佐藤正美Tweet_20180901_15

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佐藤正美 @satou_masami

「誇張して言えば時代意識などという常識に色目を使いながら、誰が魅力ある作品を書いたか、と言いたい。批評家として穏やかならぬ言辞というなかれ。穏やかならぬ言辞ほど無害なものはない」(小林秀雄、「林房雄の『青年』」)。

2018-09-04 07:41:18
佐藤正美 @satou_masami

「批評家というものは、批評家だけに限らないが、単純な命題を好まぬものだ。(略)好まぬというのはごまかしなのだ。実は恐(こわ)いのだ。命題は単純なほど現実的だしごまかしが利かぬ、そこが恐いのだ」(小林秀雄、「林房雄の『青年』」)。

2018-09-04 07:41:57
佐藤正美 @satou_masami

たとえば、「民主主義は正義か」とか、「愛は美しい」とかいう高級な命題を論じていると、「本質」みたいなものを論じているように錯覚する。本来、命題を論ずるはずのエンジニアでさえ、その罠に陥りやすい──曰く、「事業の要の物は云々」とか、「事業の あるべき姿は云々」と。

2018-09-04 07:44:18
佐藤正美 @satou_masami

テーマの範囲を絞っただけでは不充分なのである、その範囲の中で論じられる「概念」は真偽を験証できる単純な命題として立てられなければ論にならない。私はモデル(の規則)作りを仕事にしてきたので、幸いにも「命題は単純なほど現実的だしごまかしが利かぬ」ということを実感しています。

2018-09-04 07:45:32
佐藤正美 @satou_masami

逆説に響くかもしれないのですが、論理規則(形式言語)から「現実」までの距離は、「概念」から自然言語までの距離ほど遠くはないのです。

2018-09-04 07:46:10
佐藤正美 @satou_masami

「転向」という体験を徹底的に凝視して、その後の人生を再生した人物の一人が亀井勝一郎氏です。彼の作品の多くは私の愛読書です、私は彼の全集を所蔵しています。彼は「文芸批評家」と称されることが多いのですが(小林秀雄氏もそう称されることが多いのですが)、それには収まらない仕事をしました。

2018-09-10 16:11:38
佐藤正美 @satou_masami

小林秀雄氏も亀井勝一郎氏も、「みずからの精神を凝視し続けて、みずからの人生を問い続けた」批評家だと私は思います、だから私は彼らに惹かれる。

2018-09-10 16:12:11
佐藤正美 @satou_masami

勿論、彼らは「芸術」を愛していました。ただ、私は二人の仕事を文学上で眺めているのではなくて、それぞれの個性が人生の中でいかに思考して、いかようにして自らを育て、「文体」を いかに調(ととの)えようとしたのか を知りたいので愛読しています。

2018-09-10 16:12:53
佐藤正美 @satou_masami

小林秀雄氏も亀井勝一郎氏も、颯爽と簡潔にソリューションなどを与えない批評家です。だから、彼らの作品を読むという事は、彼らの求道をいっしょに歩くという事です。二人の作品を読んでいると、いつも、「さて、君は どう思う」と問い返される。

2018-09-10 16:13:25
佐藤正美 @satou_masami

斜にかまえた [ 気を衒った、あるいは気の利いた、あるいは 「様々なる意匠」を纏った ] 意見を披露したがる人たちの中で、「素直な」思いを述べることは「素朴」と侮られて、なかなか相手にされない。

2018-09-10 16:14:02
佐藤正美 @satou_masami

私は息子たちが小さいときに色々な質問をしてくるのを煩わしいなあと感じたことが多かったのですが──たとえば、「どうして雪が降るの」──、これらの質問は事態の「しくみ」を説明しなければならないので うやむやに言い抜けができない、だから煩わしいと私は思ったのでしょうね。

2018-09-10 16:14:33
佐藤正美 @satou_masami

そして、我々は「大人」になって、そういう「素直な」眼を曇らしてしまったのでしょうね。しかし、現実的事態を観て魂消(たまげ)て 「事態が そのように現存するのは、いかなる理由(あるいは、原因)か」 と考える、その感嘆・思考こそが現実的事態を再構成する、「大人」の特性ではないかしら。

2018-09-10 16:15:06
佐藤正美 @satou_masami

子どもは、事態を観て素朴に感嘆しても、事態が現存する理由を考えない [ 考えることができない ]。逆に、そういう感嘆を、そして感嘆に促される思考を喪った「大人」は私には薄気味悪い生物にように思われます。

2018-09-10 16:15:42
佐藤正美 @satou_masami

たとえば、温和しい、willing な [ 指示されるのを待っている・御しやすい優等生な ] 「大人」の のっぺりとした顔顔顔が並ぶ集団を想像してみて下さい。身の毛が弥立(よだ)つでしょう。

2018-09-10 16:16:16
佐藤正美 @satou_masami

感嘆と思考は、もし それらが正しく作用していれば溌剌とした──「いささかのケチ臭いものも、吝(しみ)ったれたものも、小(こ)ざかしいものも、ない」──相貌を作ると私は信じています。そして、私は、溌剌とした顔を持っていたいと切に希(ねが)っています。

2018-09-10 16:17:14