身内用ログ2

イッキに詰め込んだ
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野性の野良 @__noranora

「お客さん、何か腹に入れてもらわないと。ひどい顔してる」 「そ、そう…かな?」 サンドイッチを受け取りながら、無意識に頬に手を触れる。 「そーだよ。でも、美味いモン食えばすぐに元気になるからさ!」 食べてみて?と目で促されて、ヒューゴはそのサンドイッチにかぶりつき、目を見開いた。

2018-07-28 22:06:35
野性の野良 @__noranora

「美味しい…!」 「でしょでしょ?もっと食べていーよ、ほら!」 自分のことのように彼は嬉しそうに笑い、ヒューゴの方へサンドイッチの皿を押し付ける。 「オレのおすすめはね、これ。で、マスターのおすすめはこっち。あ、マスターが作ってくれてるんだけどさ、このサンドイッチ」

2018-07-28 22:06:35
野性の野良 @__noranora

嬉しそうに彼が勧めてくるものだから、本来食が細いヒューゴも手を伸ばしてしまう。こんなにまともに『食事』をするのは久しぶりで、食べることに夢中になっている間に、気づけば皿の上のサンドイッチを全て平らげてしまっていた。 「ご、ごめんね…!?」 「いーよいーよ。それよりも美味しかった?」

2018-07-29 20:29:14
野性の野良 @__noranora

我に返ったヒューゴが慌てて謝ると、彼は笑いながら手を振る。 「美味しかった…」 「でしょ?よかったぁ!」 嬉しそうに彼が笑うのにつられて、思わずヒューゴも口元を緩めてしまう。 それを見て彼は目を細めた。 「ここに来る人が美味いモン食って、幸せそうな顔見るのが好きでさ」 「そう…なんだ」

2018-07-29 20:29:14
野性の野良 @__noranora

彼は笑いながら頷く。そして、正面からヒューゴの顔を覗き込んだ。 「お客さんも、最初は暗い顔してた。悩みでもあるの?――ああ、無理に言わなくていいよ。でも、疲れたときにはここにおいでよ。オレでよければ、いつでも話し相手になったげるからさ」 ヒューゴの手に自分の手を重ね、彼は言う。

2018-07-30 20:34:58
野性の野良 @__noranora

「…優しいんだね」 泣きたいような気分で、ヒューゴは彼の手を握り返す。暖かい手だった。 「へへ。……だって、お客さんのこと、ほっとけなくてさ。あの…たまに、この店の前、歩いてたりしてたよね?」 「そう…だったかな?」 言われてみれば、そうかもしれない。今では研究所が寝床だけれど。

2018-07-30 20:34:58
野性の野良 @__noranora

「そーだよ。でもお客さん前だけ見て歩いてたから。だけど姿勢もよくて、仕事できそうでかっこいいなァ…って思ってたんだ。だから、ここ来てくれてちょっと嬉しかったりする」 人懐こい笑顔で、彼は楽しそうに話す。彼の声を聞いているうちに、沈みがちだったヒューゴの心もだんだんと解れてきた。

2018-07-31 20:44:47
野性の野良 @__noranora

「…なんだか、恥ずかしいな。そんなこと言われると。そんなに目立ってた?」 「目立つっていうか…うん。やっぱり目立つ。人目を惹く、っていうのかなァ…」 「そんなことないと思うけど…」 戸惑うヒューゴに、にひひ、と彼は笑いかける。 「そーゆーとこ。オレ、好きだなぁ」 「好きだなんて…」

2018-07-31 20:44:48
野性の野良 @__noranora

「好きだよ?」 「うう…」 笑顔で重ねるように言われて、恥ずかしさにヒューゴは黙り込む。そんなヒューゴを見て楽しげに眼を細めながら、彼は口を開いた。 「ね、オレ、ティイっての。お客さんは?」 「…、……ヒューゴ……」 普段であれば、軽々しく名前を教えたりはしないのに。

2018-08-01 20:49:48
野性の野良 @__noranora

「じゃ、ヒューゴさんね。いい?」 「…あ、うん。オレも…ティイくん、でいい?」 「いーよ!…でも呼び捨てでいいよ、くん付けなんて慣れてねェし」 「ティイ……」 うんうん、と満足そうに彼――ティイは頷いて、いい名前だね、と呟いた。 「オレ、もっとヒューゴさんと仲良くなりたいなァ」

2018-08-01 20:49:48
野性の野良 @__noranora

「え、」 不思議そうに、ヒューゴは首を傾げる。 「…どうして?オレなんて、一緒にいたって楽しくは…」 「もー!いーの、オレは楽しいからいいの!ヒューゴさんそういうの禁止!」 ばんばんとティイがテーブルを叩くと、カウンターの奥から咳払いが聞こえてくる。ひゃ、とティイは首を竦めた。

2018-08-02 20:26:18
野性の野良 @__noranora

「…怒ったの?」 恐る恐るヒューゴが聞くと、ううん、とティイは首を振る。 「マスターはそんな事じゃ怒んねェよ。ただテーブル叩くなってだけ。…でもヒューゴさん、もっと自信持ってもいいと思うけどなぁ。ヒューゴさん、すごく素敵だよ?」 「そんな――」

2018-08-02 20:26:19
野性の野良 @__noranora

何か言おうとしたヒューゴの口に、すかさずティイは指をあてる。 「はい、それダメだってば。……ね、ヒューゴさん。またここ来てくれるよね?」 「うん……珈琲もサンドイッチも美味しいし、居心地がいい、し」 「オレのこと、うるさく思ってたりしない?」 「そんなことないよ?」 「良かったぁ!」

2018-08-02 20:26:19
野性の野良 @__noranora

がば、とティイに抱きつかれて、ヒューゴは驚きながらも笑う。 「…ありがと、ティイ。これでまた、オレ頑張れるよ」 「そーなの?よくわかんねェけど、ヒューゴさんが頑張れるならよかった!」 もう一度、ティイはヒューゴをぎゅう、と抱きしめる。すぐにもう一度咳払いが聞こえてきて、渋々離れた。

2018-08-03 20:24:17
野性の野良 @__noranora

「…あれ、絶対マスターもヒューゴさんのこと狙ってたんだよ」 「……狙う?って、どういうこと?」 耳元でひそひそと囁かれて、ヒューゴは首を傾げる。 「なんでもない、こっちの話!でもヒューゴさん、オレがいない時以外にここ来ちゃダメだからね?」 「…えと、うーん……それって難しくない…?」

2018-08-04 22:13:37
野性の野良 @__noranora

困ったように目を泳がせたヒューゴに、ティイは名案を思い付く。 「じゃ、ID教えてよ、ヒューゴさんの。それでシフト連絡するからさ」 「ID…ごめん、所内用のアカウントしか持ってなくて…他のSNSってやってないんだ。しちゃいけないことになってるし」 「そうなの?じゃ、あとでメモ渡すからさ!」

2018-08-04 22:13:37
野性の野良 @__noranora

「うん。ティイの顔が見たくなったら、また来るから」 笑いながら、ヒューゴは立ち上がる。 「いつだって大歓迎だからさ、好きな時に来て?呼びつけてもいーから。――オレは、毎日でもヒューゴさんに会いたいけど」 「そ、れは…ちょっと難しいかもしれない、かな」 毎日仕事が忙しくて、と呟く。

2018-08-05 20:24:04
野性の野良 @__noranora

「ヒューゴさん、正直すぎ。…そういうとこ、好きだけど」 からりと笑って言ったティイに、ヒューゴは済まなさそうな顔をする。 「いいよ、忙しいんでしょ?仕事人間です、って顔してるもんね」 そのヒューゴの頬をつつき、ティイは目を細める。 「…だからさ、疲れたらいつでも来ていいんだからね?」

2018-08-05 20:24:05
野性の野良 @__noranora

「うん……」 こくり、と素直に頷いたヒューゴの顔を覗き込んで、ティイは笑う。 「それまでに美味しいコーヒーの淹れ方勉強しておくから。ヒューゴさんには、オレの淹れたコーヒー飲んでもらわなくっちゃ!」 「……楽しみにしていい?」 「もちろん!オレの珈琲しか飲めない体にしてあげるからね!」

2018-08-06 19:58:06
野性の野良 @__noranora

胸を張って宣言したティイに、ヒューゴはふにゃりと蕩けた笑みを見せる。 「へへ。……うん、楽しみにしてるね」 「――ヒューゴさん、それ反則……」 その笑顔をまともに見てしまったティイが、耳まで赤くしてテーブルに突っ伏した。 「え、え、反則?なにが?」 「自覚ないのがなお悪いー……」

2018-08-07 20:40:40
野性の野良 @__noranora

「え?」 ティイの言っている意味がまだ分からずにおろおろしているヒューゴに、頬を膨らませながらティイは言った。 「ヒューゴさん、余所でもそうやって笑ってんの?」 「え?…オレ、笑って…た?」 「そこからかー!」 ティイは悲鳴を上げる。別の意味で、非常に性質が悪かった。

2018-08-08 21:01:53

ここから別の話

野性の野良 @__noranora

「なぁ、おい」 呼ぶ声に、応える義理などない。 サブディスプレイとメインディスプレイを交互に眺めつつ、凄まじい速さで術式を打ちこんでいく。 「なあ」 煩い。差し入れられた固形食を咥えてやってるだけありがたいと思えないのか。とにかく今は、話しかけないでほしい。 あと少し。あと少しで、

2018-08-09 21:30:47
野性の野良 @__noranora

ばつん。 唐突に、魔力供給が途切れる。 「……っ!」 召喚陣から回路を逆流して溢れた魔力に、彼が苦鳴を漏らした。 「まだです!」 「わかってるよ!」 ヒューゴは叫びながら彼の手を握る。魔力の奔流がヒューゴをも襲う。 「先輩、気合い入れてください!」 「無茶言うよなあ!」

2018-08-10 20:36:26
野性の野良 @__noranora

いてて、とぼやきながら彼は歯を食いしばる。 「まだです、まだ――あう!」 「ほれ見ろ!お前の方がダメじゃねーか!」 激痛に耐えられなくなったヒューゴが悲鳴を上げたのを見て、彼は慌ててヒューゴの手を振り解く。肩代わりされていた痛みが全てこっちに回ってくるが――なに、どうということはない。

2018-08-11 21:38:39
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