「フラグメンツ・オブ・エピック:ディープ・オーダー」「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#3

深海騎士団叙事詩断片第2章 カラテと殺戮の嵐が吹き荒れる そして、彷徨える神が深海に降臨する…
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「分かってくれないかな」ライオンハートは諭すように語りかける。「私がこの世で最も憎むものは、友達が、同胞の深海棲艦が困っていることだ。それがどんなものであれ、解決できるものは解決したい。それが私の願いだ」ライオンハートは優しげに手を伸ばした。「分かってくれないか、な?」 23

2018-11-22 22:47:15
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「お断りだ、色男」今度はネクロマンサーが即答した。「貴様、大方あの白い木偶の坊の仲間か。下らん話だ。何故私があのような木っ端のことを気にかけねばならんのだ?」「彼女は。ナバルだ」ライオンハートは怒りを込めて言った。「決して木偶の坊や木っ端ではない」 24

2018-11-22 22:52:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ハッ!貴様にとってはそうでも、私にとってはそうではない!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」吹雪がカラテを叩きこむ。ネクロマンサーはバックフリップ回避で事なきを得る。「吹雪=サン…!」ライオンハートは非難するように吹雪を見た。吹雪は視線を合わせず、返す。「これ以上は無意味です」 25

2018-11-22 22:57:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「だが!」「既に互いのエゴは示されました。これ以上の言葉は、無粋です」「…」ライオンハートは歯噛みし、下を向いた。「成程、貴様は話が早そうだな。艦娘?」「でしょうね」吹雪はネクロマンサーを睨みつけた。「私は、理不尽を、貴女を殺しに来たのだから」 26

2018-11-22 23:03:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

吹雪はカラテを構えた。恐るべき威圧アトモスフィアが空気を軋ませる。ネクロマンサーは死神を恐れた。だが不敵に笑った。「ハハハ!下らん!」そして右手の人差し指と中指を立て、一転へとカラテを収束させる!「貴様がどれほどのカラテを誇ろうが、我が無敵のジツに叶う事はない!」 27

2018-11-22 23:07:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

吹雪は突き進んだ。ネクロマンサーは右手で9回空を切り、恐るべき秘密のチャントを唱える!「リンピオトーシ!カイジンリッツァイゼン!カァーツ!」「ヌ!?」その時、吹雪の艦娘第六感が稲妻めいて全身に迸り、主観時間を泥めいて鈍化させる。 28

2018-11-22 23:15:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

吹雪の足元の海面が、隆起し始めている。何かが居る。((召喚魔法の類か?))吹雪は瞬時に状況判断。このまま前進!加速する!((何かをする前に殺す!))主観時間が元へと戻る。吹雪はチョップを振りかぶった!「イヤーッ!」 29

2018-11-22 23:19:29
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ガギン!鈍い鉄の音が響いた。吹雪の目の前にはネクロマンサーはいない。白と黒で斑な腕が、ネクロマンサーを守っていた。「これは…」「イヤーッ」「グワーッ!」巨大な腕が吹雪に叩きつけられた。吹雪は吹き飛び、空中でウケミを取って着水する。 30

2018-11-22 23:23:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

吹雪とライオンハートはそれを見た。ネクロマンサーを守るように海から現れた者達。それらは皆一様に白と黒の斑模様であり、巨人めいており、無数の深海棲艦が融合しているように見えた。「ハァーハッハッハッハッ!これこそがネクロマンス・ジツの極地、屍の複合巨兵…フレッシュゴーレム也!」 31

2018-11-22 23:27:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ネクロマンサーはフレッシュゴーレムの肩に乗り、高笑いを続ける。「貴女…死者になんてことを!」吹雪は動揺を露わに叫んだ。「何とでも言うがいい。これが私のジツ。世界を塗り替える私の在り方!」海から更なるフレッシュゴーレムが浮上する。ネクロマンサーは舌なめずりをして笑い続ける。 32

2018-11-22 23:32:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「これは…」ライオンハートは一筋汗を流しながら言った。「想定より厳しい戦いになりそうだな…」 33

2018-11-22 23:33:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

同時刻、暗い海中を突き進む二つの影があった。ナバルとリカルドである。((こっち))ナバルはリカルドに声なき声を投げかけた。これこそナバルの持つエコーロケーション・ジツ。言葉でなく意志、コトダマにて意志を投げかけるジツである。リカルドは首を縦に振り、ナバルの後を辿って泳ぎ続ける。 35

2018-11-22 23:39:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((作戦はこうだ))リカルドは過去の己の言葉をニューロン内で反芻する。((まずこの中で戦闘力の高いライオンハート=サンとウチの吹雪で敵戦力を漸減する。これが第一段階。そうして敵の本体…最上ならネクロマンサー当人を引っ張り出す。これが第二段階)) 36

2018-11-22 23:44:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((第三段階は?))((いい質問だライオンハート=サン。奴さんの目をお前さんらのカラテで釘付けにした後、このナバルの嬢ちゃんが「お友達」を逃がす。ネクロマンサーってのがどういう奴かは知らないが、標的を見失ってまだ戦うような奴なら、始末する。そうでないなら逃がしちまってもいい)) 37

2018-11-22 23:46:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((これが、第三段階だ))((…いいのか?深海棲艦は、君達人類の敵ではないのか?))((この場限りの話さ。流石にネクロマンサーが逃げた先で俺の知らん奴に殺されるところまでは保証できんよ。これは、飽く迄お前さんの納得の為の配慮だ))((…そうか)) 38

2018-11-22 23:51:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((いた。あの子だ))ナバルのエコーロケーションが、リカルドの意識を現実へと引き戻す。リカルドの目に、白い光が写り込んだ。同時に、魂をヤスリ掛けするかのような猛烈な威圧感も。((噫))リカルドは心の中で感嘆の声を上げた。((やはり、か)) 39

2018-11-22 23:55:56
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ナバルはそれへと嬉しそうに近づいていく。リカルドは畏敬に胸を打たれ、それを呆然と見上げていた……其れは、巨いなる者。伝承に曰く、海に浮かぶ新月。また別の伝承に曰く、深海に棲む光る巨人。また或いは、深海をさまよう神。 40

2018-11-23 00:01:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドはそれを知っていた。まだ彼が故郷ロックラックで狩人をしていた頃、文献資料を読んだことがあった。そして、偉大なる彼の者の名もまた、そのニューロンに刻まれていた。リカルドは畏敬を以て、その名を呼んだ。((『大海龍』ナバルデウス)) 41

2018-11-23 00:03:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ナバルは大海龍へとエコロケーションを投げかける。((大丈夫?君を虐める悪い奴らは追い払ったよ))大海龍はナバルを一瞥した。その眼は、青紫色の霞に覆われていた。((あれ…?))「GRAAAAA!」「ンアーッ!」突如、大海龍が巨木めいた角を振り回す!油断したナバルは成す術なく吹き飛ばされる! 42

2018-11-23 00:07:56
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((ナバル=サン!?))リカルドは困惑した。急に、背負った自分の得物が重く感じた。血が、予感に湧き立とうとしていた。何の?問うまでもない。リカルド自身の望みに。すなわち狩猟に。「GRAAAAAAAH!」ナバルデウスが咆哮した。その全身を、青紫色に光らせながら! 43

2018-11-23 00:10:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#3 おわり #4 へ続く

2018-11-23 00:10:29