140ssログ4月~8月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

顔の横で猫が寝ている。それはいいけれど、と青江は覚醒したての頭で振り向く。そこにはどこかの大太刀の顔があって。その腕は自分の腹へと回っていて。いつの間に、呟いた声に猫が逃げた。あの子も驚いたのだろう。けれど、と青江は目を閉じ直す。僕は猫じゃないから、ここにいることにする。(石かり)

2018-05-12 00:16:52
やまたに @mw_snc

ひょい、と猫は持ち上げられた。そのまま紫の着物の膝へと連れられ、撫でられる。俺が撫でてたのに。薬研の言葉を無視して宗三は撫でる。些細な喧嘩の後だ。けれど仲直りがしたいときの。無言のまま、撫でるのとは別の手が伸びて。薬研もなにも言わずに握り返した。猫は、痴話喧嘩を布団に眠る。(薬宗)

2018-05-12 00:26:42
やまたに @mw_snc

愛し愛しと薄緑の髪に触れる。頬を撫でて、吐息さえ取り零さぬように口付ける。真似をした手が淡金の髪を撫で、唇を塞いだ。好きだよと紡げば、やはり同じ言葉が繰り返されて。次には、弟から抱きつかれた。抱き返す髭切の耳に愛していると声がする。先を越されたと思いつつ、髭切もまた囁いた。(髭膝)

2018-05-27 07:30:38
やまたに @mw_snc

兄者、兄者と弟が呼ぶ。けれど、答える声はいつもの通り曖昧で。そんな一方通行に見えるやり取りに、彼らの仲の良さを疑うものはいない。弟と揃いの金の瞳には、なんでもないときですら、薄い緑が映っているのだから。目は口ほどにというやつだ。(髭膝)

2018-05-29 14:37:19
やまたに @mw_snc

大脇差だからね、と彼は言う。弟が多いから、と彼は言う。だからふざけたりしない、落ち着いて大人びたいい子たちだと誰もが言うので。薬研くん、ちょっと思いついたんだ。おう、俺っちも考えてみたぜ。そう笑い合って、馬鹿をやるならふたりがいい。今日は、池の鯉で釣でもしようか。(青江、薬研)

2018-06-02 16:03:54
やまたに @mw_snc

君は少し、懐にものを入れすぎやしないかな。世間話のように語る髭切に、三日月は微笑む。では取り出してみようか。なんでもないように告げられた弟の名に、髭切は首を横に振る。それは僕が抱え込んでるものだから。結局懐の中身の量は変わらんなぁ、と細まる月に、金の瞳も重なった。(髭切、三日月)

2018-06-02 19:00:18
やまたに @mw_snc

シャンデリアの灯りに葡萄酒が揺らめく。花弁を落とした猫足のソファに、スリーピースのスーツを纏った男と、フリルのスカーフを巻いた人形のような少年が並んでいる。と、ひとしきり待って、酒盗と枝豆と秋刀魚の塩焼きを厨の主から手に入れた太刀と短刀はハイタッチで喜んだ。(薬研、大般若)

2018-06-02 19:09:36
やまたに @mw_snc

どうして膝丸くんと呼ぶのだ、と拗ねた声が尋ねるもので、青江は肩を竦める。だって君、髭切さんのように年上らしくないんだよ、とは言えない。包丁くんと拗ね方が似ているし、とも。膝丸さんと呼ぼうか。結局そう答えれば。ただの膝丸がいい、とむくれるので青江は白旗をあげた。(青江、膝丸)

2018-06-02 19:47:45
やまたに @mw_snc

秋田、いいものを見せましょう。その手のひらには舶来の硝子細工があって。宗三さん、僕の宝物を見てください。その手のひらには蝉の抜け殻があって。なのに同じように、うわあ、と目を輝かせるものだから、刀派や刀種の違いはあれど、ふたりは、友達ですよと自信満々に笑うのだ。(宗三、秋田)

2018-06-02 20:10:14
やまたに @mw_snc

ふああ、と欠伸をしたのはどちらからだったか。寝転んだ炬燵の中で、足がぶつかって。獅子の子は獅子王様に譲れってんだ。子に譲るのが生物ではないかい。そんな戯れ言で戦う足の上を、五つなにかが踏んでいって。子虎くんに取られたねぇ。仕方ねーなー。太刀は体を丸めて目を閉じる。(髭切、獅子王)

2018-06-02 22:18:27
やまたに @mw_snc

世界を二振りで閉じたとばかりにいるくせに、と石切丸は金の髪を撫でた。気恥ずかしそうにするのは、甘やかされるのに慣れないからか。野良猫を構うように相槌を打てば、疲れたと情けない顔だった太刀はやがて、弟には見せられないからね、と余裕の顔を作るのだ。(髭切、石切丸)

2018-06-02 22:28:22
やまたに @mw_snc

暑い、と少し離れて座る弟に、髭切は近付いた。兄者、暑いと言っている。つれない言葉を無視して抱き締めれば、嫌々と抵抗されて。いじわる。俺がか。釈然としない顔の弟は、諦めたように力を抜いた。兄者は、俺が大層お好きだな。よく知ってるねぇ、と褒美の代わりに口付けた。(髭膝)

2018-06-07 18:24:25
やまたに @mw_snc

彼を抱き締める。長い髪が頷くように動く。彼の頬へ触れる。白装束が揺れた。やがて赤い瞳が閉じられるのを見届けると、ねぇ、と声がする。さっきからなにを気にしているんだい。僕を見て。拗ねた甘い言葉に、石切丸はだって、と口にする。見られてると気になるじゃないか。君の後ろの彼女に。(石かり)

2018-06-08 07:39:46
やまたに @mw_snc

毒がきっと残っている。そう青江は彼の部屋へ進む。毒のせいで、体が熱い。毒のせいで。用意した言い訳を繰り返して、障子を開ける。いしきりまる。舌足らずな声に、彼は全てを察したように。腫れ物治しは得意だけれどね。手を引かれて、布団の上。清めてあげよう。そうして首筋を吸われた。(石かり)

2018-06-08 17:48:12
やまたに @mw_snc

おいたわしい、と弟が肩の傷に唇を這わせる。ちゅう、と吸い付いて、次の傷へ。腕も、背中にもあるではないか。泣きそうな顔を無傷の弟がしているのが可笑しくて、髭切はその頭を撫でた。大したことないよ。しかし。反論を人差し指で封じて。兄を慰めてくれるなら、どうか唇を吸っておくれ。(髭膝)

2018-06-08 17:53:42
やまたに @mw_snc

迷子にならないように、と人混みで手が差し出される。別に子供ではないのに、と渋々青江はそれを繋いだ。君の手は冷たいから、と冬に。私は足が遅いから、といつも。君はよく手を繋ぐねぇ。そんな感想を漏らすと、石切丸はきょとんとして。本当は口実なく繋げたらいいんだけれど、と赤い顔で。(石かり)

2018-06-28 09:50:22
やまたに @mw_snc

はい、と段差で伊達男が手を出したのがいけない。目の前の短刀にそう思う。宗三、こっちに段差が。枝が伸びてる。水溜まりだ。辺りを注視しながら歩く薬研は彼の真似事で。それがどうにも気に喰わなくて、宗三は白衣を引いた。僕はっ、僕に見とれて自分が躓くくらいのあなたが好きですよ。(薬宗)

2018-06-28 10:00:15
やまたに @mw_snc

手を繋ぐ。それだけで弟は幸せそうに笑う。抱き締めると真っ赤になって、それ以上は進めない。いつになったらお前は慣れるの。髭切の問いにしゅんと泣きそうな顔をするから、いつだって彼を許してしまうのだ。まぁ、僕は気が長いから、今はこの手で我慢してあげる。指を絡める。(髭膝)

2018-06-28 10:12:14
やまたに @mw_snc

今朝は久しぶりに涼しかった。ので、と髭切は自分の布団の中を見る。薄掛けの布団であるはずなのに、ずっしりと重いのは弟が張り付いているからだ。寒がりとしては耐えられなかったらしい。髭切としては、外の気温が丁度いいけれど。思いながらも、抱き締める。少しの寝坊くらいいいだろう。(髭膝)

2018-07-04 07:02:51
やまたに @mw_snc

あ。と君の口が動く。僕を見つけて嬉しそうに。お。細められた瞳が柔らかい。え。と弾んだ音を出したかと思えば、大きな歩みで近付く君の、腕の中。言動になにかが出過ぎじゃないかい。そう思うのに。青江はその大きな背中に手を回す。君の一音一音で、同じ顔を僕もしていた。(石かり)

2018-07-04 07:15:21
やまたに @mw_snc

暑い、と石切丸の爪先を無意味に蹴った。痛くもないと微笑んだままの男も、汗をかいている。御神刀ならこの厚さをどうにかしておくれよ。そんな理不尽な言葉にも、彼はにこにことしたままで。君が理不尽に甘えてくるのが私だけと思えば可愛いらしいよ。そう言うものだから、余計に暑い。(石かり)

2018-07-13 06:56:25
やまたに @mw_snc

暑さに負けた体はまるで液体だ。うう、と呻きながらも抱きつく弟はくったりとしている。暑いなら離れればいいのに。そんなことは髭切も寂しいから言わない。代わりに、弟を抱き上げる。あにじゃ。うんうん、水風呂へ一緒に入ろうね。そうすれば解決だろう。ほんの少し、抱きつく腕に力が入った。(髭膝)

2018-07-13 07:00:57
やまたに @mw_snc

暑い、と団子に纏められた髪が、新鮮で。つい石切丸は視線をやってしまう。そして、すぐ下の汗ばんだうなじに目が行って慌てて逸らす。また見たくなって顔を戻す。その頭の繰り返しを、背の低い彼は気付かないと思っていたけれど。助平。笑う彼は首筋まで赤くなっていて。思わず、歯を立てた。(石かり)

2018-07-18 10:57:57
やまたに @mw_snc

片側だけ伸びた弟の前髪を、髭切はその手で掬う。暑さで張り付いて邪魔だろう、と思っただけなのに、すっと閉じられる瞼が愛しくて、誘われるまま口付けた。なにも知らずに、兄ばかり触れてくると思っているようだけれど、お前が触れさせているんだよ。教えるつもりもないけれど。(髭膝)

2018-07-18 17:29:29
やまたに @mw_snc

暑い。言うと、余計に暑くなるんですよ。気怠けな恋人の声に、そうだなと薬研は頷く。だが、暑い。じっとりとした空気が思考を飛び越えて音になる。もう、また。咎める声が、唇を塞いだ。次は、言わせないですよ。くすりと笑う顔に、今度はわざと、暑いと呟く。(薬宗)

2018-07-18 17:35:19
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