いきなり重い話をする。原子力発電所事故について、政府・首相官邸の対応に批判が集中している。震災が起きた直後から大事故だったのに隠していたのではないか、と。
2011-04-18 22:33:47誤解や非難を恐れずにいえば、私は政府・首相官邸の気持ちがわかる。ゲームづくりの現場でも似たことがあるからだ。たとえば……100人の開発チームで2年かけてゲームソフトをつくった。だが、発売元の判断で、そのソフトが世に出せなくなった、としよう。
2011-04-18 22:35:32こんな場面でプロデューサー(開発会社の経営者)だとしたら、どうするだろう? 「さあ、皆さん、集まって。私たちが2年間かけてつくったゲームがボツになりました」。以上報告でーす。……と言ったら、バカだ。それは自分で自分が無能だと言っているに等しい。
2011-04-18 22:37:19リーダーは方策を考える。つくったゲームに欠点があれば、修正して予定通りに発売しようとする。プロモーションなど販売方法に問題があれば、良いプランはないかと知恵をしぼる。発売元Aがダメならば、発売元Bに持ち込んで、プロジェクトを生き返らせる方法はないかと考える。
2011-04-18 22:38:28つまり、重大事が起きたとき、リーダーは「一斉に」「即時に」「同一の」情報を流すことは、けっして得策ではない、と咄嗟に判断するものだ。重大事をリカバーしようと、部下からは見えないところでもがくのが、習性となっているのだ。
2011-04-18 22:39:36しかし、部下は賢い。開発現場の上層部が、ワサワサとしている雰囲気は同じ社内にいれば、伝わるものである。これを放っておくと、開発チーム内に悪い噂が流れることになる。そしてこの噂は多くの場合、現実よりも悲観的な憶測を含んだものになる。
2011-04-18 22:40:48たとえば、あるプロジェクトが失敗して発売中止の危機が訪れている。……というのが起きていることの事実だが、「我が社はもうすぐ倒産する」「大量リストラがある」と、たいてい話に尾ひれがつくものである。
2011-04-18 22:42:17では、そういう噂が広まらないようにリーダーは何をするのか。階層分けをする。階層分けをして事実を話す。情報を小出しにすると言い替えてもいい。本当のことを知っておいてもらいたい信用できるグループ。周囲が悪い噂を言ったとしたら、それを食い止めるグループなど。
2011-04-18 22:44:58火中の栗を拾うような覚悟で、最も危険な噂の元になりそうな人物と1対1で事実を話す、こともある。ある種のサシでの勝負のようなものだ。
2011-04-18 22:46:18あるいは、100人のチーム内で情報伝達ルートがしっかりとしていればリーダーはどしりとしているのがいい。そのまわりで説明力があり、チームマネジメントがうまいスタッフの力を頼り、最悪の場合を事前に説明しておく。何も知らないメンバーに心の準備をしてもらうこともある。
2011-04-18 22:47:53だが、最悪の話をするだけではいけない。過去に働いたことへの敬意を十分に重んじ、その労をたたえなくてはいけない。そして、その最悪の向こうには、どんな希望があるかを伝達する必要もあるのだ。さもないと、スタッフはやりきれない気持ちになるだけだ。
2011-04-18 22:49:22私はこういうプロジェクトの危機を何度か体験してきたので、政府・首相官邸の気持ちがわかる、と言っている。
2011-04-18 22:58:13通常のトラブルならば、そんなやり方でなんとか収まるところに収まる。だが、「命」がかかわると話は別だ。起きたトラブルは通常ではないのだ。通常ではないからリーダーは通常のふるまいをしてはいけないのだ。
2011-04-18 22:58:45トラブルには、ヘンな言葉だが「通常のトラブル」と「そうではないトラブル」がある。もう一段高いところにあるトラブルというのがあって、これは「通常のトラブル」に慣れている人がマネジメントをすると、かえっておかしくなるということがわかった。
2011-04-18 22:59:40政治がしっかりとしてほしいが、コミュニケーションが政治的になってはいけないという教訓を、残している。
2011-04-18 23:02:26こんなブログをエントリーしております。「プロジェクトリーダーの器量」 / GameBusiness.jp http://t.co/P9ZP2CP via @GameBizJP
2011-04-19 21:57:05