ホームレスになったメスおにを拾って使用人兼性奴隷にする金持ちショタ

金持ち=社長
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帽子男 @alkali_acid

今度あらわれたのは空飛ぶ円盤だった。お椀を伏せて皿に重ねたようなかたちで、重力などないかのように動き回りながら、二人に近づいて来る。 「第十一世代人工知能!?また連邦協約の重大な違反だ」 「なんだ連邦の宇宙飛行士か…ははあ協約違反で民権停止になったクチだな」

2018-06-30 17:11:44
帽子男 @alkali_acid

飛行士のまわりを飛び回りながら、空飛ぶ円盤はじっくりと観察をしているようだった。 「両性化の中期段階か…ふむ…もとはXY染色体?あー男か」 「ぼくは今でも男だ…そりゃ…ちょっと体つきは…」 「ああ性器には変化なしと…安定している…だが脳はかなり変質している」 「くっ…」

2018-06-30 17:13:49
帽子男 @alkali_acid

若社長は、空飛ぶ円盤と半裸のメス兄、とでもいうべき肢体とを見比べてから面白くなさそうに言った。 「よくわからん!」 お椀を伏せて皿に載せたような物体が光を点滅させる。 「説明しよう」

2018-06-30 17:16:41
帽子男 @alkali_acid

「若社長が連れてきたこの男は連邦の宇宙飛行士くずれでな。宇宙船を正確に操縦するために、1秒を1分にも1時間にも感じさせる薬を打つ。その副作用で男も女も、両性の中間のような体つきになる」 「よくわからん」 「それだけではなく、激しい発情の発作を起こす」 「よくわからん」

2018-06-30 17:18:28
帽子男 @alkali_acid

空飛ぶ円盤はゆるやかに旋回する。 「連邦は、発達しすぎた機械が反乱を起こすのを恐れ、高度な人工知能を禁じ、宇宙船とかそういったものを必ず人間が操縦するようにしている…だが今の宇宙船の性能はふつうの人間では手に負えないほど進歩しとる…それで宇宙飛行士に無理をさせることになる」

2018-06-30 17:21:44
帽子男 @alkali_acid

「薬の副作用で両性化が進んだ宇宙飛行士は、鎮静剤なしでは発情の発作を起こして使いものにならん。しかもその利きもだんだん悪くなっていく。おかげで各宙港には宇宙飛行士組合御用達の売買春施設があるほど」 「…うむ…ぜんぜんわからん」

2018-06-30 17:24:19
帽子男 @alkali_acid

少年は、闇医者と患者を見比べて言った。 「せんせい。こいつをげんきにして、いいくすりをやれ。しんさつけんも作ってやれ」 「船元の健康保険には入っとるのか」 「はいってない。おれがたてかえておく」 「あいかわらず甘いな」 「せんせいうるさいぞ」

2018-06-30 17:26:03
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ しばらくして、乞食ならぬ元宇宙飛行士は治療を終え、音波シャワーによる洗浄も済ませて、こざっぱりした作業着で休憩所で鎮静剤入りコーヒーをすすっていた。 「あの…えっと…若社長…」 仕事のあいまにようすを見に来た少年に呼びかける。 「なんだ!」 「いろいろと…ありがとう…」

2018-06-30 17:28:02
帽子男 @alkali_acid

「ぼくみたいな…民権停止の犯罪者に…よくしてくれて…」 「げんきをだせ!乞食はもっとずうずうしくしてろ!」 「うん…えと…あの…うん…」 「くすり代としんさつひ、ちゃんとはらえ。いっぱいめぐんでもらったときに、ぶんかつではらえ」 「あはは…できるかな」

2018-06-30 17:30:12
帽子男 @alkali_acid

「おれのめいしだ。なんかあったらこれをもって船元のじむしょにこい。めんどうみてやるからな」 金属とも紙ともつかない四角い札を上着から出して渡す少年。青年はおしいただくようにして受け取る。 「ひとりでかえれるか」 「えー…むり…かも」 「そうか。じゃあおくってってやる」

2018-06-30 17:32:00
帽子男 @alkali_acid

高層建築が寄り集まってできた陸塊のあいだを、少年は青年を連れたまま、蟻が巣の中で決して迷わないようにするすると抜けていき、とうとう外へたどりつく。 「じゃあな…そうだ。乞食をするならちゃんときたないかっこしろよ」 「あ、うん」 「乞食のしごとぎだからな!しっかりな!」 「うん…」

2018-06-30 17:34:19
帽子男 @alkali_acid

ぶんぶん腕を振ってから去っていく若社長を、元宇宙飛行士はぽつねんと見送ってからとぼとぼと歩き出す。脳裏に浮かぶのは陸塊の奥で見た糸につながれた船。 「あの船は…連邦の急使船だ…細部が違ったけど…」 連邦の船のはずなのに、仇敵である真空蜘蛛の戦闘艦を思わせる艤装が施してあった。

2018-06-30 17:36:49
帽子男 @alkali_acid

「滅ぼすべき侵略的外来種が…連邦の急使船を…解析して…修理してる…?しかも禁止された第十一世代人工知能まで…人工知能が医者?それに子供が動力会社を経営してる…?この街はどうなって…」

2018-06-30 17:38:14
帽子男 @alkali_acid

考え込んでからふっと笑う。そういう自分は、連邦協約に違反して、民権停止になった宇宙飛行士。同胞から切り捨てられ、適切な健康管理を受けられずただ狂い死にするのを待つ罪人だ。妖しさで言えばおっつかつ。

2018-06-30 17:40:04
帽子男 @alkali_acid

どれくらいさまよい歩いたろう。青年はふらつき、立ち止まる。あえいで、ふところから鎮静剤の無針注射器を取り出し、腕に打とうとしてから、取り落とす。 「あっ…」 こんなこと一つまともにできない。 「せっかく…もらったのに…だめ…」 眼をくらませながらかがみこんで手探りする。 「う…」

2018-06-30 17:42:46
帽子男 @alkali_acid

涙がこぼれる。 「ぼくは…なんで…いきてるんだ…こんなになって…」 ようやく注射器に指があたる。つかもうとして、いきなりあらわれた靴が踏み潰す。 「いい女じゃねえか」 「いやこいつオカマだぜ」 「売買春施設から迷子か?」

2018-06-30 17:44:38
帽子男 @alkali_acid

モヒカン頭のちんぴら達だ。陸塊で見かけた連中に似ている。 「あん?こいつとろーんとした目してんぜ」 「ああ…聞いたことある薬の切れた宇宙飛行士はこうなるってよ」 「ぶち犯すには最高らしい」

2018-06-30 17:46:13
帽子男 @alkali_acid

なまりのきつい犯す、という単語を聞いて続々と興奮が背筋を駆け抜ける。だが口だけは抵抗する。 「…やっ…」 「るっせーよ」 腕をつかんでくる。モヒカンの一人が市民登録番号を走査する。 「やっぱそうだ。民権停止だ」 「誰かの所有物じゃねえだろうな」 「誰も登録してねえ」

2018-06-30 17:48:00
帽子男 @alkali_acid

「よーし…オカマ。お前は民権停止の犯罪者だ。モノと同じだ。俺達が所有物として登録してやるよ。いつでも好きなときにやれる肉便器としてなあ!」 「ひゃひゃ!客もとらせようぜ」 「このツラならいい金になる」 青年は震えてなで肩を竦めた。どこかで喜んでいるおのれがうらめしい。

2018-06-30 17:49:40
帽子男 @alkali_acid

ちんぴらが、獲物のつなぎを脱がせようとするうちぎくっとなる。 「…おい…こいつ船元の社長の名刺もってんぞ」 「げっ…」 「馬鹿野郎!びびんな!あのガキの所有物になってねえんだろ?じゃあ見捨てられたのと同じだ!俺等が先に登録しちまえば」

2018-06-30 17:51:03
帽子男 @alkali_acid

モヒカンは名刺を投げ捨てようとする。すると紙とも金属ともつかない札がしゃべりだした。 “はい船元動力です” 「…うお、通話できんのかよ」 「切れ!めんどうになる!切れ」 元宇宙飛行士はわななき、さけんだ。力いっぱい。 「若社長!助けて!」

2018-06-30 17:52:53
帽子男 @alkali_acid

ちんぴらが名刺をひきちぎって、火花を飛び散る切れ端を何度もふみつけると、すぐ向き直った。 「オカマああ!てめえええ!」 「かまわねえ!登録しろ!登録しちまえば」 いきなり轟音がして大気が震える。はっとして振り返ると、陸塊の壁面の一部が吹き飛び、何かが飛び出してくるところだった。

2018-06-30 17:54:50
帽子男 @alkali_acid

「なんだありゃ…」 「小型鉄道だよ!誰も操縦してねえのに勝手に増殖してるクソ機械だ!とうとう陸塊の外に飛び出してきやがったんだ!!」 「でも誰か乗ってるんじゃねえか?」 列車は蛇行しつつ路地に突っ込み、どうにか止まった。扉が一斉に開き、大量の銀の蜘蛛があふれる。

2018-06-30 17:57:22
帽子男 @alkali_acid

「あ?やんのか毛一家とやあばばばば」 高速で動き回る節足の生きものたちが、あっという間に糸でちんぴら達をからめとる。 「うちの名刺をやぶいたのはおまえらか」 列車の運転席から若社長がおりてくる。

2018-06-30 17:58:43
帽子男 @alkali_acid

「いいむほうものっぷりだ。気合はいってる…だがおれにけんかうったのはゆるさん!計画停力五点追加」 「か、かんべんしてくれよぉ」 「おまえうるさいぞ」

2018-06-30 18:00:32