編集部イチオシ

#ありもしないはなし 18.9.22~19.1.2まとめ

#ありもしないはなし のハッシュタグで書いた怪談をまとめたもの。
12
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ
坂鴨禾火 @with_NEGI

よく調べてみると爺というほど爺ではなかったし、助平というよりも単なる好奇心といった方が良い話だった。とはいえ当時の感覚からすると四十を過ぎれば立派な爺なのだろうか。油屋の吉蔵というのが話の主人公である。神経痛だか関節痛だかが酷くて近くの温泉郷に湯治に来ていた。

2018-11-11 23:24:02
坂鴨禾火 @with_NEGI

温泉郷は山の中にあるが、そこからさらに道もない山の方に向かう籠があるのをこの吉蔵という男は目撃したらしい。この籠に乗っていたのは女人で、たいそうな美人だから助平心を起こした――というのは話に尾ひれがついたのだろうが、気になったので尾けた。案の定見つかる。

2018-11-11 23:30:09
坂鴨禾火 @with_NEGI

吉蔵がつけたのはどうやら大変な家の奥方のようで、放逐というわけにもいかなかったのだろう、山中の一ツ家のようなところに軟禁される。重湯を飲まされる。来る日も来る日も飲まされる。逃げようとしたり、呪いごとを唱えようとすると重湯を汲む柄杓でぽかりとやられる。そして重湯を注がれる。

2018-11-11 23:36:23
坂鴨禾火 @with_NEGI

もう逃げようという気もなくなって重湯を飲まされていたある日、何もしてないのにぽかりとやられて気が付くと温泉郷の入り口に倒れていたそうだ。吉蔵がいなくなってからもう十月も経過していたそうだから、その間毎日毎日重湯を飲まされていたということになる。

2018-11-11 23:41:27
坂鴨禾火 @with_NEGI

手足を縛られてろくに動けなかったため吉蔵の腹は膨れ上がっていたが、その腹が妙な具合で痛むので、医者にみせると、なんと吉蔵は妊娠していたそうだ。

2018-11-11 23:41:27
坂鴨禾火 @with_NEGI

吉蔵は男である。どこをどうやれば懐胎するのか皆目見当がつかない。入る穴もなければもちろん出る穴もないので、臨月を過ぎてもうんうん唸るばかりである。しまいには非常に腹が膨れて、いよいよ具合が悪くなってきたので、腹を切るほかないということになった。

2018-11-11 23:44:01
坂鴨禾火 @with_NEGI

相談の末獄吏が呼ばれて、介錯に使う段平でばさりとやったところ、腹の中からごろりと赤子が出てきたそうだ。腹の痛みは治ったが、傷が元で吉蔵は死んだ。吉蔵には子があり、すでに家業を継いでいたことから吉蔵の腹から出てきた子供は他所にやられた。その後の消息迄は追っていない。

2018-11-11 23:49:36

屋上屋

坂鴨禾火 @with_NEGI

温泉郷に行く道から外れたところに屋上屋という中華屋がある。本当は何というのか忘れたが、元は禅寺か何かだったのを、金持ちが別荘として買い、それから遊園地になって、中華屋はそこの店だったが園が潰れて中華屋だけが残った。 #ありもしないはなし

2018-10-31 21:49:57
坂鴨禾火 @with_NEGI

鬱々とした松の緑が突然開けて、中華風の楼閣が池の畔にたたずんでいる。池にかかる赤い橋は、往事、遊園地側からの入口だったそうだ。物心ついたときにはすっかり人気の店だったから数えるほどしかいったことはなかったが、常連曰く、あの店の屋根の下に本来の屋根がもう一つあるという。

2018-10-31 21:56:48
坂鴨禾火 @with_NEGI

金持ちがまだ存命だった頃に、何を思いついたのか突然屋根の上に屋根を作り始めたそうだ。だからあの屋根の下には本当の屋根があるのだ、あるのだと言っていた。建物の老朽化を機に中華屋が下の街に降りてきて、そのタイミングで市役所の調査が入った。

2018-10-31 22:03:46
坂鴨禾火 @with_NEGI

果たして屋根の下に屋根はあったそうだ。上の屋根よりさらに古色然とした色の瓦が敷き詰められて、上の屋根と下の屋根との間は一メートルもなかったそうだ。金目のものは特になかったそうだが、屋根と屋根の間に潰されるように身元不明の遺体が一つ入っていたそうだ。

2018-10-31 22:09:02
坂鴨禾火 @with_NEGI

この屋根と屋根の下にはいっていた人の身元は未だ不明だという。

2018-10-31 22:09:37

団地の横の道・犬を連れて歩くこと

坂鴨禾火 @with_NEGI

夕方から日の入りくらいにかけて散歩をしてきた。いつもは避けるのだが、団地の横の道をたまたま通る。この道には二つほど、お化け話があるそうだ。 #ありもしないはなし

2018-10-28 22:09:55
坂鴨禾火 @with_NEGI

そのせいなのか犬を連れて出歩く人影が多い。お化けの方が犬を怖がって逃げていくから、みんな犬を飼うそうだ。ただ、もともとが人であるなら犬は怖くなさそうなものだが。

2018-10-28 22:11:58

団地の横の道・血染めの手ぬぐい

坂鴨禾火 @with_NEGI

一つは通りの端のあたりで交差する元小川の痕跡あたりで、血染めの手ぬぐいがかかっているという怪異。昔あった橋の欄干だけ残っていて、そこに引っかかっているそうだ。何度うっちゃっても、いつの間にかかかっているそうだが、お目にかかったことはない。 #ありもしないはなし

2018-10-28 22:14:07

団地の横の道・コインランドリー

坂鴨禾火 @with_NEGI

もう一つは通りの中ほどにあるコインランドリー。ここに夜行くと髪の長い女が来て、回っている洗濯物を眺めている。しばらくすると消える。消えるが、乾燥していた洗濯物に血がついていることがある。隣の家に管理人がいるから、見せると返金してもらえる。 #ありもしないはなし

2018-10-28 22:18:04
坂鴨禾火 @with_NEGI

あすこがつぶれないのは近くに男子学生が多く住む寮があって、そこの客が多いからだと聞いた。寮生の間ではこの話は聞いたことがないということだったから、出る時を選んでいるのだろう。

2018-10-28 23:27:46

団地の横の道・団地とは別の廃屋

坂鴨禾火 @with_NEGI

でももう一件見た気がするんだけど。 #ありもしないはなし

2018-10-28 22:18:54
坂鴨禾火 @with_NEGI

団地の近くに、たぶん団地とは別にアパートが一棟立っている。非常灯はついているが、どの部屋の窓にもカーテンがかかっていない。ベランダにも何もない。たぶん空き家だと思う。

2018-10-28 23:39:49
坂鴨禾火 @with_NEGI

思うんだけど、その中の一つから顔がのぞいていた。やだなあ。

2018-10-28 23:39:50
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ