染色体異常を生じるトリチウム=三重水素の濃度ってどれくらい?

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巻頭言

nao @parasite2006

8月31日東京「処理水の取扱いに係る説明・公聴会」で元北海道がんセンター西尾正道氏(meti.go.jp/earthquake/nuc… )が途中で切り取った朝日新聞記事写真を元に「動物実験、74年度。3万7千ベクレルで染色体異常。放医研。6万㏃を流そうとしている」と盛大に計算違い。正しくはtwitter.com/i/moments/1035…

2018-09-02 07:01:48
おしどりマコ@脱被ばく。知りたがりの怒りんぼで半径5mを変えていく。 @makomelo

田内「ここでは討論ではないので委員会で」西尾「動物実験、74年度。3万7千ベクレルで染色体異常。放医研。6万㏃を流そうとしている、放医研で内部被ばくなんかやったらみんなイヤんなって出ていってますけど」田内「そのとおりです」ww / トリチウム水公聴会東京 cas.st/1d2fe3f3

2018-08-31 17:18:28

第1部

RING @__schwarzkatze

「1ccあたり5μCiで染色体異常発生」というが、1Ci(キュリー)は、3.7x10^10Bqだから、約19万Bq/cc=19000万Bq/l。一方、排水基準濃度は最大6万Bq/l.排水後は、当然これが希釈されてさらに薄まる。 このツイートで言う「ごく低濃度」は、今問題としている量より馬鹿馬鹿しいくらい「濃い」ことがわかる。 twitter.com/noraneko_5625/…

2018-08-31 23:56:29
のらねこ @noraneko_5625

トリチウム、ごく低濃度でも染色体異常起こすという1974年の記事をおさらい。 pic.twitter.com/bAXX2uSXMt

2018-08-31 12:22:52
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(↑なお、上で引用されているツイートに貼り込まれている1974年10月8日付の朝日新聞東京版夕刊の記事の画像は途中で切られていますのでご注意下さい。切り取りで除かれた部分に出ている滝沢行雄・秋田大学教授のコメントは、今回行われたのが分離したヒトのリンパ球をトリチウム=三重水素を含む水のなかで培養する実験であって、動物の個体を使った実験ではないことを指摘したものです↓)

AK @kinotheta

@noraneko_5625 不自然な部分で記事が切れていますね。この記事には続きがあるのですが,確認はされましたか? 自分の主張に都合のいい部分だけ抜き出して論じるのはフェアではないと思います。 pic.twitter.com/iZNwP85isQ

2018-08-31 17:05:31
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(同じ場所で切り取られたこの記事の画像でGoogle画像検索でヒットする最も古いものは、折紙付きのあきれたブログ「原発問題」の2014年8月11日付の記事
https://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/35f003abcbbc42a3219ebf9e05e347f3 ですが、画像はないもののこの記事にふれている2013年03月02日付のブログ記事
https://ameblo.jp/sunamerio/entry-11482091075.html
があることから、この記事はかなり古くからトリチウム=三重水素が話題になるたびに内容の一部だけをつまみ上げて引き合いに出されてきていることがうかがえます。

[2018.9.22追記]
この切り取られた朝日新聞記事がとりあげた放医研の研究を「ごく低濃度でも人間のリンパ球に染色体異常を起こす事が放医研で突き止められた。」と紹介していたのが広瀬隆氏であったことが、2012年2月7日付のツイートのGoogleキャッシュからわかります。
https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:KApzRzLuhWEJ:https://twitter.com/cmk2wl/status/166823431491436545 &cd=7&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&client=safari
そうだとすれば、切り取られた朝日新聞記事が写っている写真
https://pbs.twimg.com/media/Dl5dD4oVsAEwdYe.jpg
は単行本の1ページであって、右側に「今から30年以上前 すでにトリチウムの危険性は報道されていた」という文字が入っていることから、新聞記事が掲載された1974年10月8日の30年後、すなわち2004年以降に書かれた本であることがわかります。そこで広瀬氏の原発関係の単行本で2004年以降2011年の終わりまでに出たものを探しましたが、なぜかこれというものが見当たりませんでした。
[追記ここまで]

[2019.9.26追記]
上で引用したツイートのGoogleキャッシュが消えていたので、元ツイートを探し出してこちらに魚拓し直しました。
http://archive.is/sPS8O
また、切り取られた朝日新聞記事が写っている写真はこちらのアーカイブ
https://web.archive.org/web/20180920045544/https://pbs.twimg.com/media/Dl5dD4oVsAEwdYe.jpg
で見ることができます。
なお、切り取られた新聞記事が写った写真が確かに広瀬隆氏の著書のページを写したものであること、また上のツイートがその本の一節からの引用に間違いないことは、広瀬氏が岐阜県土岐市の核融合実験施設建設計画に反対するため2013年に作成した資料
https://web.archive.org/web/20130210162727/http://hibi-zakkan.net/archives/23262979.html
の中で同じものを引用していることからも明らかです。
[追記ここまで]

余談ながらこの朝日新聞記事が取り上げた1974年=昭和49年に開催された日本放射線影響学会第17回大会の発表抄録そのものは、古すぎてオンラインで探し当てることができませんでしたが、この研究内容の要約が放射線医学研究所の昭和49年の和文年報
http://www.nirs.qst.go.jp/publication/annual_reports/S49/pdf/full.pdf
の印刷ページ番号30に収録されています:
トリチウムによる染色体異常の線量効果の研究
遺伝研究部(堀雅明、中井斌)

トリチウムの内部被ばくによる遺伝的効果、特に低レベルの効果を定量的に明らかにする目的で、ヒトの培養リンパ球にとり込まれたトリチウムの効果を染色体異常を指標として分離し、トリチウム水(THO)およびトリチウムーチミジン(3H-TdR)によって誘発される染色体異常の型とその濃度効果を比較検討した。培養された末梢血リンパ球と種々の濃度(10マイナス6乗μCi〜10の3乗μCi/ml)で48時間処理して、その第一分裂中期の染色体について染色体異常を解析した。

高濃度のトリチウム水はトリチウムーチミジンと同様に染色体異常を誘発し、細胞分裂を阻害する。トリチウムによって誘発される染色体異常は主として染色分体系の切断で、その他に染色体切断、染色分体組替え、染色体組換えなどが観察された。染色体異常の出現頻度は低濃度(10マイナス2乗μCi/ml以下)では対照区も有意な差は認められなかったが、高濃度では次のような濃度効果曲線を示した。

トリチウムーチミジンの場合、10マイナス2乗mCi/ml以上の濃度でY=1.03Dの0.63乗(Y=細胞切断数、D=濃度、μCi/ml)であった。トリチウム水の場合には二相性が認められ、それぞれの濃度効果曲線はY=0.10Dの0.14乗(10のマイナス2乗μCi/ml~5μCi/ml)、Y=0.03Dの0.80乗(5μCi/ml以上)であった。後者の曲線はトリチウムーチミジンの場合と同様に、one hit曲線でトリチウムによる染色体DNAの切断を示している。しかし、トリチウム水の染色体異常誘発効果はトリチウムーチミジンに比較して100倍程度低い。

トリチウム水の場合に得られた二相性の濃度効果曲線の機構としては次のような説明が可能である。
第一の高濃度域での効果曲線はトリチウムーチミジンの効果と同一の勾配であることなどから、染色体DNAに取り込まれたトリチウムによる障害と考えられる。第二の低濃度域での効果曲線については2通りの説明が考えられる
1)トリチウム水の場合、核内あるいは細胞質内に存在したフリーのトリチウムによっても障害を受ける可能性
2)細胞の修復能力がこの濃度域では障害とバランスされる。

これらの可能性を明らかにするため、今後、他種のトリチウム化合物を用いた同様の研究とともにγ線などの微量外部照射の効果を比較検討する予定である。

[研究発表]
堀、中井:「トリチウム水によるヒト培養リンパ球における染色体異常」
日本放射線影響学会(第17回大会)徳島市(1974.10)

直前の印刷ページ番号29におかれた「概況」によると、この研究は前年度=1973年度、昭和48年度に開始された特別研究「トリチウムの食物連鎖における動向と生物への影響に関する研究」の一環として行われたものですが、「分担者は本来の遺伝障害の特別研究課題を抱えるため、トリチウムに関する実験は一応本年度をもって終了することになった」とあります。

その後、この実験結果は日本保健物理学会の和文論文誌「保健物理」に発表された下記の和文総説の後半で紹介されました。実験条件と結果のさらに詳細な説明があります。
堀雅明、中井斌. 低レベル・トリチウムの遺伝的効果について 特に染色体異常を中心に. 保健物理 1976;11:1-11
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhps1966/11/1/11_1_1/_pdf/-char/ja

さらに1978年には英語の原著論文として査読付き雑誌に掲載されました。ここではトリチウム濃度と染色体異常頻度の関係のグラフが単純な直線関係ではなく、二相性を示したこと(ある濃度を超えると影響が急激に大きくなるが、それ以下の濃度では影響は小さいことを意味する)に特に注目しています。
Hori TA, Sakai S. Unusual dose--response of chromosome abberrations induced in human lymphocytes by very low dose exposures to tritium. Murat Res 1978;50:101-10.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0027510778900659?via=ihub

RING @__schwarzkatze

5μCi/cc = 5 x 10^-6 x 3.7 x 10^10 = 18.5 x 10^4 Bq/cc = 18.5 x 10^4 x 10^3 Bq/L = 18.5 x 10^7 Bq/L よって、約19000万Bq/L. 10の何乗って書くと桁がわからない人がいるので、[万Bq/L]に揃えました。

2018-09-01 00:10:31
RING @__schwarzkatze

よく「ごく低濃度」とか「ごく低線量」といった表現を使う人がいるけど、その「少ない」の定義をしなかったり、基準量との比較をせずに言っている場合、99%ただの印象操作か、意味わかってません。 「トリチウム ごく低濃度」で検索 twitter.com/search?q=%E3%8… 。 たくさんいますねぇ…。

2018-09-01 09:52:48
RING @__schwarzkatze

で、濃度の話をすると「排出する総量が問題なんだ!」と言い出す人がいますけど、そしたら天然由来トリチウム量との比較の話になるだけです。10^18Bqですね。

2018-09-01 10:08:01
RING @__schwarzkatze

大元の「低濃度」ツイートをした方に限らず、「怖がって何が悪い」という方がいる。怖がるのは正しい。でも、その記事でわかるように、何十年も前からそれに向き合い、どこまでが安全なのかを客観的に調べ、乗り越えてきた人達がいる。 「正しく怖がる」ことのできるのが、理性的な人間だと思います。

2018-09-01 20:44:22
RING @__schwarzkatze

「こんな昔からトリチウムの危険がわかってたのに!」って噴き上がってる人もちらほら見かけるんですが、違います。 「こんな昔からこんなにたくさんの量がないと影響がないことがわかってる」なんですよ。

2018-09-01 20:50:19

第2部

Kontan_Bigcat @Kontan_Bigcat

@schwartzkatze @MtMikasa これなんかも、0.4 mGy/h、4 mGy/h に96時間って、かなりの高線量(Abstractでは、ゼブラフイッシュの吸収線量をどう決めているかわからなかったので、H-3濃度は不明だけど。) twitter.com/sinwanohate/st…

2018-09-01 15:17:09
レイジ @sinwanohate

トリチウムが生物に全然影響ないと思っている人もいるみたいだけど、「トリチウム水でゼブラフィッシュを発生させると、筋肉や目の遺伝子発現異常、DNA修復や活性酸素に反応する遺伝子の発現増加、筋肉の構造異常がみられた」っていう今年7月の論文もある。 sciencedirect.com/science/articl…

2018-08-30 18:25:21
RING @__schwarzkatze

@Kontan_Bigcat @MtMikasa ありがとうございます。 さっそく計算してみました。 twitter.com/schwartzkatze/…

2018-09-01 16:57:14
RING @__schwarzkatze

ゼブラフィッシュに0.4mGy/hあてるにはトリチウムがいくら必要か? トリチウム水の内部被ばくで体内濃度が平衡状態の時に生体組織(の細胞)が受ける線量率の算出式を使います(NCRP 1979, Yamaguchi 1987) D(mGy/h)=C(MBq/ml)×3.29×W(ml/g) Wは含水率なのでこれを1とすると、D=0.12MBq/cc。 twitter.com/sinwanohate/st…

2018-09-01 16:55:22

D=0.12 MBq/cc→(おそらく)C=0.12 MBq/cc
上の式でDは線量率(dose rate)、Cは濃度(concentration)を表します。

下の原論文の抄録を見ると、0.4 mGy/hと4 mGy/hの2通りの照射線量率を使って実験しています。

リンク www.sciencedirect.com Tritiated water exposure disrupts myofibril structure and induces mis-regulation of eye opacity and DNA repair genes in zebrafis Tritium (3H) is a radioactive isotope of hydrogen. In the environment, the most common form of tritium is tritiated water (HTO). The present study aim… 1 user 3

この照射線量率0.4 mGy/h=400 μGy/hを、下記資料
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/kek07-2.pdf
の最初のページの図1に出ている1986年5月1日(チェルノブイリ事故発生の1週間後)に測定されたチェルノブイリ原発から東西南北それぞれ30 kmの範囲の空間線量率と比較してみてください(μGy/h単位の値に1.2を掛けるとμSv/hに換算できます)。事故発生当時の風向きの関係で南側より北側が高く、半径約20 km圏の北半分ではμGy/h単位で3桁-4桁の値がざら、最大値は北側6 kmのKrasnoe 村で3306μGy/hに達しました。

RING @__schwarzkatze

つまり、1mlあたり120000Bqあります。すなわち12000万Bq/L。 さっきのが19000万Bq/Lですから、オーダー的には同じくらいですね。つまりこれくらい濃くないと影響が見えないということになります。 6万Bq/Lがいかに雑魚な数字かお分かりいただけるでしょうか。

2018-09-01 16:55:22
RING @__schwarzkatze

しかしまぁ、やっぱり濃度的なオーダーはこれくらいになるんですねぇ。 よく「放射線の影響はよくわかってない!」という人がいますが、ここまで濃くないとわからない=これより下では、放射性物質があったとしても特別なことが起こらないことがわかってるということは、繰り返し強調しておきたい。

2018-09-01 17:36:12
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