海洋群の衣笠(プロローグ)

取り敢えずまとめておきます
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同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

私は艦娘(オペレーター)※1だ。

2018-10-19 20:56:04
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

しかも重巡洋艦娘「衣笠」を拝命している。

2018-10-19 20:56:23
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

だというのに艦隊の先頭を切って敵の戦列に突撃することもなければ、母艦に抱えられて敵地に進発することも、航空機から投下されることもない。最後の以外は訓練を受けたが、相手の動きがどうであれ、実際に戦場で主砲を撃ったことは一度もない。

2018-10-19 20:56:44
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

先日遂に戦闘部隊の配置となって、出撃も何度かしたが、結局一度も撃っていない。撃つ砲弾がなかったからだ。

2018-10-19 20:57:02
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

戦争に勝っているとは言っても、連合艦隊以外の懐事情なんてそんなものだった。

2018-10-19 20:57:26
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

それでも艦娘(オペレーター)であり、戦闘員(ファイター)だ。

2018-10-19 20:57:42
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

海軍に入隊していくらかした頃、私は連続して三回目の非戦闘部隊への配属を迫られていた。そこで、当時では唯一女性が志願できた戦闘部隊「連合艦隊娘(カンムス)」への異動願いを出した。

2018-10-19 21:57:16
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

当時の上官、■■中尉は私をジロリと見た。彼女は比較的成功した女性隊員で、他の殆どの女性隊員と同じ信念を持っていた。

2018-10-19 21:57:37
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「■■さん、本当にいいのですか?」 部下の面倒見がよく、発言力も強い彼女は、望みさえすればおよそあらゆる配置を斡旋してくれる。 「出世は出来なくなるわよ」

2018-10-19 21:58:31
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

私は、はなから出世なんて望んでいなかった。

2018-10-19 21:58:48
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

出世出来るにこしたことはないが、それ以上に戦闘部隊への配置を望んでいたのだ。しかしそれは本来、あまりにも望みの薄い希望だった。

2018-10-19 21:59:33
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

女性の採用に積極的で、当時としては進歩的と言われた海軍ですら、女性を戦闘部隊に送り込むことは思いもよらなかったのだ。

2018-10-19 21:59:55
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

女性の能力は、後方でこそ発揮される。出世街道の最も強力な道は、優れた指揮官の副官。外れは事務官、いや受付か。どれ程探したところで、前線の文字はない。

2018-10-19 22:03:59
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

そんな中で現れた艦娘と言う選択肢は、私にとっては唯一の選択肢だった。

2018-10-19 22:04:21
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「■■さん」 あの頃の女性隊員の関係は、階級を抜きにして連帯感が強かった。序列に従った明確な上下関係はあったが、普段から相手を階級や役職ではなく、さん付けで呼んだ。それは上官に対してもだ。

2018-10-19 22:04:53
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

「私はただただ戦争に参加したいんです。自分の役割を果たしたいんです」

2018-10-19 22:05:15
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

入隊した頃からなんとなく、パールハーバー※2の後は強く感じていたことだった。

2018-10-19 22:05:47
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

あの日曜日、下宿で惰眠を貪っていた私は、警急呼集で大家さんに叩き起こされた。制度上は存在したが、訓練以外で実際に行われたことなどない。※3

2018-10-19 22:06:08
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

港に帰って門をくぐるや否や、当直士官が駆け寄ってきて「事件のことを聞いたか」と尋ねてきた。どうやらパールハーバーが攻撃されたらしい。

2018-10-19 22:06:42
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

最初はあまり真剣に考えなかった。攻撃とは言っても、一体誰が攻撃すると言うのか。当時の合衆国は正しい意味で太平洋の支配者で、そもそも彼ら合衆国海軍に一矢報いるほどの規模(対抗など、この世の何者にも不可能な筈だった)の海軍を組織していたのは帝国だけだった。

2018-10-19 22:07:15
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

じゃあ帝国が合衆国に攻撃を? まったくあり得ない話だった。

2018-10-19 22:07:25
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

だが隊舎に帰ると、上官や同僚が当直室に集結してラジオを囲み、ラジオ・ホノルルの中継放送※4に聞き入っていた。

2018-10-19 22:07:50
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

雑音がひどい中継放送では、何度も同じ文言が繰り返されていた。「これは訓練ではありません!これは訓練ではありません!」。バックではキーンと言う聞いたことのない高音や、ぶうぶういう羽虫のような雑音が騒がしく、それに何か爆発する音やガタガタと機関銃を撃つような音が混じっていた。

2018-10-19 22:08:32
同志雪の人@活動低下 @yuki_8492

爆発する音がどんどん連続して、どんどん大きくなり、ひときわ大きな雑音の後まったく何も聞こえなくなった。それまでと違う空電そのものの雑音が聞こえるようになって、悪夢のような現実が襲いかかって来ていることを理解し始めていた。正確に何が起こったのか理解したのは、公式発表があってからだ。

2018-10-19 22:08:42