身内用ログ2

イッキに詰め込んだ
1
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ
野性の野良 @__noranora

だん、とコンソールに拳を叩きつけて、痛みに耐える。このくらいじゃ俺は死にやしねえ。それにまあ、万一俺が死んでも――いや、死なねえけど! 「先輩!」 「だから大丈夫だっての!お前は仕事しろ!」 「……っ!」 頭ごなしに怒鳴りつけられてヒューゴは唇を噛み、無言で彼に背を向ける。

2018-08-12 20:15:33
野性の野良 @__noranora

「あ痛って!やっぱ痛え!」 今度は後ろから上がった悲鳴に目もくれずに、ヒューゴはディスプレイに次々と流れては消えていく文字列を読み取っていく。 暴走の原因解明。対策。魔力の誘導、霊基の安定化。サーヴァントの実体化。同時に自分とのマスター契約。残り15秒で全てをやらなくてはいけない。

2018-08-13 21:25:51
野性の野良 @__noranora

「待って…、これ、と、これ、あと、」 無意識に呟きながらヒューゴは答えを打ち込んでいく。 作業をしながら、確かな手ごたえを感じる。――今回はもしかしたら、上手くいくかもしれない。 ……その期待が、ヒューゴに隙を作らせた。たった一つの致命的なミスに、ヒューゴは気が付かない。

2018-08-13 21:25:52
野性の野良 @__noranora

「これで…!」 驚異的な速度で選択をし、ヒューゴは最後のキーを叩く。 「――え?」 唐突に、足元でざわり、と気配が蠢く。 何がと思った瞬間にはそれは消えてなくなっていた。 「…ひー、痛ってぇ…おい、どうにかなった…のか?」 ぼやきながら尋ねてくる彼に、ヒューゴは頼りなげな視線を向ける。

2018-08-14 21:07:01
野性の野良 @__noranora

「……とりあえず、成功はしたはず、なんですけど……」 「そおかぁ?なんも変わってねーし……!」 首の後ろに手をやりながら辺りを見回した彼が、突然ヒューゴの背後を見たまま凍りつく。 「先輩…?」 彼につられて振り向いたヒューゴも息を呑んだ。 ――ディスプレイに腰かけ、くすくすと笑う人影。

2018-08-15 20:16:25
野性の野良 @__noranora

「ねえ」 ぞくりとするほど、ねっとりと艶を含んだ声。…だが、聞き覚えがある。 「…オレを呼んだよね?」 その声が圧倒的な魔力を持って、ヒューゴと彼に降りかかる。 「ね、――返事は?」 暗闇に、金色の瞳が妖しく輝く。 きらきらと輝くその目がゆっくりと細められて、動けないヒューゴを射抜いた。

2018-08-16 20:58:59
野性の野良 @__noranora

「…あ」 それを見て、ヒューゴは首を振る。信じられなかった。 「どうし、て……」 「どうして。どうして、か。それはオレも聞きたいなぁ。どうしてこんなことになっちゃったんだろうね?」 それは無邪気にそう言い、笑い声をあげる。 「おい」 「んー?なになに、先輩?オレに何か聞きたい事でも?」

2018-08-17 21:22:36
野性の野良 @__noranora

「…気安く呼ぶんじゃねーよ。誰だ、お前」 その視線からヒューゴを守るように、彼が一歩前に出る。凡そ普段の彼らしくない態度に、ヒューゴは少し動揺した。 「…先輩」 「いいから、お前は黙ってろ」 「先輩がダメなら、ヴィンセント、って呼べばいいの?」 「駄目だ」 「もう。意地悪なんだから」

2018-08-18 20:24:27
野性の野良 @__noranora

甘い蠱惑的な声音で名前を呼ばれた瞬間、一瞬だけ彼――ヴィンセントの体が強張った。 「ヴィンセント。…ちょっと長いよね。じゃあヴィンスは?」 「駄目だって言ってんだろ。…お前、元いた場所へ帰れ」 月明りが差して、彼の姿が露わになる。 鋭く息を呑んだ音は、果たして誰のものだったか。

2018-08-18 20:24:27
野性の野良 @__noranora

「帰る場所なんてないもの。……強いて言うなら、ここ、かな」 『それ』は、ヒューゴと同じ姿をしていた。髪は銀、瞳は金。 笑みを浮かべながら、動けないでいるヒューゴのそばに近づき、細い指先でとん、とヒューゴの胸を叩く。 「…そん、な」 「オレは君だよ。君の――まあ、いわば別人格、かな」

2018-08-19 20:51:55
野性の野良 @__noranora

「お前な。冗談も休み休み――」 「冗談に見える?」 そう言いながら、彼はヒューゴの隣に並び、顔を近づける。 髪や眼の色や、浮かべる表情こそ違えど、それはまったくヒューゴと同じパーツを持っているように、ヴィンセントには見えた。 「オレは君のアルターエゴ。誰にも見せない、君の本心…」

2018-08-20 20:18:21
野性の野良 @__noranora

淫らに微笑みながら、ヒューゴの頬に手を添える。 びくん、と大袈裟にヒューゴは震えて、彼から体を離した。 「オレのこと、嫌わないでよ。仲良くしよ?」 それは、言葉通りの意味には感じられない。 「そういうわけで、手っ取り早く魔力の補給をさせてくれないかな?ちょうだい、ヒューゴ」

2018-08-21 20:35:34
野性の野良 @__noranora

「……ダメ、だ。それはできない。君は――認められない。元の世界に戻します」 蒼褪めた顔でヒューゴは呟く。ふうん、と不思議そうに彼は首を傾げた。 「構わないけど。それは単に、オレが君の中に還る、ということだし」 オレの存在を自覚した君がさ、自分の中にいるオレに堪え切れるかな?

2018-08-22 20:50:33
野性の野良 @__noranora

濡れた唇が、にたりと弧を描く。 「君が本当は何を考えているか。言ってあげようか?」 そう言いながら彼がちらりとヴィンセントを見た瞬間、ヒューゴは激しい拒絶反応を見せる。 「だ、め…!言わないで…!」 「……あ?どうした?」 「ふふ、可愛い反応……ううん、なんでもないの、先輩」

2018-08-23 20:12:34
野性の野良 @__noranora

「勝手に先輩扱いすんなよ。後輩キャラってガラでもねーくせに」 「そんなにひどいこと言わないで、先輩」 「あーはいはい、いいから離れろ。暑っ苦しくてしょうがねえ」 馴れ馴れしくヴィンセントの腕に自分の腕を絡める彼を見て、ヒューゴは唇を噛む。 「ね、先輩もオレに還れって言うの?」

2018-08-24 21:04:00
野性の野良 @__noranora

「……」 彼の顔を見て、ヴィンセントはぼりぼりと頭を掻く。 「あー…まあ、悪さしねえって言うんならいても問題はねえかと思うけどさ…あ、でも実験させろ。検証と検査もさせろ。あと戦闘訓練だ。そうだ、霊基の分析もする必要がある。それと制約をかけなきゃなんねえ」 「制約?やだよそんなの」

2018-08-25 21:50:26
野性の野良 @__noranora

「そう言うな。お前が消されないためのモンだ、諦めてくれ」 「……じゃあ、聞いてあげてもいいけど」 「先輩!本気ですか!?」 「ああ。――だって、使えるだろ、これ」 喰ってかかったヒューゴを軽くかわして、ヴィンセントは肩を竦めた。 「使いもんにならないなら、そん時は改めて消すさ」

2018-08-26 20:25:30
野性の野良 @__noranora

「うん。いらなくなったら、消してもいいよ」 彼は微笑んで、すりすりとヴィンセントに体を寄せる。それを大して拒もうとしないヴィンセントにヒューゴの眉根が僅かに寄せられた。 「…誰が面倒見ると思ってるんです。マスターは、オレですよ」 「癪だけど、そうなんだよね。…よろしく、マスター?」

2018-08-27 20:15:12
野性の野良 @__noranora

にっこりと笑って差し出された彼の手を、ぱしんとヒューゴは弾く。 「…嫌われてるなあ」 それでも、彼は楽しそうで。それが余計にヒューゴを苛立たせた。 「オレは君の現身とは言え、ただのサーヴァントだよ。逆らえると思う?」 「…君はオレなんでしょう?――だったら、絶対に君はオレを裏切る」

2018-08-28 19:25:08
野性の野良 @__noranora

「もう。信用ないなぁ、オレ。もっと自分を信じてあげようよ?そうすれば――」 「いい。そんなの必要ない。…先輩、お願いします。徹底的に調べ上げてください。その上で、彼を送還するかどうか――オレが判断します」 「あいよ。……んなら、お前は部屋で休んでろ。ひでえ顔だぞ」 「そんなこと…」

2018-08-28 21:20:00
野性の野良 @__noranora

「いいから、休んでろ。お前がいなきゃ動くもんも動かねえんだぞ」 呆れたように言うヴィンセントにぽんぽんと頭を叩かれて、ヒューゴは俯いて唇を噛む。 「……こ、子供扱いしないでください!先輩のばか!」 その手を跳ね除けると、くるりと二人に背を向けて歩き出す。耳まで赤かった。

2018-08-28 21:20:01
野性の野良 @__noranora

ばたん、と乱暴に扉の閉められた音にヴィンセントと彼は顔を見合わせる。 「行っちゃった。…ね、素直になれないアイツより、オレの方がよっぽど素直だと思うんだけど、どう?」 「は、バカ言え」 彼の腕に腰を回しながら、ヴィンセントは嘲笑う。 「アイツの素直じゃないとこが可愛いんじゃねーか」

2018-08-29 20:32:47
野性の野良 @__noranora

「そだね。オレもそう思うよ、自分の半身ながらさ。…もう。不器用なんだから」 そう呟いたヒューゴ・オルタの表情は、ヴィンセントの知るヒューゴですら、見せたことのない顔をしていた。

2018-08-30 19:11:29

ここから別の話

野性の野良 @__noranora

「いいよ、退屈してたとこだし。カメラは何台欲しい?」 「よっしゃ、話が分かるな。部屋の四隅に1台ずつ、ベッドに隠し3台、天井に1台くれ。3時間くれれば術式を仕込んだ部屋は用意できる」 「誘い込むのは簡単だよね。あの二人、騙されやすいし」 ちょろいちょろいと言いながら二人は握手を交わす。

2018-08-30 19:13:31
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ