日向倶楽部世界旅行編第50話「闘いの風」

闘いの日が迫るブルネイ泊地、参加者たちはそれぞれの思いを胸に、勝利への道しるべを描き始める…
0
三隈グループ @Mikuma_company

「悩み多き年頃か」 「組んだからには全力を尽くすぞ」 「霧島さん、上は任してください」 「この五十鈴の足を引っ張らないように」 「日向のパートナーは私だよ」 「これは私が決めた事なんだ…」 「ボクは躊躇わないぞ」 「飢えろ!勝て!旅人達よ!」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/NFG0wjvH7z

2018-06-12 20:45:09
拡大
三隈グループ @Mikuma_company

【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 闘技大会まで一週間、各地から続々と人が集まっています。皆さんとても頑張っていらっしゃるようで、あきつ丸さんや親衛隊の二人も黙々と打ち込んでいました。日向が最上さんと組まず、一体誰と組むのかも気になりますが、いずれにせよ楽しみです。私も応援道具を色

2018-06-12 20:59:50
三隈グループ @Mikuma_company

【前回の日向倶楽部その2】 闘技大会を一週間前に控え、ブルネイ泊地に各地から猛者が集う。何者かと組む日向、かつて打ち破った強敵足柄と組む最上、三隈の計らいによって、鈴谷と共に出場する事となったあきつ丸、メンツは揃い始めていた…

2018-06-12 21:01:55
三隈グループ @Mikuma_company

日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第50話「闘いの風」

2018-06-12 21:02:50
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 闘技大会のエントリー終了当日、大会開始まで後三日、参加者達はそれぞれの最終調整に取りかかっていた。 既に、多くのものはエントリーを済ませている。参加タッグは大会開始まで公表されないが、演習場での光景を見れば、概ね誰と誰が組んでいるかは把握出来るだろう。

2018-06-12 21:03:37
三隈グループ @Mikuma_company

例えば、この二人の騎士などがそうだ 「しかしレオン、お前と組めて嬉しいぜ」 黒薔薇の騎士ローズハルトが、海の上でハルバードを振るう。 「僕もだよハルト、急ぎここまで来た甲斐があった」 白百合の騎士リリィレオンも、同じくロングソードを振るい応える、二人の騎士は盟友であった。

2018-06-12 21:04:37
三隈グループ @Mikuma_company

騎士は語り合う 「ハルト、君が稽古をつけていたあの艦娘は、一体何者なんだい?」 レオンがそう訊ねると 「旅の途中で出会ったんだ、あのノワキという艦娘、家出をしたらしい!」 ハルトは、野分を思い出しながら答えた。 「家出、悩み多き年頃か」 それに、レオンは若人を想い、語る。

2018-06-12 21:05:40
三隈グループ @Mikuma_company

するとハルトは、ハルバードを天に突き上げて叫ぶ 「そうさ、旅に出た若者だよレオン!良い答えを見つけられるよう、祈ってやってくれ!」 そこにレオンも、ソードを天に掲げて叫ぶ 「ああ、君の友人の幸運を、我が白百合の花に祈ろう!ハルト!」 二人の誇り高き騎士は、高らかに笑った。

2018-06-12 21:06:53
三隈グループ @Mikuma_company

そんな彼等から少し離れた所で、駆逐艦娘野分と、戦艦娘長門が話し合う。 「お前と組むのは不本意ではある、しかし組んだからには全力を尽くすぞ」 長門は険しい面持ちで野分に迫る、それに、野分も締まった顔で答える。 「足は引っ張りません、私も訓練は受けています…!」 「フン、上等だ…」

2018-06-12 21:08:27
三隈グループ @Mikuma_company

組む相手との会話だというのに、長門は少なくない苛立ちを見せる。というのもこのタッグ、長門がこの大会は二人で参加するものと知らなかった故、仕方なしに組んだものなのだ。 (改心の余地があるとはいえ、よもや悪魔の犬と組まねばならんとは…) 故に、長門の心情は歯がゆいものだった。

2018-06-12 21:09:32
三隈グループ @Mikuma_company

野分も野分で、心情的にやり辛いものがある。長門は、自分の上司である那珂の暗殺を試みた、それは凄まじい艦娘だからだ。 (やり辛いけど、この人の実力は本物だもん…上手く戦ってみせなきゃ。) 野分はギュッと拳を握り締める。複雑に絡み合う感情の中、彼等は果たして、どう戦うのか…。 〜〜

2018-06-12 21:10:45
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 また別の場所では、二人の艦娘が艤装の調整を行っていた。 「よし…完璧だ」 そう言って砲を試し撃ちするのは、パラオからやって来た重巡洋艦娘、摩耶。 最上とは巡洋艦杯で争ったり、パラオで出会ったり、そこそこ交流のある艦娘である彼女は、現在パラオ警備隊の副長として活動している。

2018-06-12 21:12:14
三隈グループ @Mikuma_company

「25、37、85…」 その側で目を細め、ブツブツと呟いているのは、同じくパラオからやって来た戦艦娘、霧島。かつては優秀な艦娘として名を馳せた艦娘だったが、戦闘時の負傷で極度の近視を患い、今はパラオの警備隊長を務めている。彼女は摩耶の上司であり、今大会のタッグ相手だ。

2018-06-12 21:13:25
三隈グループ @Mikuma_company

「霧島さん、上は任してください、新装備も完璧ですよ。」 摩耶は得意げに艤装を動かし、霧島に笑顔を向ける。彼女にとって、霧島は優秀な上司であり、かつてエースとして名を馳せた超級の艦娘、尊敬出来る人だった。それと組んで大会に出られるのだから、彼女の気合は十分である。

2018-06-12 21:14:28
三隈グループ @Mikuma_company

そんな彼女に、霧島はゴーグルを触りながら答える。 「…ええ、期待しているわ。私も全力を尽くすから、着いて来るように。」 彼女がそう言うと、摩耶はハキハキとした返事をし、運動がてら水上を駆け出す。その背中を、霧島は目を細めて見つめる。ゴーグル越しに見える摩耶の背中は、ぼやけていた。

2018-06-12 21:15:38
三隈グループ @Mikuma_company

そのぼやけた視界の中、霧島は低い声で毒突く 「ゴーグルの調整は完璧なはず…また悪くなったって言うの?」 そう言って目元に力を入れると、右目はボヤけたまま、左目の視界がクリアになる。ますます歪む視界に、彼女は顔をしかめ、奥歯を強く噛んだ。 〜〜

2018-06-12 21:16:39
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 同時刻、別の場所。あきつ丸は鈴谷と共に、大会前最後の猛特訓に励んでいた。 「船にいた時とここに来ての一週間で、動きは前よりも良くなってる。前よりもワンパターンな動きが減ってるのは良い事だと思うよ。」 鈴谷は指を忙しなく動かして教授する。

2018-06-12 21:17:51
三隈グループ @Mikuma_company

「…でも、格上に勝てる程強くなったかと言えば…まだまだ。残った時間でそこへ追い付くのは不可能だ。」 彼女の言葉に、あきつ丸の顔つきが険しくなる、そこへ鈴谷は続ける。 「だからって諦めちゃあいけない、大会は二対二だ、多少の差なんて動き方や戦略でどうにでもなる、そこを練っていこう。」

2018-06-12 21:18:51
三隈グループ @Mikuma_company

要は実力差を戦略で埋める方針、二人はノートを開き、話し合いながら細かい動きなどをチェックしていく。 トラック泊地にいた頃も、あきつ丸は日向などから戦い方を学んでいた。だがそれは、あくまで艦娘として普通にやれるだけのもの。生き残り、給料を貰い、ご飯を食べる為のものだ。

2018-06-12 21:19:50
三隈グループ @Mikuma_company

そんな彼女が今学んでいるのは、勝つ為のもの。ごく普通の艦娘から一歩上、強い艦娘になる為のものである。 「あきつ丸ちゃん、この大会は二対二だ、もし追い詰められても破れかぶれになっちゃいけない。耐えるんだ、耐えさえすれば、あたしが駆けつけてなんとかする。」

2018-06-12 21:21:10
三隈グループ @Mikuma_company

鈴谷は真剣な面持ちで言った。彼女は一人で活動してきた凄腕のワタリ艦娘だが、一人だからこそ、チームワークの大切さをよく知っていた。 「撃ち合うと実力差が出やすいけど、集中すれば弾なんて案外当たらない。何もせず避け続ける勇気、これまで以上に意識してみ?」

2018-06-12 21:22:21
三隈グループ @Mikuma_company

鈴谷がそう言うと、あきつ丸は深く頷く 「分かりました」 「自分が一番安全な時だけ攻撃すれば、一方的にあきつ丸ちゃんの強さを出せる。試合作りはあたしに任せて、ベストを尽くすんだぜ。」 訓練を積んだとはいえ、ファイターとしてのあきつ丸はまだまだ未熟だ。

2018-06-12 21:23:21
三隈グループ @Mikuma_company

故に、鈴谷は自分が引っ張っていくという意思を見せ、ニッと笑った。 「っしゃ!じゃあ確認はこれくらいにして、海行くか!」 「はい!」 あきつ丸はハキハキとした返事と共に立ち上がり、鈴谷と共に演習場のドックへ向かう。一大イベントを前に、あきつ丸は胸を高鳴らせていた… 〜〜

2018-06-12 21:24:28
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 所変わって、ここはブルネイ泊地宿泊施設の一室。ツインテールでガラの悪い女が、のど飴を口の中で転がし、気怠そうに泊地新聞を読んでいた。 「ったく、折角金持ちの国に来たってのに、お守りやってちゃ満足に観光も出来やしないわね。」 女は新聞をテーブルに放り投げる

2018-06-12 21:25:48
三隈グループ @Mikuma_company

面には観光案内の記事、女はそれを見て舌打ちし、新聞を元あった場所へしまった。 (…まあこの場、機会としては悪くないのよね。厄介ごと押し付けられた感じするのは、全く気に入らないけど。) 黙って独白しつつ、彼女はベッドに寝転び、スマートフォンをいじり出す。

2018-06-12 21:26:50