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ラスト・ガール・スタンディング #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ラスト・ガール・スタンディング」 #5
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(スーサイドはソニックブームを睨んだ。だが、拳は振り上げなかった。「…知った事じゃねえ」彼は言い捨てた。「ハハハッ!よおし行くぜ!ついて来い!」ソニックブームは哄笑し、廊下を足早に突き進む。スーサイドは無表情に後を続く。彼は自身の心中から、被写体を…ヤモト・コキを、締め出した。)
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「タラバー歌カニ」という相撲フォントのネオン看板、そこから生えた稼働する生々しいカニの脚の巨大模型を、ヤモトを加えたオリガミ部の五人は立ち止まって見上げた。にこやかに笑顔を交わす。ヤモトにとって、カラオケ・ステーションへ行くのは生まれて初めての経験である。
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「今度は大丈夫だったね」アサリが笑った。そう、かつて繁華街の路地裏へ連れ込まれて大変なことになったのは、やや危険な地域を通ってカラオケ・ステーションへ行こうとした為であった。今回はその仕切り直しの意味合いもある。より安心なルート、安心なカラオケ・ステーションが選ばれた。
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「でも、今回こうして参加人数も増えたし、かえってよかったよね、ヤモト=サン」アサリは冗談めかして言った。「サイオー・ホースな!」ブナコが口を挟むと「コトワザ!カワイイ!」オカヨが息のあった合いの手を入れた。「カワイイ!」他の皆が陽気に繰り返す。
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カラオケ・ステーション「タラバー歌カニ」へ向かうギリシアめいた広い屋外階段の左右には様々な露店が建ち並ぶ。飴やタイヤキ、ライトゴス・ファッション・ブランド「憤怒」の路面店、バイオ金魚……パステルカラーのネオンが夜をはかない色彩でライトアップし、メカホタルの光の粒が飛び交う。
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行き交うのはヤモト達と同様、制服姿を思い思いにカワイイアレンジした近隣の女子高生たち。ファッション、甘味、社交。このストリートはティーン少女の欲求に、いびつなまでに完璧に応える。祭りめいた階段の頂きでライトアップされるタラバー歌カニの姿はさながらシャボン玉めいた幻想の御殿である。
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「ヤモト=サンはどんな歌を歌うの?」露店で買ってきた人数分の生姜チュロスを奥ゆかしく配りながら、マチがたずねる。ヤモトが答えあぐねていると、すぐにアサリがフォローを入れる。「行けば楽しいよ、カニもあるし!」「カニ!カワイイ!」
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「歌って!食べて!」と書かれたタラバー歌カニのノレンをくぐった五人は、受付を済ませると、瀟洒なエントランス・ロビーでしばし待つ。ロビーには数台の相撲スロットマシンと、小型のマジックハンド・カワイイキャッチがある。
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すぐに店側の準備が整い、五人はエレベーターに案内され、個室505号室に通された。薄暗い室内にはチャブテーブルとイケバナ、液晶モニターが設置されている。さらに部屋の奥にはノレンで覆われた、謎めいた配膳用の小窓がある。
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この小窓こそ、「タラバー歌カニ」をカラオケチェーン店のシェアトップに立たせしめた画期的なシステムの秘密である。各カラオケ室は階の中心から放射状に設置されており、すべて、この小窓が各階中央のカニ配膳室に接続されている。
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小窓の脇にある「蟹」ボタンを押すと、中央の配膳室からコンベアーベルトによって即座に、加減良く茹でられたタラバーカニの脚が送り込まれる。しかもこのカニは食べ放題、ボタンは押し放題なのだ。クローン・タラバーカニの危険性は厳重な管理で最小限に抑えられている。なんたる画期的なシステム!
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「ヤモト=サン、それ押しすぎ!」アサリが笑った。キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!時間差で蟹ボタン受領効果音が鳴り響く。「いっぱい来ちゃうよ!」ヤモトは慌てて「音が鳴らなかったから、つい」「じゃあ私も!」オカヨが笑い転げながらボタンを連打する。キャバァーン!キャバァーン!
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「やめなよ!」五人は笑い転げた。やがて「イヨォー」という音声とともに小窓のコンベアーから大量のカニが流れてくると、五人はさらに笑い転げた。こうした騒ぎは何が理由でも楽しく、笑いを誘うものなのである……。
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ブンブブンブブンブブブンブブーン。カラオケ用の電子的なビートとシンセ加工されたギター的サウンドに載せ、ブナコは振り付けを交えて歌う。「アー、良い天気メンテナンス、電気でまた会いますー」イヨォー、とカブキ・ヒットの合いの手、「ラブ、ラブメンテナンス重点、ラブメンテナンス重点」
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ハイティーンの間で人気が高まっている新人エレクトロポップ・バンド「デンチモナ」のシングル「ラブメンテナンス重点」は昨日カラオケにIRC配信されたばかりの新曲だ。ブナコは満足げにオジギを決めた。「カワイイ!」カニをつまみながら、皆で喝采する。
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「次、私だ!」マチが陽気に言って立ち上がった。モニターに映るのは満開の桜だ。続いて曲名とアーティスト名「ラブ王侯(タケヨ)」。ブンブンシュシューン、ブンブンシュシューン。イントロが流れ出す。「歌いたい曲がなかなか見つからないよね」曲ブックをめくりながら、アサリが囁く。
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「そうだね」ヤモトは囁き返した。アサリはヤモトに気を使ってくれているのかもしれなかった。いや、きっと他の皆も。ヤモトは、せめて今後の部活動で一生懸命オリガミを折ることで、皆の気遣いに応えていきたいと、決意めいて考えるのだった。マチが歌い出した。「王侯のような精神生活ー」……。
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ヤモトは出入り口のガラスに透けるシルエットに凍りついた。そのシルエットには見覚えがあった。「……ちょっとトイレに」アサリを心配させぬよう笑顔で囁き、ヤモトは立ち上がる。他の三人にも小さくオジギし、彼女は部屋を滑るように出た。「…ドーモ」男の方からアイサツしてきた。ショーゴーから。
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ショーゴーはアフロヘアーにサングラス、ボトムは黒革でエンジニアブーツを履き、上半身は素肌のうえに耐汚染ジャケットという出で立ちで、およそ高校生離れした姿だった。思えばショーゴーを見たのは彼が警察に連行されたあの日以来だ。しかも、こうして口をきくのは、初めてだ。
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「ドーモ、ショーゴーです」彼は再度アイサツした。「……ドーモ、ヤモトです」ヤモトはオジギを返した。二人はカラオケ・ステーションの廊下で睨み合う。部屋の中からマチの歌が聴こえる「王侯~、あなたとの生活、精神はまるで」「アタイに用なんでしょ」「……そうだ。わかるんだな」
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「わかる。あの時、目が合ったよね」ヤモトは呟いた。「アンタが、あのヤンクをみんな殺した」「……俺はわからなかった」ショーゴーは低く言った。「お前もニンジャになっていたなんて」ショーゴーの妙な雰囲気を察し、ヤモトの中で張り詰めた戦闘意志がやや揺らいだ。「どういう事?」
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ショーゴーはしばらく黙っていた。やがてサングラスを外した。凶暴ないでたちにそぐわぬ悲しげな表情でヤモトを見た。「俺はただ、お前に、」『ポーン!五階です』廊下の曲がり角の先からエレベーターの電子マイコ音声が聞こえてきた。「ブッダファック」ショーゴーは舌打ちした。「時間切れかよ」
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2011-04-28 06:06:39
ラスト・ガール・スタンディング #1 http://togetter.com/li/121698 ラスト・ガール・スタンディング #6 http://togetter.com/li/128944
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