ドイツ戦車攻撃機小話~大口径機関砲から垂直発射無反動砲まで武装あれこれ

大戦期ドイツの戦車攻撃機というと3.7cm機関砲が有名ですが、あれはあれで難点があって他にも色々検討してましたというおはなし
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そういやKMXってSG113に似てますよね。やりたい事は全然違うんだけど、航空機装備で磁器探知の自動作動ってあたりが

2018-09-14 22:04:32
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

航空機の対戦車装備について。大戦期ドイツはこの用途向けに大口径機関砲を推してたんですが、敵戦車の装甲強化によって要求される威力が上がり、それに対抗するために機関砲は大型化を強いられて扱いにくくなりつつあって

2018-09-14 22:11:43
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

航空機からの射撃は地上の火砲と違って自由な方向から浴びせられるので薄い部分を狙える……というのは半分正しいのですが。しかし最も薄い上面装甲狙いの射撃は降下角度と射撃距離の関係で難しく危険で、かといって安全のために降下角を浅くすれば弾かれやすくて、実はそこまで効果的でもないのですね

2018-09-14 22:18:50
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

すると航空機からの対戦車射撃でも、実際的にはせいぜい最も厚い前面装甲を避けて側背面装甲を狙えるくらいしかメリットがありません。そしてT-34やKVは側背面まで割とガッチリしてて生半可な弾では抜けない。そういうわけで対戦車用の航空機関砲にも結構な貫通力が必要になってしまうのです

2018-09-14 22:22:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

例えば有名なJu87Gの3.7cm機関砲ですが、あれ実は戦車には硬芯徹甲弾を使うのが前提で、通常徹甲弾はそもそも通常使う弾種として数えられてなかったりします。この写真もよく見るとクリップ全弾が硬芯弾(円錐型に尖ってる)。航空機から撃とうが何だろうが単なる3.7cm砲じゃKVなんか抜けないのですね pic.twitter.com/4LkR1f9E6w

2018-09-14 22:52:39
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

いっぽう3.7cm高射機関砲の普通榴弾と徹甲弾はこんなので、先の硬芯弾との違いは一目瞭然です。これらの弾も3.7cm航空機関砲にも互換性はあるんですが、でも対戦車攻撃機では硬芯弾、迎撃機では薄殻榴弾を使うのが本来。高射機関砲と航空機関砲では求められる性質が違い過ぎるんですね pic.twitter.com/2TtX6vZ9z4

2018-09-14 23:06:15
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

つまりドイツは硬芯徹甲弾を使う事で対戦車攻撃機に求められる高い装甲貫通力をどうにか達成してました。しかし硬芯徹甲弾は弾芯素材のためにタングステンを必要とします。工具等にも不可欠なこの希少資源を弾として使い捨てて行けばジリ貧なので、この弾種は使用しない方向性に変わっていく

2018-09-14 23:15:00
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

大戦期ドイツの硬芯徹甲弾というと戦車砲や対戦車砲の印象が強いですが、しかし生産した弾芯重量で見ると7.92mm小銃/機関銃/対戦車銃用が41%、航空機関砲用が17%、戦車砲/対戦車砲用が42%となっていまして。細かく口径別で見ると3/3.7cm航空用が3位。実は対戦車攻撃機のタングステン消費が相当デカい

2018-09-14 23:51:53
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

3cmと3.7cm機関砲の硬芯弾は弾芯が共通だったので、うまい数字が見つからず生産数をうまく分離できませんでしたが。いずれにせよこれらは航空機関砲、つまり対戦車攻撃機でしか使われてません(高射機関砲に充てた分も僅かにあるでしょうが)。仮にこれが無ければ7.5cm硬芯弾を史実の3倍以上は作れた

2018-09-14 23:58:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

限られたタングステンをどっちに充てるのが効率的だったのかは私にゃ分かりませんが。しかし航空機関砲は対戦車砲より距離選択の自由があって近くで撃てるんで硬芯弾の性質と相性が良いですし、同じ資源消費で作れる弾数が多いんで、ひょっとすると割の良い投入先だったのかも知れません

2018-09-15 00:02:51
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

あるいは命中率を思うとどうなのか分かりませんが。しかし実際のところ航空機関砲で硬芯弾をよく使い始めた時期には既に戦車砲/対戦車砲の硬芯弾は下火だったので、航空用のほうがマシな使い道という認識はあったんじゃないかなあ

2018-09-15 00:13:01
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかし一発あたりの資源消費量が少ない航空機関砲用であれ、けっきょく硬芯徹甲弾を作り続けられない事には変わりなく。地上では硬芯弾に頼らなくても貫通力を稼げる大口径砲に移行することで解決しましたが、軽さが命の航空機関砲で大口径化は苦し…くるし……一応不可能ではなかったにせよ pic.twitter.com/x42sHn0hKi

2018-09-15 00:18:28
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そして対戦車攻撃機の機関砲での攻撃は、無理に上面射撃にこだわらない場合でもやはり危険で困難。なんせ走って避けたり対空機銃を撃ちかえしたりしてくる6m程の的に、時速数百キロで突っ込みながら、威力を落とさないように出来るだけ至近距離から撃たなきゃならんのです。もちろん事故らないように

2018-09-15 00:25:46
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

威力は欲しいけど硬芯弾は資源的に使いたくないし、かといってデカくて重い大口径機関砲は扱い辛いので避けたい……。そういうわけで軽量かつ照準が簡単で威力もある、そのうえ希少資源も要求しない、そんな新しい対戦車攻撃機の装備が欲しくなってくるというわけです。んな無茶な

2018-09-15 00:34:12
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

昨日のおはなしの続き。敵戦車の強化と資源事情によって対戦車攻撃機の武装に限界が見えてきたドイツさんですが、当然それを目指して目指して試行錯誤をする事になります。軽量かつ照準が簡単で威力もある、そのうえ希少資源も要求しない、そんなスーパー対戦車用航空武装を……

2018-09-15 21:42:09
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

新しい対戦車用航空武装の方向性その1 収束成型炸薬爆弾 いわゆるクラスター爆弾の子弾を成型炸薬弾にしたもの。爆弾の直撃率の低さを数で補えるこの方向性は実際有望で、戦後にも続く「正解」の一つ。……の筈なんですが、不思議な事に大戦期ドイツはコレをあまり多用しませんでした pic.twitter.com/NZpHEupRUl

2018-09-15 21:54:41
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

成型炸薬集束爆弾としてはソ連が多用して上手く行ってたんですが、どうもドイツのそれは少し方向性が違ったようで。ソ連のは攻撃機一機で数百発を積んで、車列を包み込むように長さ200mに渡ってばら撒いた一方、ドイツのは500kgコンテナで74発入りで散布域は50mに過ぎず

2018-09-15 22:02:08
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

どうもドイツのSD4HLはHEDPめいてて、破片効果も考慮してて肉厚で重いんですね。元々が対戦車用じゃない破片子爆弾のSD4から派生したのでそうなるんですが、そのために弾数が積めない。いきおいSD4HLは集束爆弾なのに当てにくく、技量を要する爆弾になってしまったのです

2018-09-15 22:09:03
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

や、時系列的にはSD4HLと3~3.7cm機関砲は重なってて、機関砲の置き換えって立ち位置ではないのかな。ともかくSD4HLは当てにくさの他にも信管の構造が複雑とか信頼性が低いとか問題が多く、むしろ機関砲より先に退場してしまいます

2018-09-15 22:14:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

新しい対戦車用航空武装の方向性その2 ロケット弾 大戦期ドイツは意外にも、航空用ロケット弾を戦車に向けようと思うのがかなり遅めでした。航空用ロケット弾自体は幾らか作られてたものの、低速なので徹甲弾頭を付けてもイマイチ、そして旋転安定なので成型炸薬弾頭とも相性が悪くて

2018-09-15 22:27:48
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

航空用ロケット弾そのものへの着手は開戦前からしてたんですが、旋転安定なので発射器が少し手の込んだ物にならざるを得ず。15cmの大口径とかリボルバー連発発射器とか色々検討したものの結局どれも陽の目を見ず。用途も空対空か地上の軟目標とかで、戦車は特に考えてなかったようです pic.twitter.com/1opvr6bEmQ

2018-09-15 22:33:31
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

成型炸薬とロケット弾の組み合わせ、しかも成型炸薬の威力を落とさない翼安定方式というのは1944年にパンツアーブリッツとして現れたんですが、実はこいつ訳がわかりません。どうもR4Mにシュレック頭を付けただけみたいな簡単な話ではないような、どうにも方々でお話が混乱してます pic.twitter.com/P5hZNAC5Ft

2018-09-15 22:42:56
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

パンツァーブリッツはI型だかが実際に少数使用されたとかなんとか、あるいは歩兵用のパンツァーシュレックを無理矢理くっ付けたのとかも無くもないんですが。ともあれ航空用対戦車ロケット弾という方向性も、概ね間に合わなかったと言えるように思います

2018-09-15 22:52:23
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そういうわけで大戦期ドイツは収束爆弾やロケット弾と成型炸薬の組み合わせという未来目線から見た対戦車用航空武装の「正解」を逃しちゃったんですね。尤も当時の目線では正解だなんて知りようもないし、それに他国だって皆がそこに辿り着いてた訳では到底ないので、ドイツが「誤った」とは言えません

2018-09-15 22:56:51
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかもそれだけで済まないのがドイツぢん。実はさらに他の方向性の対戦車用航空武装を検討していました。……上面射撃です。「それ実は弾かれやすくて思ったよりイマイチだって最初に言ってたでしょ!」 単純にやればその通りなんですが、彼らはそれを実現する方法を考えたのです。考えちゃった

2018-09-15 22:58:41