「ミス・サイゴン」と「ウィズ」ミュージカルについてのちょっとした覚書

日本でも人気のミュージカル「ミス・サイゴン」が25周年ということで、思う所を呟きました。ついでに「ウィズ」についての呟きもまとめました。どちらも「日本」に、少し関わりのある作品なので。(セルフまとめです)
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ミス・サイゴン」が25周年だそうだ。日本のミュージカル・シーンにとって重要な作品だと思うが、私は好きではない。フランス人が「ベトナム戦争版の“蝶々夫人”ってイケるんじゃない?」という思い付きで書き、イギリスで上演された、ベトナムとは関係のない人達によるベトナム悲劇。志が低いと思う。 pic.twitter.com/iB82uxmJEd

2018-12-13 21:22:46
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ミス・サイゴン」は、米国でも大宣伝で一応ヒットはしたが、批評はあまり良くなかった(トニー賞も役者しか獲っていない)。この作品がハリウッドで映画化されていないという事実が、米国での評価を表していると思う。それはそうでしょう。「ミス・サイゴン」の描くベトナムは類型的で浅い。

2018-12-13 21:36:12
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ミス・サイゴン」には西洋人から見た都合の良い偏見に満ちたアジア(特に女性像)が詰まっているのに、アジア人である日本人が、それを「素晴らしい」と感動して追体験している。日本人の意識はこのドラマでは西洋人側で、ベトナム人に同じような差別意識を持っているから、違和感がないのだろうか。 pic.twitter.com/WEgwe2p8R6

2018-12-13 21:51:22
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

日本版「ミス・サイゴン」に出演した役者が「ベトナム戦争の記録フィルムを見て役作りした」と話したりしているのを見ると、何とも言えない不思議な気持ちになる。それ自体は真面目な行為で、批判されるものではないけれど、そもそもベトナム戦争を真剣に考えたなら「ミス・サイゴン」はないですよね。

2018-12-13 21:58:37
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

それとは別に「ミス・サイゴン」が日本のミュージカル・シーンにとって重要だと思うのは、そのスタイルにある。「ミス・サイゴン」を始めとするロンドン発のミュージカルはブロードウェイ伝統のソング&ダンスの世界とはどこか違う。小林信彦は「これはミュージカルではなくオペラだ」と指摘していた。

2018-12-13 22:08:40
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

そして、日本人はブロードウェイ・スタイル(アーサー・フリード的とも言える)のミュージカルよりも、オペラ風ミュージカルの方が、性に合っていたのではないだろうか?近年、日本にも独特なミュージカル文化が根付いたと感じるのだけれど、その幹にあるのは「ミス・サイゴン」的な世界だと思う。

2018-12-13 22:15:45
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

日本でも舞台ミュージカルそのものはずっと有ったのだが、外部から眺めている者からすると、この20年くらいで「ミュージカルファン」がかなりの厚みを持ってくっきりと姿を現して来た印象がある。しかし、その人たちが好きなのは、オペラであってフレッド・アステアではないのでは?という感じがする。

2018-12-13 22:33:32
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

日本でもミュージカル・スターと呼ばれる人達が出て来たけれど、その人達はまず歌唱力で語られる。ミュージカルファンが盛んに良し悪しを論じるのも歌だ。しかし、米国でミュージカル・スターと言えば何よりダンスですよ。日本のミュージカルは歌偏重でダンスの扱いは弱くなった。違う文化だと感じる。

2018-12-13 22:54:22
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

日本はずっと米国の大衆文化をお手本とし、ミュージカルも米国から輸入して来たのだが、今ひとつ根付かなかった。それが、英国発のオペラ風ミュージカルと出会うことで「これならしっくり来る」と一気に広まった感じがする。考えて見ると、米国風ミュージカルの方が、世界的には異質なのかもしれない。

2018-12-13 23:14:12
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

米国の大衆文化が欧州と違うのは、音楽もダンスも黒人文化の影響があることですよね。ロックンロールは白人のカントリーと黒人のリズム&ブルースの融合だし、ミュージカルと言えばタップダンスだけれど、これも黒人のストリートダンスが源流だ。

2018-12-14 00:18:10
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「2001年宇宙の旅」のIMAXでの上映が決定しましたね。 やはり、皆同じことを考えていたんだな。 twitter.com/woody_honpo/st…

2018-09-21 10:36:11
ブックストア ウディ本舗 @woody_honpo

70mmプリントでIMAXシアターで上映したら、十分に興行が成り立つのではないだろうか。

2018-09-01 19:50:06
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

70㎜全盛時代には、最初から大画面で観ることを前提として画面設計されている映画も多く、それを小さなモニターで観ても「アバター」を2Dで観るのと同じで本当に味わうことは出来ない。そうした作品をIMAXで鑑賞するイベントがあると良いのにとは思う。興行として成り立たないと難しいかもしれないが。

2018-09-21 10:46:11
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

例えば、シドニー・ルメットの「ウィズ」はどうだろう?ダイアナ・ロス主演の黒人版「オズの魔法使い」で、荒廃したニューヨーク・ロケをオズの国に見立て大胆に原色を使った映像が印象的だが、群舞を引きで撮った画面が多いので、小さなモニターで観てもぜんぜんピンと来ない。もう一度70㎜で観たい。 pic.twitter.com/Fvn932tgkA

2018-09-21 12:04:23
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ウィズ」は興行的にも批評的にも成功したとは言えないが、ミュージカルの黄金時代を知る双葉十三郎や小林信彦の評価は高かった。まだ「スリラー」でブレイクする前のマイケル・ジャクソンがかかし役で出演し、鮮烈な印象を残す。ダイアナ・ロスを始め、出演者は皆上手いが、動きのキレが違うのだ。

2018-09-21 13:03:05
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

日本では「ウィズ」が度々舞台で上演されているから「オズの魔法使い」というと、ジュディ・ガーランド版よりも「ウィズ」の方が馴染みがあるかもしれない。ところで「ウィズ」をジュディ・ガーランド版「オズの魔法使い」のリメイクだと感違いしている人も多いが、両者は原作が同じだけで関係がない。

2018-09-21 15:40:46
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ウィズ」は公民権法制定からまだ10年、黒人キャストが多くはなかったブロードウェイに、ダンスも音楽もそれまでとは違う全キャスト黒人の「オズの魔法使い」で殴り込みをかけた。プロデューサーのケン・ハーパーもアフリカ系だ。実は、舞台版「ウィズ」の成功には、ある日本人が大きく関与している。

2018-09-21 16:10:15
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

ブロードウェイでは、ヒットした舞台は延々とロングランするが、失敗した舞台は初日で閉めてしまう。「ウィズ」の初日の批評は賛否半ばでパッとしなかった。失敗と判断し、初日で閉めてしまおうとしたケン・ハーパーに続行を力説したのが、ニューヨーク東宝インターナショナル支配人の大平和登だった。

2018-09-21 16:26:01
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

ケン・ハーパーは続行を決意。「ウィズ」は大ヒットし、その年のトニー賞を7部門で受賞する。大平和登はブロードウェイの主みたいな存在になった、唯一の日本人だ。レストラン「サーディーズ」の壁には、ブロードウェイに貢献した重要な人物の一人として、大平和登の似顔絵が掛けられている。

2018-09-21 16:35:50
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

タップダンスの源流については、アフリカ系の名タップダンサー、グレゴリー・ハインズが主演映画「タップ」で描いている。アフリカ系にとっての本来のストリート・タップは荒々しい踊りで、洗練されたブロードウェイ・タップは、彼らから見れば、本当のタップダンスではないという。 pic.twitter.com/3XrnCtAWQw

2018-12-23 16:04:01
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

ストリート・タップがどんなものかというと、例えば映画「ホワイトナイツ」で、グレゴリー・ハインズが激しく踊るシーンのダンスがそうなのだろう。 pic.twitter.com/BBs6LGr8F7

2018-12-23 16:07:39
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ホワイトナイツ」はソ連から米国に亡命していたバレエダンサーの飛行機がモスクワに不時着してしまい、そこで、ベトナムからソ連に亡命した黒人のタップダンサーと出会う。ミハイル・バリシニコフとグレゴリー・ハインズという、最高のバレエダンサーと最高のタップダンサーのダンス対決が見られる。 pic.twitter.com/BA1KwHiD7u

2018-12-23 16:13:05
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「ホワイトナイツ」の当時、ミハイル・バリシニコフは30代半ばで、円熟期だった。冒頭のダンスシーンが素晴らしい。ダンサーにはピークが2度来ると思う。身体に技術が追いつく20代半ばと、身体能力は衰え始めるが表現力が増す30代半ば。バリシニコフは、その両方のダンスをフィルムに収めている。 pic.twitter.com/0BhacIVHHU

2018-12-23 16:23:59
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

バレエ映画「愛と喝采の日々」には、米国に亡命した直後、20代のミハイル・バリシニコフが出演して、素晴らしい跳躍を見せる。この映画を観た時に少年だった私は、メインの中年女性のアイデンティティ・クライシスはピンと来なくて(いや、良いドラマなのだが)、バリシニコフのダンスに見とれていた。 pic.twitter.com/zJVupQIurf

2018-12-23 16:29:27
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