なシーンより。

2016-02-27 07:17:16
やまたに @mw_snc

お子様には、と宗三は温めた牛乳を押し付けた。背も伸びるかもしれません、と付け加えて。苦手と顔に描いた薬研は、ちびりちびりと熱燗でも飲むように器を傾ける。どうせ白く濁ってんならあんたのがいいなぁ。はいはい、そちらの年齢は随分年嵩のようで。いいから、疲れた今日は寝てください。(薬宗)

2016-02-27 17:59:35
やまたに @mw_snc

鶯丸のお薦めだ、と石切丸が丁寧に茶を淹れる。蒸す時間まで計っているから、それも教わったのだろう。とても美味しかったんだ。目尻を下げて笑う。そうかい、そんなに鶯丸が気に入ったようだね、なんて小さな嫉妬はお茶と一緒に飲み込んだ。知ってる。君の手で僕に飲ませたかったんだろう。(石かり)

2016-02-27 18:02:58
やまたに @mw_snc

この子はきっと舌か頭がおかしいのだ。と、髭切は納得した。兄者が淹れてくれたものはおいしい。底の見えない緑茶でも、砂糖と塩をいれ間違えても、彼はそういうのだから。お前は毒もわからないだろうから、兄の手以外から何も口にしないんだよ。ああ、兄者の言うとおりに。ほら、おかしい。(髭膝)

2016-02-27 18:11:16
やまたに @mw_snc

宗三は日本酒は好むが焼酎は飲まない。相性が悪いと誘われれば告げている。だから。嫌いではないんですよ、くったりと寄り添う体を知ってるのは薬研だけだ。でもすぐ酔って。弁解する声は掠れて、息も体も熱を孕んで。そうだなぁ、と薬研は頷く。だから俺の以外の前で飲むなって言ってるんだ。(薬宗)

2016-02-27 18:17:23
やまたに @mw_snc

苦い液体を青江は飲む。珈琲飲むか、とブラック派の薬研と乱に誘われては砂糖も何も入れられない。小さな見栄に横の石切丸は。私は砂糖も牛乳もたっぷりね、と。大太刀の癖に、八つ当たりで睨めば困り顔。おや、私ばかり格好悪いね。君も入れないかい。仕方ないなぁ、君がそういうならっ。(石かり)

2016-02-27 18:28:53
やまたに @mw_snc

足の指、五本。土踏まず、足の甲、足首。順番に口付ける。登って脛、脹ら脛、膝。擽ったい、と宗三が身を捩る。太股、内股、痕を付けて。骨ばった指が黒髪を掴む。意地悪。可愛くない言葉に下って膝の裏。いけずなおひと。泣き出しそうに甘く熱い吐息が呼ぶから、胴体は飛ばして唇に。(薬宗)

2016-02-28 06:51:05
やまたに @mw_snc

一具の宝刀はよく似た姿をしている。だから、ひとの姿の顔も体もよく似ていた。だというのに、と髭切は抱き締めたその背に通る骨を指でなぞる。首の後ろから尾てい骨まで。耳元で掠れた声。今度は終わりから細腰、また戻って尾の名残。あにじゃ。甘く呼ぶ。君はどこもかしこも可愛い。(髭膝)

2016-02-28 07:04:54