2018年京都SFフェスティバル 飛浩隆先生のレポートツイート その4

飛浩隆先生による詳細な京フェスレポートその4です。ゲンロン創作講座受講生の作品へのアドバイスを中心とした創作論。からなんと『零號琴』第五部をめぐる作者と編集者との攻防へ。そして実は! これを無料で読めるのはめちゃくちゃすごいことなんじゃないですか、もしかして。 『零號琴』は10月18日発売です。 その1はこちら→https://togetter.com/li/1274530 その2はこちら→https://togetter.com/li/1275697 続きを読む
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飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

そして、無様な部分だと自分で分かっていても「いや、ここは消したくない」と思ったんなら、そこは残すべきだ、と。↓

2018-10-15 23:05:47
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

本日はここまで。読み返してみて、いやー穴に入りたい気分だが、たしかにこんなことを話したんだから仕方がない。あと少しだけ続きます。もうギャラリーもいないと思うがもしよろしければ燃料がわりの「いいね」を。(つづく)

2018-10-15 23:07:16
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

(もう今夜で最後にしよう。。)昨夜の話をくりかえすと、編集者が指摘した箇所は見直そう。ただし修正提案は真に受けるな。そして別の方法で修正しよう。なぜなら編集者の提示する修正素材は「いまある原稿」からしかひねり出せないが、作者の中には、手付かずの可能性があるからだ、ということ。↓

2018-10-16 20:48:42
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

そして、編集者には、あまり役になっていない(効果を発揮していない)イボのような細部があったら、そこをむやみに潰さないでほしいと言っておく。未来の大成の芽がそこにあるかもしれない。そして(こっちの方がもっとこわいが)そこを引っこ抜いたら、作品全体ががらがらと崩れ落ちる可能性も ↓

2018-10-16 20:53:44
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

あるのだ。さて、ここからは話を変えて応用編。『零號琴』第5部をめぐる、飛と担当編集(塩澤さん)の攻防である。第5部はこの大長編の最終章である(エピローグをのぞく)。もともとここは大変な難産で、初稿というか第一納品物と言うか、そこへたどり着くのに死ぬるような思いをした。↓

2018-10-16 20:56:25
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

なにしろこの小説のクライマックス(第4部、無番、第5部)は単行本210ページにわたってノンストップであり、阿形渓や安奈カスキ級の化け物キャラが十人以上、それぞれの思惑を持って〈大假劇〉をめぐって動きまわり、オペラのごとく、独唱、重唱、三重唱、アンサンブル、巨大オーケストラや合唱団↓

2018-10-16 21:00:43
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

の介入、あっとのけぞるカタストロフと大沈黙、そこで新規まき直してそれまでの音楽素材をまったく別の文脈に組み替えての再驀進……まだ続くのだが、登場人物ひとりひとりにこれ以外にないという退場を与えていく、というもので、当たり前だが、なんとか改稿を終えても、不完全なのであった。↓

2018-10-16 21:04:23
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

塩澤さんは、第5部の展開が「無番」のパートから「先に」言っていないことが不満だったのだが、最初のオーダーでは第5部にもっと激烈なカタストロフが必要という意見を出された。俺はその提案を呑んだ。短期間でふらふらになりつつ、第5部の三分の一以上を書き直したと思う。このバージョンは↓

2018-10-16 21:07:34
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

とりあえずアクセプトされ刊行日が10月に決まった。やれ安心と別の仕事をしながら、さみだれ式に届くゲラを見守っていた。そして8月24日(繰り返す、8月24日である)第5部以降のゲラが届く。ここで上記の不満の正体が判明する。かれの不満を端的に言い換えれば、第5部は、「無番」までを ↓

2018-10-16 21:11:51
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

受けた消化試合にすぎない、というものだったのだろう(いま俺が思いついた比喩です)。もっと先へなぜ行かない、と言われたわけだ。俺はカンカンになってこう書き送った。↓

2018-10-16 21:13:56
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

「第5部は登場人物の葛藤と解消が毛細血管のようにからまりあっており、そう簡単に大手術というわけにいきません。 あらたな結末を構築し、そこから第5部ぜんたいを再構築する必要があります。 (つまり作業的には一年前に戻ることになります。) しつこく改稿していたのは、大假劇をその ↓

2018-10-16 21:14:23
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

「登場人物の葛藤と解決」と一体のものとして描き出すことを目指していたためで、「その先」を見せようとするあまり、そこをないがしろにすることは絶対にできませんので。」そして ↓

2018-10-16 21:14:46
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

「10月刊行は見直しが必要かもしれません。」その上でゲラに書き込まれていた修正案への反論を何回かにわけて書き送った(ところどころ脅したり賺したり、譲歩をちらつかせたりして)。その3通目が25日のあさ9時。正直に書くがあちらからの提案は、チャラ臭くてまったく検討に値しないものだった。↓

2018-10-16 21:22:41
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

申し訳ないことだったが必要以上に強い調子のメールだったと思う。こちらとしてもよほどのエネルギーがないと書き直しはできない。打開策を見出すための瞬間的パワーを稼ぎ出すには、怒るしかなかったのだ。そして……↓

2018-10-16 21:25:42
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

俺もうすうす……いやはっきり気づいてはいたのだ。塩澤さんの指摘とは別のところで「逃げ」を打っていたことを。なんとなくもっともらしいベールをかぶせて誤魔化していたことを。「その先」を見せるにはこの人物の尻を叩くしかないのだということを……。そのことを改めて意識したのと ↓

2018-10-16 21:28:36
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

ほぼ同時に答えは見つかった。その人物の移動ルートを変えて、寄り道させる。そこであるイベントを起こす。——そうか、これか。これでいいわ。

2018-10-16 21:30:02
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

逆提案のメールを送ったのが、その夜9時半頃である。その提案に賛意が返ってきて、第五部の(一部ほかのパートにもわたる)リテイクを送ったのは、9月4日の未明であった。ふつうならこれでうるわしいハッピーエンドになるところなのだが……まだ編集者はしつこかった。いやほんと今回はしぶとかった↓

2018-10-16 21:33:15
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

まあここで、その場面まで書くことはないだろう。先方の指示・要請にたいして、ほぼ逆ギレとしか読めない反論(笑)を書き、修正には応じないことを明言して、そこで改稿は(ほぼ)フィックスした。おそらく俺の涙目が目に浮かんだのだろう……そんなことで手をゆるめる相手ではないが……。↓

2018-10-16 21:37:56
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

というわけで、麦原はじめゲンロンの皆さんに話した内容は、俺のこの、目から血の出るような苦労から感じたことそのままである。前にも書いたとおり、老害の、鼻につく苦労話そのものだ。いやほんともうしわけありませんでした。↓

2018-10-16 21:40:38
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

書店で見かけられましたらどうかお手にとってご覧ください。600ページ超のぶ厚さの割には「軽い」と感じられるはず。まあ電車の中で片手で、というわけにはまいりませんが、「黒と金」だしぶ厚いしで、書店で見失うことも少ないのではと思うです。↓

2018-10-16 21:46:44
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

と、ここまで読んだあなたはお気付きであろう。京フェスレポートのようにはじまったこのスレッドが、いつの間にか、あさって発売の(そして書店への搬入は明日なのです)血と涙と鼻水の結晶『零號琴』のプロモーションになっていたことに! ↓

2018-10-16 21:44:02
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

値段はたしかに高いですが……まあ……ぶあついので……ボリュームたっぷりですので……。↓

2018-10-16 21:48:09
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

話を京フェスに戻して、ゲンロンの皆様に(ほんとすみません)えんえん管を巻きながら午前3時まで。いやなんとなくその場を去り難く……。あ、言いわすれたけど12月刊『うつくしい繭』(櫻木みわ、講談社)の標題作だけ、合宿企画のために読ませてもらってましたけど(SF味は薄いのですが)↓

2018-10-16 21:51:45
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

よかったです。傑作かどうかは知らないけど(そんなことどうだっていいので)この作者が、改稿にあたりまさに「自分の中から出てきたものだけで」勝負したことはわかった。あと文章。「前の文章に片足を残しつつ、次の文章にもう一方の足を掛ける」のお手本みたい。↓

2018-10-16 21:55:26
飛浩隆 TOBI Hirotaka @Anna_Kaski

さすがにふらふらになって大広間を立ち去りましたが(しかしこの時点で大森さんはまだそこにいて、翌朝6時半の新幹線で京都を発っていたという)、寝たんだか寝てないんだかよくわかんない状態で、翌朝7時には布団を畳んだ。そのあとクロージングだの朝食だの(小川一水さんとごいっしょ)↓

2018-10-16 21:59:14