けいおん!英語SS翻訳「愛が孵化する冬」

R-18律澪ラブラブなけいおん!英語SS翻訳です。修訂してpixivにアップしたので、そちらでお読みください。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10333879
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Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

だけど澪は怖がりだからな、と律は苦笑した。だから、昨晩の事は何も間違っちゃいないって澪に納得させるのは私の役目って事。 律はあれこれ考えながら、フライパンのパンケーキをひっくり返した。 こうして二人、つながったんだもん、引き返せるわけないって、と律は心を決めた。 97

2018-11-02 23:22:13
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

ほかほかパンケーキの皿を二つ運んで、律は居間に入った。澪は膝を抱えて顔を真っ赤にしたまま座っていた。 澪も全部思い出したみたいだな。 ベーシスト少女は黒髪の陰に目を隠していた。 98

2018-11-02 23:41:11
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「さ、どうぞ」 律が皿を差し出すと、澪は無言で手を伸ばし、焼きたてのパンケーキを受け取った。律は澪の横に腰掛けたが、少しだけ間を置いた。澪がゆっくりと物事への意識を変えるのにベストなやり方を、律は熟知していた。 99

2018-11-03 06:32:52
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

二人は無言のまま朝食をとったが、律は何度もこのベーシスト少女の視線を感じた。だが律が澪に顔を向けると、澪は目をそらしてしまう。律もだんだん苛立っては来ていた。 100

2018-11-03 06:36:31
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「大丈夫か、澪」 「さ、昨晩の事…」 澪がおずおずと口を開いた。 「も、もし律がイヤだったのに、あんなこと…り、律は平気なのか?」 律はきまり悪そうに苦笑した。 「昨晩の事は、ちょっと後悔してる。でも…」 「ご、ごめんっ、律っ、あの事は忘れ…」 101

2018-11-03 06:41:54
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「でもっ、後悔してるのは、酔った勢いだったって事。そんなに悲しそうな顔するなって。あ、あたしはさっ、実を言えば、二人でしちゃったの、嬉しい。今までああいう事を想像したことなかったって言えば嘘だし」 律はずっと赤面しつつ肩をすくめた。 「それもさ、一回や二回じゃないんだぞ」102

2018-11-03 06:46:49
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「それは、律だけじゃないから…」 そう呟いて、澪は律から目をそらした。部屋の空気が、さっきまでの気まずさから、だんだん明るくなってきた。二人とも、言葉にはしにくかったが、実は同じ想いだったのだ。 103

2018-11-03 06:50:47
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

律は窓の外を見上げた。雪が深々と降っていた。昨夜二人が家に着いた後から降り出したのだが、既にすっかり積もっている。パウダースノーが律の視界全てを包んでいた。 律は頭の中をまとめると、澪に向き直った。 104

2018-11-03 06:54:36
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「あのさ、も、もう、ぶっちゃけてもいいよねっ?あ、あたし、澪のことが好きなんだ。たぶん、前からずっと、好きだったんだ」 あっという間に、澪の目に涙が溢れた。澪はうつむいた。 「あ、あのさ、澪、泣くなってばっ、そんなつもりじゃな…」 105

2018-11-03 07:01:53
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「泣いてなんかないぞ、律。私、嬉しいんだ、律がとうとうそう言ってくれるなんて、思ってもなかった」 「じゃあ澪も同じように言ってくれてもいいんじゃないの?」 律は腕組みしてむくれたが、赤面しっぱなしの顔は本音を隠しきれない。 106

2018-11-03 07:07:14
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

澪は律に身を寄せて、ドラマー少女の肩に頭を預けた。そしてまだ少し震える両手で、ぎこちなく律の手をつかんだ。 「私も、律が好き」 そう言うと、一呼吸置いて澪が呻いた。 「頭が痛くて死にそう」 「あたしも」 だが律は笑顔だった。両想いの告白の後で気分が悪くなるわけがない。 107

2018-11-03 07:16:48
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

外の雪は時と共にだんだん収まってきた。律と澪は長椅子の上で動こうともしなかった。一枚の毛布にくるまって、指を絡ませ身体を密着させて、互いの温もりを分かち合っていた。二人の間にもう言葉は全然要らなかった。過去に二人を苦しめていた言葉にならない不安など、もはや無いのだから。 108

2018-11-03 07:25:16
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「あ、あのさ、澪はいつからあたしのことが好きだった?」 付けっぱなしだったテレビムービーのCMブレイクの間に、律が肝心なところを突いてきた。 「いつだったのか、あの時ってはっきりはわからないけど」 澪は記憶を整理した。 109

2018-11-03 10:58:54
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「律はいつだって私の傍にいてくれた…。だから…その…私が書いた詞は、みんな律のことだったわけで…」 「そうなの?!あんな詞をどうやって書くのかと思ってたんだ。だって澪が誰かに恋をした事なんて無いと思ってたし。だからああいう恋の歌はみんな想像なんだろうなって」 110

2018-11-03 11:08:54
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「あんなこと、律以外に言えるわけ無いだろ!」 「ファンの前で歌ってたじゃん?」 律がからかう。 「ずっと律のために歌ってたんだ!」 澪はコツンと律の頭を小突いた。 ドラマー少女は笑うしかなかった。 111

2018-11-03 11:15:16
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

一日も半ばを過ぎ、澪がダメ押しの問いかけをした。 「これって、私たち、デートしてる、ってことなのかな?」 律も問いかけで答えた。 「だとしたら、キスぐらいもうちょっとしたって良いんじゃない?」 「律っ!」 真っ赤な顔を隠すように澪はそっぽを向いた。 112

2018-11-03 11:36:04
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

そう言われたドラマー少女は、ベーシスト少女の肩に片手を回し、グッと抱き寄せた。それが百点満点の答えだった。 113

2018-11-03 11:39:50
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

雪は時と共に次第に収まって、ほぼ止みかけていたが、二人とも出かける気力は残っていなかった。114

2018-11-03 11:53:27
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

律が「ランチはどう?」とか澪が「アイススケートに行こうか?」とか、互いにあれこれとデートのアイデアを提案はしたが、雪の日の気怠さと、二日酔いの頭痛がずっと残っていたせいで、結局二人はカウチで毛布にくるまってばかりだった。だがお互いの温もりと心地よさに、何の不満もなかった。 115

2018-11-03 11:55:39
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

夕方が近づき、重苦しい雪雲も次第に地平線の彼方に去り、空が淡い菫色とオレンジ色に染まった頃、ケータイのブザー音が、半分眠りかけていた律の目を覚まさせた。ムギからのテキストメッセージだった。 ムギ『1時間後にみんなで公園に集まるの。律ちゃんと澪ちゃんも一緒に遊びましょ』 116

2018-11-03 12:15:27
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

律が眠っている澪の肩をそっと揺さぶった。 「おーい、みんなに会いに行かないか?」 澪は律の温もりからしぶしぶ身を起こし、伸びをした。 「まあ、外の冷たい空気で頭をスッキリさせるのも良いかもな」と澪は苦笑した。 117

2018-11-03 18:19:09
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

二人はスウェットの上下にコートと帽子とマフラーという重装備をして、まずは幸いなことに家から公園に行く道の途中にあるカフェに直行した。熱いコーヒーはこの寒空の下で間違いなく最高の助けになるだろう。 118

2018-11-03 18:29:24
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

カフェはお洒落な木造の羽目板と家具で飾られていて、低い天井からの暖かな照明が心安らぐ輝きを放ち、優しく木造の室内を照らし出していた。 119

2018-11-03 18:33:03
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

ジョン・コルトレーンの「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」が最高の音質で店内を満たし、あちこちのテーブルに座った客たちが交わす静かな会話を引き立てていた。 120

2018-11-03 18:36:52
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

カフェの大きな窓から、外の美しい冬景色が見える。雪はまだ人や車に踏み荒らされずに綺麗に積もっていた。 背の高いテーブルの両サイドに向かい合って座り、二人はコーヒーカップを手に取った。 121

2018-11-03 18:41:21
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