やまたに
@mw_snc
にゃあ、と鳴く。弟が振り向く前に、背中に張り付く。なんだ兄者。慌てる声に素知らぬふり。そのままうなじにかぷりと噛みつく。歯形の残る皮膚を舐める。兄者っ。咎める声。ごめんね、猫だから人の言葉はわからないや。そういうことにするために、もう一度にゃあと髭切は鳴いた。(髭膝)
2016-02-22 20:22:27~できなかった
やまたに
@mw_snc
呼べなかった。石切丸、君の名前を。見ているだけで幸せで、隣を歩ければ誇らしくて、君の笑顔だけで力が湧いた。大きな手のひらに撫でられたときには心臓が壊れるかと思った。でも、この思いはひとつも口から出なくて。名前すら出なくて。だって、君がその唇で塞いでしまったんだ。(石かり)
2016-02-29 19:27:55
やまたに
@mw_snc
触われなかった。その桃色の柔らかな髪だけでいいからと、そう手を伸ばしたのに。薄く開いた唇から、寝息に触れてみたかったのに。ああ、そうだ。触れたかった。触れなかった。あんたがふにゃふにゃの笑顔で、俺の名前なんて呼ばなきゃ接吻くらい残したのに。(薬宗)
2016-02-29 19:31:56
やまたに
@mw_snc
誤魔化したかった。君に興味がないふりをしたかった。名前なんて覚えない。君の執着の十分の一も返さない。君はただの弟でしかないのだ。そう思っているよ。なんて嘘。膝丸、蜘蛛切、吠丸、薄緑。源氏の双剣。一具の宝刀。僕の君。ねぇ、どれだけ兄の嘘が下手でもお願いだから誤魔化されてて。(髭膝)
2016-02-29 19:41:07