140ssログ4月~8月

石かり、薬宗、髭膝ログ
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やまたに @mw_snc

夏の夜は君に似合うね。そんなことを言われたから、そうだろう、と青江は口の端を持ち上げた。怪談と言えば、僕だからねぇ。暑い夏を涼しくして欲しいなら、と一つなにか振る舞おうか、そんな気すら持っていたというのに。夏の君は涼やかでそれなのにしっとりとして、とても綺麗だ。(石かり)

2018-07-18 18:00:59
やまたに @mw_snc

ぱたぱたと手が畳を叩く。中断の印に髭切は動きを止めた。どうしたの。喉が、渇いて。自分より飲み物を求める弟に、面白くないと言いかけて、やめる。人の体は渇くと駄目になってしまう。鼓動も呼吸もなくては駄目で、必要なものがいっぱいで。僕だけ求めればいいのに。言葉の代わりに水を渡す。(髭膝)

2018-07-18 18:26:24
やまたに @mw_snc

たったひとつ欲しいものがあるの。宗三の謎めいた言葉に、薬研は続きを促す。それはとても素敵で。忠義に厚く。逸話は三国に届き。誰もが欲しがるもの。天下人の刀の僕が、まだもらえないもの。わかりますか、と手を差し出すから、薬研はその手に指を絡めた。大丈夫、わかっている。(薬宗)

2018-08-14 22:07:51
やまたに @mw_snc

習ったんだよ、と石切丸は長い髪に手を伸ばす。青江は、誰にだい、と聞けなかった。この手が、他の誰かに触れたなんて。痛くないように痛くないように動く手は。器用に編み込む指先は。お気に召さないかい。しょんぼりとされても、次からは僕で練習も本番もしたらいいよ。それしか言えない。(石かり)

2018-08-19 07:31:20
やまたに @mw_snc

しゃりしゃりと音がする。宗三が部屋を覗けば、粟田口がかき氷を作っていて。宗三も食うか。尋ねる薬研を断る。頭が痛くなるんです。ああ、あいすくりいむ頭痛って言うらしい、と教える傍ら、薬研は身を乗り出した。べろり、口付けにはあまりに乱暴に舌同士が触れる。なら、味だけな。(薬宗)

2018-08-19 07:39:14
やまたに @mw_snc

爪先が水を蹴る。盥に入った氷水がカラコロと鳴る。それが面白いのか、ぱたぱたと足を泳がせて。そんな弟と涼の風景を、横目で見ては気付かれないように逸らす。人目に気付けば、矜持が隠してしまうから。コロン、カラン。氷が髭切の代わりに音を出す。あのね、お前が可愛いって悲鳴をあげたい。(髭膝)

2018-08-19 17:50:45
やまたに @mw_snc

青江青江と、いつも呼ぶのは私で。珍しく君が呼んでも、御神刀や大太刀としか言わなくて。けれど、それが嫌ではないと石切丸は思う。いしきりまる。夜に甘く君が呼ぶ。そこだけは、私だけだと君が呼ぶ。(石かり) #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/a27cf…

2018-08-22 22:57:03
やまたに @mw_snc

甘える君が可愛いと、君が言うものだから。青江は、ぴとりと大太刀に抱きついた。甘えるとは、これでいいのかもわからないけれど。本当は、格好悪くて恥ずかしいけれど。他でもない、君が望むものだから。(石かり) #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/60d46…

2018-08-22 23:35:52
やまたに @mw_snc

夏が似合う、というと、お化けの季節だからね、と青江は笑う。そうではなくて、暑さに気怠げな吐息が、ほんのりと汗ばんだうなじが、魅力的と思ったのだけれど。夏の君はいいね、それだけに留めておいた。(石かり) #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/d54f3…

2018-08-22 23:43:21
やまたに @mw_snc

可愛いこ、と髭切は腕の中に弟を閉じ込めた。僕の弟、僕の一具、可愛い可愛い僕のもの。歌うように耳元で囁かれるのは、まるで言霊みたいだ。だから、と膝丸も口にする。兄者、俺の。互いを縛る言葉の鎖。(髭膝) #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/e1670…

2018-08-23 00:47:24
やまたに @mw_snc

膝丸だ、と弟が言う。時に叫んだり、泣いてみたり、怒ったり、拗ねたり。ころころと表情を変えて言う。膝丸と、兄が呼ぶ。どんな顔を浮かべるかと思えば、そのあと彼はいつだって笑むばかりだ。(髭膝)

2018-08-23 18:17:04
やまたに @mw_snc

お帰りなさい、と自分の部屋から出迎えられて、石切丸は緩みそうな頬を隠す。ただいま。なんとかした返事に、青江は訝しげで。それでも労るような声音を出しした。石切丸、お疲れ様。駄目だ、と抱き締めたのは許してほしい。お嫁さんが来たみたいだ、とは秘密にしておくから。(石かり)

2018-08-23 18:29:02
やまたに @mw_snc

膝の上に乗せられて、猫のように愛でられる。刀の本分を忘れそうだ、と青江は眉をひそめる。僕は武器で、武器なのに。可愛いね、青江。青江。私の愛し子。甘やかす声は頭上からとろとろと。武器でいなきゃと思うのに、逃げないのか、逃げられないのか、未だ僕は君の膝の上。(石かり)

2018-08-23 18:56:21

エイプリルフール

やまたに @mw_snc

今日は嘘を吐いていい日だそうだ。弟が、畏まって言う。そう、で、どんな嘘を吐くの。僕が嫌いだとかいう可愛いやつだろうか。でも、嘘でも言えるかな。そう思いながら待っていると、弟は晴れやかに笑って。俺の忠義も愛情も総領である貴方だけに。それは、嘘にしないと主に怒られてしまうねぇ。(髭膝)

2018-04-01 22:09:21
やまたに @mw_snc

嘘を吐く日と考え込む薬研より早く、宗三は言う。僕、本当は長谷部が好きなんですよ。やられた、という顔をして。俺っちだって、へし切の旦那が好きだぜ。真似しないでくださいよ。じゃあ、行光。じゃあってなんですか。厚でもいい。適当ですね。お前こそ。ふたり笑って、嘘を吐かない手を繋ぐ。(薬宗)

2018-04-01 22:15:05
やまたに @mw_snc

あとで石切丸が来るというから、三日月と縁側で団子を食べる。世間話と、真面目な話を少しして、待っていると、怒声が響く。宗近っ。おお、遅かったな。ひとへの伝言に青江を拐うと書いてそれかい。ああ、そういう嘘なのか。呆れつつ、子供騙しの嘘にも焦って来た君が嬉しいなんて言えない。(石かり)

2018-04-01 22:22:48

げんとうきょうだい

やまたに @mw_snc

げに恐ろしき、と膝丸は目の前の光景に唇を吊り上げた。赤、赤、赤。その中にただひとつ、白。鬼を切った刀は鬼より恐ろしく、神より美しく敵をほふるのだ。それに見とれていると、全てを終えた兄が近付いて。腕と腹をやられても、お前は随分楽しそうだねぇ。仕方のない子と自分を担いだ。(髭膝)

2018-05-03 08:36:25
やまたに @mw_snc

ん、と口付けに意味のない音が鳴る。どちらともなく繰り返せば、ん、ん、と。自鳴琴みたいだね。髭切が呟けば、弟が拗ねる。可愛いのにと逃げる唇を追ってもう一度。ん、と鼻に抜ける音が耳に心地いい。もっと、と何度も繰り返すと肩を押されて。楽しんでいるだろう、兄者。睨む視線すら愛しい。(髭膝)

2018-05-03 08:42:18
やまたに @mw_snc

とおりゃんせ、と兄が笑って障子を開けた。俺は、七つではない。とりあえずと告げると、兄は唇を尖らせる。それは知っているよ。そう言って、続きを歌った。天神さまの細道じゃ、行きはよいよい帰りは。兄者。中断に、なあにと首が傾ぐ。俺はあなたの所へ参るのだし、帰る気がそもそもないぞ。(髭膝)

2018-05-03 08:49:00
やまたに @mw_snc

うたかたの夢、と誰かが笑う。歴史を紐解いてはならぬ。真実を求めてはならぬ。知っているよ、と髭切はその幻聴を切り捨てた。兄者。駆け寄る弟は今日も可愛い。それを幻かもしれないと、誰が認めようか。ええと、弟。膝丸だっ。名前なんて、どうでもいい。僕が持つ名でさえ、お前にあげても。(髭膝)

2018-05-03 08:52:41
やまたに @mw_snc

きょうが乗った、それだけの話で。美しかの白拍子、その舞を一差し。ただの戯れ。短刀と薙刀が喜んで、それだけの。兄者、あの。怒ってはないよ。ぴしゃりと言われて、誰が信じよう。溜息に肩が跳ねる。それに、兄は頭を撫でて。僕にも見せてくれたっていいじゃない。それを、拗ねていたようだ。(髭膝)

2018-05-03 09:07:42
やまたに @mw_snc

うすいみどりを指で遊ぶ。春を呼ぶ色は、本来なら少し前の季節だ。兄者、擽ったい。言う割に、気持ち良さそうに目を細めるからと、髭切は横髪を耳にかけて、襟足をなぞった。兄者。続けると、春の陽みたいにとろとろと声が溶けて。あに、じゃ。密やかに、けれど確かに、花開く様は、まさに春。(髭膝)

2018-05-03 10:00:50
やまたに @mw_snc

だいてくれ、と恥ずかしげもなくねだる。それなのに、兄の手は宥めるように頭を撫でるだけだ。明日も出陣でしょう。その優しさを今はどうでもいいと捨てて欲しい。兄者。だぁめ。我慢おし、と別の布団で寝ようとするならば。では、誰にこの熱を薙払ってもらえばいい。そうやって鬼を呼ぶまでだ。(髭膝)

2018-05-03 10:33:22
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