フリージング・フジサン #9
……「イヤーッ!」「アババーッ!」ヒダリの頭部は溶けながら吹き飛んだ。「サヨナラ!」爆発四散!スーサイドのザンシンはほんの一瞬だ。彼はシンウインターに向き直った。己の仇に。 23
2018-11-14 23:03:40「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとシンウインターは今は足を止めての激烈な攻撃応酬を開始していた。ヌンチャクの黒炎はオーロラを削り取り、強引なカラテが畳みかけ、通常のカラテ攻撃に対して今や無敵である筈のシンウインターを押し続けていた。 24
2018-11-14 23:08:31「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに打撃が通った。シンウインターは唸り、拳を固めて殴り返した。「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクの鎖で拳を受けたが、守りを貫いた打撃が彼を後ろへ弾いた。「ドグサレッガ……」シンウインターはしかめた顔に憎しみを溢れさせていた。25
2018-11-14 23:11:40ニンジャスレイヤーは数度のヌンチャク・ワークを行い、再びシンウインターに向かっていく。彼はシンウインターをこのまま叩き潰す決断を固めている。オーロラの守りがあるならば、それを剥がす。そして殺す。そこにシンウインターのカラテの真価発揮の瞬間など介在させはしない。 26
2018-11-14 23:15:17リアルニンジャ?何程のものか。今のニンジャスレイヤーには為すべき事がある。このニンジャを殺し、サツガイを追う。シンウインターが無駄な虚言を吐いた可能性はゼロだ。ゾーイはサツガイに与えられた。ゾーイ。サツガイ。どちらもそれぞれに今の彼のイクサの目的そのものだ。 27
2018-11-14 23:18:57シンウインターのオーロラの守りは無敵だ。だが今のニンジャスレイヤーならば剥がす事ができる。剥がされた後、再び守りの力は無尽蔵に充填されるが、満足な状態となるまでに多少の時間を要する。1秒かそこらの時間がある。その時間の中で、何度でもカラテを叩き込む。そして殺す。 28
2018-11-14 23:23:05一方、スーサイドは再びシンウインターに向かってゆくニンジャスレイヤーを目で追いながら、己も近づいてゆく。誰がシンウインターに手を下そうが、どうでもいい。死を与えられればそれでよい。奴が殺るならばそれでよい。だが、彼のニンジャ第六感は胸騒ぎを呼び起こしている。 29
2018-11-14 23:26:40ニンジャスレイヤーはヌンチャクを奮い……叩きつける!「イヤーッ!」「グワーッ!」ヌンチャクはシンウインターの守りを破り、左肩を割り、鎖骨を破壊し、深く食い込んだ!もはやオーロラの守りは無し!否!オーロラの守りが、無い!ニンジャスレイヤーは目を見開く! 30
2018-11-14 23:28:49シンウインターの右手は半身の後ろに隠されていた。その手が今、閃いた。彼の手には多色のドス・ダガーが握られていた。ニンジャスレイヤーは防ごうとした。ドス・ダガーはオーロラで出来ていたが、その密度はあまりに高く、鋼と変わらなかった。ドスはニンジャスレイヤーのブレーサーを貫いた。 31
2018-11-14 23:31:43「……グワーッ!」ニンジャスレイヤーの攻めが崩れた。「イヤーッ!」シンウインターはドスを引き抜き、内臓が破裂するほどの前蹴りを叩き込んだ。「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは身体をくの字に曲げて吹き飛ばされた。シンウインターは邪悪な笑いを浮かべ、ドスを逆手に構えた! 32
2018-11-14 23:34:39逆手に構えたドスは彼の手の中でメキメキと音を立て、投げ槍の形を取る!スーサイドは叫び声をあげ、シンウインターにかかってゆく!圧縮されていた時間が解放される!「イヤーッ!」オーロラの槍は放たれ、ニンジャスレイヤーを斜めに貫いた!「グワーッ!」 33
2018-11-14 23:36:49「イヤーッ!」スーサイドはシンウインターに殴りかかる!「イヤーッ!」シンウインターは拳を受け止め、捩じりあげる!「イヤーッ!」「グワーッ!」スーサイドの肘関節が物騒な音を立てる!スーサイドはカラテを込めて耐える!殴り返す!「イヤーッ!」「グワーッ!」 34
2018-11-14 23:38:56拳はシンウインターに届いた!シンウインターは剥き出しの怒りでスーサイドを凝視し、蹴りを叩き込んだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」スーサイドは、しかし、倒れぬ!「イヤーッ!」殴りつける!「グワーッ!」シンウインターは耐える!殴り飛ばす!「イヤーッ!」「グワーッ!」「ナマッコラー!」35
2018-11-14 23:40:42「AAAARGH……AAAAAARGH……!」ドクン!ドクン!ドクン!投げ槍によって氷に斜めに縫い留められたニンジャスレイヤーは激しく痙攣し、叫び声をあげた。オーロラの色彩が槍から溶け出し、黒炎を侵食し始めた。ニンジャスレイヤーは叫び続けた。メンポが軋み、決定的に歪み始めた。 36
2018-11-14 23:42:39「イヤーッ!」「グワーッ!」サツバツナイトの拳が再びザルニーツァを捉えた。彼女は今や空虚な鎧の中で慟哭していた。彼女は戦っていた。戦いながら理由を探していた。だが、サツバツナイトも彼女にイクサを譲るつもりはなかった。捩じった腕で、彼女の拳を受けた。狙い澄ましたタイミングで。37
2018-11-14 23:47:37ザルニーツァの拳から身体へ、痺れに似た感覚が伝播した。サツキ。「ゴボッ」サツバツナイトのメンポの呼吸穴から血が漏れ出た。激情と共に繰り出されるザルニーツァのカラテは彼を追い詰めつつあった。だが、無理を通す。彼は拳を前に押し出した。ジキ・ツキの拳が、無貌のメンポを捉えた。 38
2018-11-14 23:50:06ザルニーツァのフルフェイス・メンポが砕け、弾け飛んだ。倒れ込むザルニーツァの金髪がこぼれ出た。溶岩めいて鎧はすぐさま再生を始めようとした。だがザルニーツァは抗おうとした。何にだ?サツバツナイトのカラテに?否、己に押し付けられたニンジャソウルに……!「AAAAARGH!」 39
2018-11-14 23:52:44サツバツナイトのニューロンに様々な思考が乱れ飛んだ。この敵に何が起きている?シンウインターとスーサイドの近接戦闘の推移は如何に?そして何より、ニンジャスレイヤーは!彼はもはやザンシンすらできぬ!ニンジャスレイヤーをめがけ、走り出す!「AAAAAARGH!」叫びが木霊する! 40
2018-11-14 23:54:36ゴーン……ゴーン……彼らの苦闘の物音ひとつ届かぬシトカの街の空には、その時、どこからともなく鐘の音が鳴り響き、月の影に抉られた太陽は弱々しく明滅し、今や、宙に冷たく静止する黄金の立法体の光は放射状に世界を照らしていた。 41
2018-11-14 23:57:07黄金立方体、即ちキンカク・テンプルからは不可視の道が空を横切り、その道の上を今、正視をはばかる強大な者達が、ゆっくりと歩みを進めていた。道はやがて地上に至るのであろう。 42
2018-11-14 23:59:01空に蜃気楼じみて映るそのさまは、実際蜃気楼ではなく、現実の事象であって、黒いトリイはつらなり、歩む者達はみな狂的な笑いや楽の音を伴っていた。何かの拍子にこれらに焦点をあわせたシトカの人間は発狂した。 43
2018-11-15 00:00:28その光景はこれまでのモータルの世において、狂人の夢、あるいは哲学者の啓示に幾度か垣間見え、恐怖とともに僅かに語り伝えられる現象だった。ヒャッキ・ヤギョ、あるいはワイルドハントと呼ばれる、偉大なるニンジャ達の行進が、このアラスカの地に現出した。 44
2018-11-15 00:04:28【フリージング・フジサン】終わり。 (シーズン2:10/10話【アルター・オブ・マッポーカリプス】に続く)
2018-11-15 00:06:00