日向倶楽部世界旅行編第65話「君子危うきに」

伊勢の策謀により、日向は手痛い一撃を食らってしまう。伊勢の口車に乗せられた日向は、大和の後ろで怠けていた五十鈴との交戦を開始する。日向を知る五十鈴は、その力量を把握するため、観察を始めるが…。
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「私の方が強いってのは、分かってるでしょ?」 「こいつがヒューガリアンの日向」 「何が目的だ…?何かを観ているのか?」 「見せてもらおうじゃないの、航戦のオバサンッ!」 「大和はお役に…皆さんのお役に…」 「一体奴等は何なのだ…?」 「間違いなく”強い”!」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/CsIIwB7EHp

2018-10-03 20:47:28
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 日向の試合が始まりました。相手は大和型の戦艦娘…なんだか手強そうですね。もう一人の軽巡洋艦娘が動かないというのが気になりますが、今のところ押しているようです。ああっ!そんな事を言っていたら日向が一発貰ってます、大丈夫かしら…自分でも驚くくらいハラハ

2018-10-03 21:00:18
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【前回の日向倶楽部その2】 なかよし伊勢型とチーム名無しの試合は、五十鈴の無気力もあり、日向達がかなり押していた。だがそれでは都合が悪い伊勢は、大和の砲撃を日向に向けさせ、その最中に日向を撃った。伊勢の思惑とは、そして日向の命運は…

2018-10-03 21:01:33
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第65話「君子危うきに」

2018-10-03 21:02:33
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〜〜 「全弾避けたつもりだが、甘かったか…!」 主砲を一基失った日向は、自らのミスに息を呑む。その一撃が伊勢のものである事に気付いていない彼女は今、大和の力量に驚く形となっている。 そんな彼女を見て伊勢はニヤリと笑う、策は完全に成っていたのだ。

2018-10-03 21:03:48
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「さて…ここからだよ…!」 ほくそ笑んだ伊勢は、大和の砲撃を軽々と避けて一時後退、日向の元へと向かう。 「日向大丈夫〜?」 微塵も真実を出さない、あまりに白々しい心配の言葉を、彼女はいつものように戯けて吐く。 「問題ない…。あの大和型、この私が慢心したか…」

2018-10-03 21:05:21
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日向は気付いていない為、このように答える。これは彼女が鈍いのではない、伊勢が巧妙に、日向が絶対に気付かぬタイミングで撃ったのだ、見えるはずがない。 加えて、日向は試合中のみは伊勢を信用せざるを得ない。また優勝を目指す以上、伊勢がそんな事をするとは到底考えなかったのである。

2018-10-03 21:07:03
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そんな前提と状況を利用し、まんまと狡猾な作戦を成立させた伊勢は、次の段階へと移行すべく日向に何気なく口を開いた。 「思ったより強いよね…それよりあっちなんだよ、あっち」 「何…?」 警戒を続ける日向に、伊勢は遠くの五十鈴を指差す。

2018-10-03 21:08:59
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伊勢の指差す先では、五十鈴が一応戦うふりをしている。そこを指して彼女は言った。 「あの艦娘…こっちが攻勢を終えた時を狙って攻めてくる気がするよ。」 「…それは恐らく、あるな…」 五十鈴自身は全くやる気がないのだが、そんな事日向が知るはずもない。

2018-10-03 21:10:34
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そこへ伊勢は続ける。 「厄介な事になる前に狙った方が良いかもしれないね…大和の方は私が見て、日向は向こうと戦うってのはどう?」 「お前が奴とか?」 大和の相手を買って出る伊勢に対し、日向は訝しむ。だが伊勢はにんまりと笑った。 「私の方が強いってのは、分かってるでしょ?」

2018-10-03 21:11:45
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挑発的とも言える彼女の言葉に、日向は閉口する。 控え室での出来事、先の被弾、そしてそもそもここに至るまでの経緯…伊勢と自身に実力差がある事は、日向も認めざるを得なかった。冷静な彼女だからこそ、これを認めてしまったのだ。 「…分かった、私が行こう。」

2018-10-03 21:13:00
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日向は感情を抑えて頷き、伊勢の提案を呑む。 平時なら伊勢の言葉に耳など傾けない。だがこの大会で優勝を目指すチームである以上、伊勢の提案が勝利に繋がるものと考えるのは普通の事だ。 この大会の戦闘時に限り信用出来るという認識が、日向に牙を剥いている。彼女はズブズブと伊勢の策にハマる。

2018-10-03 21:14:42
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事は伊勢の思惑通りに運んだ、伊勢はニタリと笑い、刀を振るう。 「じゃあよろしく、大和の相手は私に任せなよ」 彼女がそう言うと、日向は無言のまま五十鈴の方へ向かう。その背中を見て、伊勢は肩を震わせて笑いを堪えた。 「なまじ頭が良いと、フフッ、ああなっちゃうよねぇ…」

2018-10-03 21:16:13
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場を掌握したと言っても過言ではない彼女は、日向を見送ると刀を構え、先程から攻撃を続けていた大和を見据える。 「さーて…こっちは多分、ムッちゃんのオモチャかな…」 戦意溢るる大和を、伊勢は小馬鹿にして見つめる。負ける気などさらさらない、伊勢には圧倒的な自信と、実力があった。 〜〜

2018-10-03 21:17:37
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〜〜 「さあ試合は大和対なかよしの構図でしたが、ここで仕切り直して二手に別れるようです!ここからどう展開するか!」 放送席では実況と解説が盛り上がっていた。艦娘に関するうんちくや、今大会の見どころなど、見やすいバラエティのように番組は進んで行く。

2018-10-03 21:20:02
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だが今はそうでもなかった、解説の武蔵も三隈も、ある事に気付いていたからだ。ある事というのはもちろん、伊勢の攻撃である。 (あの航空戦艦娘の被弾…不自然だな、避けられないものでもあるまい。あれを撃ったのは伊勢の方だろうが…何故だ?) 腕を組みながら、武蔵は目を細めて思案する。

2018-10-03 21:23:18
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その隣では三隈が、真剣な面持ちで試合を見る。 (今、伊勢は確かに日向さんを狙ったわ…。どさくさ紛れに殺害を試みたのかもしれないけれど、二度も逃走した人間がこんな目立つところでそれをするとも思えない…何が目的なの?) 思わず解説の手を止めて思索する三隈、その表情はいつになく険しい。

2018-10-03 21:24:42
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解説二人がだんまりしてしまい、実況のケンは取り繕うように声を上げる。 「さ、さあ試合は中盤戦の様相、両者そろそろミスが起き始める頃か!?」 伊勢の思考は現状誰にも読まれていない。試合は彼女の掌の上、混沌とした中進んで行く… 〜〜

2018-10-03 21:26:20
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〜〜 「…何、アンタ」 海にガムを吐き捨てて五十鈴は言った。彼女の視線の先には、主砲を一基失った航空戦艦娘が居る。それは対戦相手であり、誰も何も無いのだが、五十鈴にとってはあった。 「随分やる気がないな…作戦か?」 航空戦艦娘は警戒しつつ訊ねる。

2018-10-03 21:28:01
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「…さあね、どうかしら。」 五十鈴が鼻で笑って答えると、航空戦艦娘…日向は注意深く間合いを取る。 その様子が五十鈴はおかしくて仕方ない。自分はただ、やる気がないからこうしているだけ。それなのに目の前の航空戦艦娘は警戒し、意識を張り巡らせている、あまりに滑稽だ。

2018-10-03 21:29:41
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しかし五十鈴自身もやる気こそなかったが、日向を注意深く観察はする。 (こいつがヒューガリアンの日向…なるほど、ザイアン程度じゃ倒されるわね。) 日向の立ち振る舞いや警戒心、五十鈴にとってこの状況では滑稽である。だが彼女はこれと別な状況で対峙した時、それは確実に厄介だとも思った。

2018-10-03 21:31:59
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(ザイアンはシドニーの市街地でこいつと鈴谷に仕掛けた…。) 耳にした話から五十鈴は推測する。 (いくらショボい秘跡だろうと、深海棲士は並の人間よりは遥かに強くなる。要するに、こいつ並じゃないのよね…。) 彼女は思考を巡らせつつ、日向の牽制射撃を避ける。

2018-10-03 21:33:20
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(…一応、感覚くらいは探った方が良さそうね。面倒だけど、仕方ない…) 五十鈴は思い立つと、二丁の主砲を初めて正面に構える。それを見て日向は目を細めた。 「やはり、油断を誘う策か…?」 先程まで何もせず、ただ怠惰な戦いをしていた五十鈴の雰囲気が変わったのを、日向はすぐに感じた。

2018-10-03 21:35:02
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(こっちの手を見せるわけにはいかない…どれだけビビらせられるかの勝負って話ね…) 五十鈴はトンファー付き主砲を構え、日向の方へと突撃する。動きは素早く鮮やかであり、その実力が平凡でない事を存分に表していた。 「さあチーム名無し、ここで五十鈴が一転して攻勢に出ます!」

2018-10-03 21:36:22
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「来るか…瑞雲ッ!」 日向は五十鈴の接近を確認すると、瑞雲を操りさし向ける。大和との交戦で数を減らしていたが、不自由しない数はあった。 そして五十鈴の方は、自身へと来る瑞雲をじっくりと観察する。 「艦載機の扱い…ま、当然よね。」

2018-10-03 21:37:50