「言いたいこと」探しと読者の読み方

千野帽子さん(@chinoboshka)による、一般読者の小説の読み方について。 関連:千野帽子、「おもしろい」と「わかる」について http://togetter.com/li/98271
23
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

〈「でも、夜がこんなに暗いってことを東京の人にどんなに説明しても、うまく説明できないの。いいなあとか、星が綺麗なんでしょうとか、そんなふうに言われちゃうの」いいなあとか、そういうんじゃなくて、暗いってことだけ伝えたいのにな〉(長嶋有『ジャージの二人』連作中の一節)(続く)

2011-04-19 19:31:14
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)『ジャージの二人』文庫解説(柴崎友香)〈なんでそれに暗い→自然が素晴らしいとか、暗い→都会の生活を見直すとかにすぐにつながってしまうんだろう。/小説の読み方がだんだんそういう方式になってきてるんじゃないかと感じることがよくある〉(続く)

2011-04-19 19:36:03
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)柴崎〈この人物はこの世代の特有の性格を象徴している、出てくる駄菓子は主人公にとって◯◯を意味している、という分析するような言い方とか、主人公みたいに無理しないでそのままの自分でいいんだよというメッセージが込められている、という一言キャッチフレーズみたいなのとかが、(続く)

2011-04-19 19:40:33
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)柴崎〈普通の人の感想の中にも増えている気がする。いつから小説はそういう「テーマ」や「メッセージ」を解読するものと思われ始めたんだろうか。〔…〕「意味」や「いいたいこと」を探すことを目的に読むなんて、すごくもったいない読み方だと思う〉。

2011-04-19 19:46:01
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

午前の削除して仕切り直し。きのう引用した、長嶋有作品の一節(http://p.tl/KALx)およびそれを受けて柴崎友香さんが書いた解説の一節(http://p.tl/ULUPhttp://p.tl/EV-Shttp://p.tl/aIcV)について。 (続く)

2011-04-20 12:58:00
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き) 「言いたいこと」を探して小説を読むなんて勿体ない、という点で柴崎さんと同意見だが、考えかたが大きく違う部分もある。解説全文を読むと、評論が「言いたいこと」探しをやってて、最近は普通の読者も評論ぽいことをするようになった、と読める。でも私の感じでは逆だ。(続く)

2011-04-20 12:58:30
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)一般読者はむかしから「言いたいこと」を探して読んでいる。かつてなら胸中にしまうか飲み屋で語られるかだった「言いたいこと探し」の文が、ここ10年ちょっとでウェブに上げられるようになっただけ。(続く)

2011-04-20 12:59:01
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)ウェブ上の多くの感想文はじつは自分の感想を書けていない。学校国語的な「言いたいこと探し」になってる。テーマとか「言いたいこと」を探すよりも、感想を感想のまま書くほうが、ずっと頭を使うし、言葉にたいしてもっと自覚することを要求される。(続く)

2011-04-20 13:05:13
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)ウェブ感想文の貶し言葉で「主人公がなぜこうなのか、わからなかった」「作者がなにを言いたいのか、わからなかった」をよく見る。「言いたいこと」を探して読めば、そりゃ「登場人物の行動の動機は説明されるはずだ」「作者には言いたいことがあるはずだ」と思いこみもしようさ。(続く)

2011-04-20 13:08:13
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)だから柴崎さんの解説の大筋には賛成しつつ、一般読者が評論ぽくなってきた、という説明は違うと感じた。作家の営業的には「無垢な一般読者が評論家の理屈に毒された」という図式にしておいたほうが無難かもしれないけど、一般読者は最初から「作者の言いたいこと」を探したがるものなんです。

2011-04-20 13:14:31
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)だから、一般読者は「言いたいこと」探しなんかやめてふつうに読めばいいのに、という柴崎さんの意見はもっともなのだけど、「言いたいこと」探しのほうがメジャーで、そうでない読みのほうがマイナーなのだから、それをふつうの読書と呼んでいいのかどうか。(続く)

2011-04-20 13:24:24
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)「言いたいこと」探し、テーマ探し、感情移入ポイント・共感ポイント探し、のほうが多数派という世界で、そうじゃなくて「ただ感想を書ける」ようになることを、例の「百讀」ではめざしてます。

2011-04-20 13:26:32
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

柴崎さんの文をめぐるきょうのツイートは、以前どなたかが纏めてくださったこれ(http://t.co/zOmeRNn)の続きかも。

2011-04-20 16:29:57
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

同じ。読者は自分の思い込みを書きつつ「作品の真意はコレだ」とどっかで信じてる。QT @kila_a_kila 千野帽子氏のツイート面白し。わたしの感じだと逆。作者の言いたい事より自分の解釈優先の感想が多い。自身の快感原則を基準に、文脈無視で好きなように自在に意味を読み替える

2011-04-20 17:02:48
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

私そんなことまったく書いてないんだけど、これは作者の真意なんか読まないぞというパフォーマンス? RT @tadayoshi_k: @chinoboshka @kila_a_kila だからといって、作者の真意をずばりと当てることが本当によい鑑賞であるかと言えばそうとは思えない。

2011-04-20 17:19:18
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

作品の字面とはべつに「真意」とやらがあるはずだ、というのはあなたの思いこみです。RT @tadayoshi_k 鑑賞っていうのは作者の真意を言い当てなければ良しとは言えないと。作者の真意が万人に伝わらないのは良い作品とはいえないということでしょうか。

2011-04-20 17:28:24
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

字面の背後に、字面とはべつに真意がある、というアプローチは、『神曲』のモデル探しなどには有効だけどさ…

2011-04-20 17:33:01
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

それ! RT @tamanoirorg: 作者が何をどう抜かそうと、その目の前に字面突き付けて、ここにはこう書いてあるよね、でこれはこう解釈できて、その解釈を排除すべき要素は作中にはないよね? とやれるのがいい読者。

2011-04-20 17:33:50
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

『神曲』のモデル確定のように訓詁・文献調査に進むならまだわかるんだけど、「作品の字面の背後に、作品の字面とはべつに「真意」とやらがある」と考えてテーマ探しをする読者は、自前のおつむで考えるだけだから、おつむの水準以上のものを見つけることは、原理的にありえません。

2011-04-20 17:48:33
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

(続き)だって、テーマ探しをする読者が「あっ、作者はコレが言いたいのだな。この作品のテーマ、ゲットだぜ!」と思うときの「コレ」って、その読者が「コレなら自分、知っている」と自信を持って言えることに限定されてるんだもの。テーマ探しをする限り、身の丈以下でしか読めない。

2011-04-20 17:54:55