ジュティス・バトラー講演会メモ& 82年生まれ キム・ジヨン 感想 by erishibata

〇バトラーすら利用とする自称フェミがいるらしい 〇キム・ジヨンはオルグ小説の限界を感じた
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柴田英里 @erishibata

キム・ジヨンはある日突然他人になる。母や大学時代のサークル仲間、まだ赤ん坊の自分の娘など、ジヨンには世代を超えた色々な女たちが憑依し、彼女たちしか知らない事実を語りだす。キム・ジヨンという「普通の女」が、当人の与り知らぬまま、別の「普通の女」たちに連続的に変身していく不気味さ。

2018-12-19 01:19:03
柴田英里 @erishibata

彼女の夫・チョン・デヒョンが妻の豹変に当惑する様は、物語として引き込まれるし、一人の女性の体験が個人のものとしてではなく、他の女性たちも体感する、ジェンダー化された社会構造であることを暴く効果としても極めて秀逸。

2018-12-19 01:19:59
柴田英里 @erishibata

だけど、このジェンダー化された社会構造を様々なファクトを踏まえながら暴き告発していく要素が強まる物語の後半では、家父長制が強く残る韓国の家庭描写や法律の問 題などは勉強になるけれど、前半のユーモアたっぷりの魅力がしぼんでしまっているように思った。

2018-12-19 01:20:51
柴田英里 @erishibata

たぶんこれは、キム・ジヨンの憑依体験という、ユーモアたっぷりの秀逸なギミックが、「女性差別に反対するフェミニズム」という、あまりに明瞭なひとつの仕掛けとしてしか使われていないことが原因だと思う。

2018-12-19 01:22:04
柴田英里 @erishibata

要するに、他の読み方が出来ない、読者に「正解」の読み方しか許さない構造は、「女性の創作」という視点に立てば、表現を貧しくする、予め縛りをつくるものとなるのであり、これは、オルグを伴ういわゆる「フェミニズム小説」と、「女性の創作」との差異であり、多くの女性表現者が遭遇する困難だ。

2018-12-19 01:26:00
柴田英里 @erishibata

『 82 年生まれ、キム・ジヨン』、あとがきに「韓国の女性たちもまた、メディアによる性の商品化を指弾し、家父長的な慣習に叛旗を翻し、自分が経験した性暴力を暴露して厳重な処罰を要求しています。(続く)

2018-12-19 01:29:47
柴田英里 @erishibata

(承前)日本の読者の方々にとっても、『 82 年生まれ、キム・ジヨン』が、自分をとりまく社会の構造や慣習を振り返り、声を上げるきっかけになってくれればと願っています。あなたの声を待っています。」とあるくらいなので、やはりオルグ小説と言わざるを得ないんですよね。

2018-12-19 01:30:14
柴田英里 @erishibata

伊藤順子さんの解説、韓国における軍隊問題とミソジニーや韓国政府の各種女性支援政策、男女の大学進学率の状況、女性差別が絡む事件など、日本人が小説を読んだだけではいまいちよくわからない韓国の状況を補足していることはハングルが読めない人間としては非常にありがたい。

2018-12-19 01:32:47
柴田英里 @erishibata

だがしかし、ここで紹介されている情報には(フェミニズム側にとって都合の良い)偏りがあると思うし、情報を自陣に都合良く選別するのは、中長期的に見れば、フェミニズムの信用を落とす行為であると思う。

2018-12-19 01:33:16
柴田英里 @erishibata

具体的には、韓国でミソジニックな書き込みが多くある掲示板「日刊ベスト貯蔵庫」(「イルベ」)を批判する傍ら、ミソジニー発言を男性への発言に置き換える「ミラーリング」により反撃する「メガリア」を肯定的に紹介しつつ、メガリアの孕む問題はガン無視しているのは都合が良すぎると思いました。

2018-12-19 01:35:36
柴田英里 @erishibata

チョ・ナムジュ『 82 年生まれ、キム・ジヨン』は、「女性の創作」と「フェミニズム創作」の差異と齟齬と繰り返される対立を改めて考える上でとても良い作品だと思いました。ぶっちゃけ前半の緊張感とギミックが後半にもあれば、フェミニズムでありつつフェミニズムというイデオロギーを越えた傑作。

2018-12-19 01:43:42
柴田英里 @erishibata

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2018-12-24 19:04:21