ストレイトロード:ルート140(37周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビが毎日お届けしている、掌編という名の習作。今回は1801~1850。 6年目に突入しました。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1813。頭脳。

2018-09-07 19:17:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

探していた男が向こうから話しかけてきた。情報を持っているとの話が本当なら藍を警戒してもおかしくないのに、むしろ歓迎する笑顔で。しかし世間話が長々と続くばかりで本題に入る気配がない。藍は相槌を入れつつ口を挟む隙を窺っていたようだが、不意に話題を変えられ、つい怒りを露にしてしまった。

2018-09-08 20:22:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1814。世間話。

2018-09-08 20:22:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

動かない信号機の下で停車した私達の前を集団の行進が横切った。足並みを揃えて大通りを歩く人々は手に楽器を構えながら一切演奏せず、抗議の文言も叫ばず看板も掲げない。足音のリズムだけで何かを訴えようとしているらしい。「これも演奏の一環だったりして」藍が助手席の足元でリズムを取り始めた。

2018-09-09 21:39:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1815。揃える。

2018-09-09 21:39:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「わたしの保護なんてどうせ建前だから」荒野に建つ研究所の新人職員が、定期的に訪れる藍にその心境を尋ねた。研究対象として扱われることなど承知の上だと答える顔に我慢や躊躇はない。「でもそれはきっとどこに行っても一緒」「ここと組んだ理由は?」「内緒」少女は建前より舌を出すことを選んだ。

2018-09-10 19:49:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1816。建前。

2018-09-10 19:49:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

人々は恐ろしい噂ほど盛んに伝えていく。故に風の魔女は情報網が生き残っている地域ほど知名度が高く、しかも閉鎖的な集団には悪い話しか伝わらないらしい。「尾ヒレのつき方にも特徴があって面白いのよ」当事者である藍はただ笑う。「風が吹いたら急に話をやめるとかね。聞き耳なんて立ててないのに」

2018-09-11 20:05:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1817。知名度。

2018-09-11 20:05:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「そんなにあの組織に入りたいの?」「私は一生かけてマザーに尽くすつもりだけど?」深紅の慈善家を敬愛する女は真剣な顔で藍の問いに答えた。尊敬する人が口説き落とせない子供を説得して手土産にすべく訪ねてきたらしい。「どうせなら犯罪まがいを止める方向に尽くしてよ」藍の呟きは当然届かない。

2018-09-12 18:56:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1818。尽くす。

2018-09-12 18:56:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車が向かう先はできれば二度と近寄りたくなかった施設だ。しかし秘密の一端を握る同乗者が行けと言うなら私は従うしかない。「着いたら上着の中に入ってる食べ物を渡してね」「は?」「紹介するんだから、手数料」口を割らせたい藍が楽しそうに要求する。「それとも食べられないもので払ってくれる?」

2018-09-13 19:06:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1819。手数料。

2018-09-13 19:06:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

会場周辺でいくら厳戒態勢を見せつけたところで、肝心の大会は飛び入り自由だ。熱気の渦に突き進む若者達の勢いに警備が追いつかない。予告状の主もそこにいるのか。「ここにいては犯人を見つけても捕まえられないのでは」「作戦なら立ててるから大丈夫」藍は私の肩に足を掛けて座ったまま胸を張った。

2018-09-14 19:34:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1820。飛び入り。

2018-09-14 19:34:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

巨竜退治に名乗りを上げた人々は性格も職業も個性的だった。ある意味では予想通り。しかも藍以外はどこかで話を聞きつけ自主的に集まった面々だという。「こんな置いてきぼりは久しぶりね」盛り上がる話についていけないと藍がこぼす。奉仕の精神も時には名誉や金銭に匹敵する欲の源になるのだろうか。

2018-09-15 19:08:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1821。名乗り。

2018-09-15 19:08:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「買った時は似合うと思ったのに」新しいドレスを持った藍が鏡像を睨む。店で同じポーズを取った日は確か上機嫌だったが。「こっち来て。後ろに立って」突然私に指示が来て、立ち位置を細かく指定された。鏡を見ると、私の身体が窓際の夕日を隠していた。色合いが変化したドレスを見た藍は満足そうだ。

2018-09-16 19:14:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1822。似合う。

2018-09-16 19:14:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達はいつしか本来走るべき道を大きく外れ、天然の迷路を彷徨っていた。脱出後に迷い込んだ経緯が判り、仕掛け人の見事な手練に舌を巻いた。「何したらこんなの思いつくの」「かなりの手練に目をつけられたようです」強い風が進むべき方向を示す。その手練は誰もが認めるのに、何が気に入らないのか。

2018-09-17 19:09:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1823。手練(てだれ/しゅれん/てれん)。 それぞれが3つの読み方のどれで、どの意味か分かりますか?

2018-09-17 19:09:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

くじ引きで藍が狙っていた景品は秘密と言われたが、子供らしくない大金を注ぎ込んで手にした品々とは違うのだろう。戦利品全部を抱えたまま催しの前を離れない。「誰もあれを引かないなんてことがあれば、いくらでもできることあるでしょ?」幸運な子供が現れるまで粘るつもりだと背中が宣言していた。

2018-09-18 19:46:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1824。粘る。

2018-09-18 19:46:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

カフェの軒下に藍を残し、弱い雨の中を一人走った。点検を終えた車を引き取り、濡れた頭を拭う間も惜しんで戻ると、軒下に少女の姿はなかった。その位置には水溜まりだけが残っている。「一分でも遅れたらもう乗らないから」宣言する厳しい顔を思い出したその時、紙袋を抱えた藍がカフェから出てきた。

2018-09-19 19:33:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1825。軒下。 365×5=1825。

2018-09-19 19:33:57
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