ダウンロード違法化等について議論した著作権分科会 法制・基本問題小委員会(2019年1月25日)のまとめ
これまでの経緯
発端
現在の著作権法では、インターネット上で流通する著作物をダウンロード保存する場合に、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」(私的使用)を目的とするときには、当該ファイルが違法にアップロードされたものであるという「事実を知りながら」、録音又は録画を行う場合に限って違法ダウンロードに当たるとされている(著作権法30条1項3号)。
この違法ダウンロードについては平成24年の著作権法改正で罰則が設けられた(119条3項「二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」)。
ここでは保存の方法が「録音又は録画」に限られていることから、もっぱら、音楽ファイルと映像ファイルのみが対象とされており、漫画やイラスト、写真、小説、グラフ、地図などのコンテンツについては、たとえそれが違法にアップロードされたものだとの事実を知りながらダウンロード保存しても、違法ではない。
ところが近時、漫画の海賊版サイトが大きな問題となったことで、海賊版サイト対策として、違法ダウンロードの対象を現在の音楽・映像からコンテンツ一般へと拡大すべきではないかという問題提起がなされた。
そこで、違法ダウンロードの対象を拡大すべく著作権法を改正することの是非について、文化審議会 著作権分科会 法制・基本問題小委員会で議論されることとなった。
これまでの議事録はこちら
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki
(平成30年度 第4回(2018年10月29日)以降)
パブリックコメント(2018年12月10日から2019年1月6日まで実施)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001021&Mode=1
懸念
ダウンロード保存にはスクリーンショットなどの日常的な行為も含まれるため、対象を拡大すると国民生活に過度の悪影響が生じるのではないかとか、海賊版サイト対策というのであれば対象を漫画に拡大すれば十分であって、それ以外のコンテンツにまで一律に拡大することが必要だとする根拠はあるのか、2018年10月からわずか数回の会議で結論を出すのは拙速ではないか等といった問題点が指摘されている。
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画像や文書も…ダウンロード違法化、対象拡大?(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20190122-OYT8T50033.html -
海賊版利用、「一刀両断」に批判 ネット上のすべて違法化、「議論拙速」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13858849.html -
日本マンガ学会が静止画のダウンロード違法化に反対声明 「ユーザーの研究や創作を阻害する」(ねとらぼ)
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1901/24/news108.html -
海賊版DL規制、被害者の漫画家まで批判 拙速な文化庁(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASM1L3W11M1LUCVL00J.html
2019年1月25日の会議
この日の会議では、年末年始に行われたパブリックコメントにおいて寄せられた意見なども踏まえつつ、これまでの議論の取りまとめが行われた。
以下はその傍聴者のツイートのまとめ。(1つだけ個人を特定した暴言に当たるものを除外している。)
傍聴者ツイート
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第8回)は予定終了時間を30分超過して12時30分に終了。
2019-01-25 12:49:52今回の争点はやはりダウンドード違法化の拡大について。 パブリックコメントは報告書全体で718件だったところ、ダウンロード違法化についての意見は534件だったとのこと。
2019-01-25 12:51:43従来は映像・音楽に限定されていたダウンロード違法化を民事刑事問わず他の著作物に限定なく及ぼすとの報告書案に対しては、一般国民の生活に及ぼす影響等に懸念を示す意見が多数あったとのことで、今回示された修正案はこれら及び委員からの個別意見に対応したもの。
2019-01-25 12:54:15しかし、影響への懸念等を述べる意見は脚注に落とされていることが多いなどの記載ぶりの問題等々もあり、委員(特に50歳以下の若手?の委員)からは異論が噴出。前田(健)委員、生貝委員からは今回でのとりまとめは認められないと、知財本部における海賊版対策検討会議の最終回のような流れに。
2019-01-25 12:56:41ただ、今年度中に再度検討の機会を設ける時間的余裕はない(2月13日の文化審議会著作権分科会に上げなければならない)という事情から、委員会で議論を深めるべきとの意見は容れられず。
2019-01-25 12:59:49最終的には、水田著作権課長が発言を求め、事務局が委員から個別に意見を聞き最大限本文中に反映して修正し、最終的には茶園主査に預かっていただくこととしたい旨提案。
2019-01-25 13:01:17生貝委員からは、当事者である漫画学会からも意見が提出されている、政策形成プロセスの正当性の観点からも意見を聞くべき、との発言があったものの、最終的には茶園委員から課長発言の線で提案がされ、一部委員が「異議無し」と呼ぶも、多くの委員が無言でこれを承認する格好。
2019-01-25 13:03:46今後、来週中目処に委員の個別意見を踏まえ事務局において修正の上、修正後の小委報告書を公開、2月13日の著作権分科会にかけることになる方向のようです。
2019-01-25 13:05:44小委は、最後に水田課長から、ユーザーに対する影響にも十分配慮して迅速に対策を講じて参りたい、分科会でのとりまとめの後、時期通常国会に改正法案を提出したい、引き続き御指導を、との挨拶及び委員への感謝の言葉により終了。
2019-01-25 13:09:07補足しますと、本日の会議には、田村委員(欠席)及び前田(健)委員からの意見書(傍聴者にも配布)、前田(健)委員ほか4委員(計5委員)連名の意見書(席上配布)が提出されておりました。
2019-01-25 13:15:08詳細は未確認ですが、いずれも慎重な検討を求める(あるいは現状では報告書とりまとめには反対する?)旨の意見が示された模様です。席上配布の意見書も他の資料と併せて恐らくいずれウェブサイトで公開されるのではないかと思われます。
2019-01-25 13:18:07於 スタンダード会議室新虎ノ門店ホールB(港区虎ノ門3-6-2 第二秋山ビル4F)/ 文化庁 文化審議会 著作権分科会 法制・基本問題小委員会 第8回。傍聴席確保。画像は座席表と次第。 pic.twitter.com/DXqPPJ1AZs
2019-01-25 09:46:50うーん。「他の権利制限規定の活用」でダウンロード違法化を回避すべきじゃない的な事務局見解が示されてるのだけど、判例だと「権利制限規定は権利を制限するものなんだから厳密に解釈すべき」とかなってて、引用の複製と引用すべきか検討するための資料収集としての複製は区別されそうなんだよね。
2019-01-25 10:50:22まー「引用すべきかどうか検討するための資料収集としての複製」は「私的複製」かっちゅー疑問点もあって、大学教授が自宅で複製すれば私的複製で、大学の研究室で複製すれば私的複製ではないとかの説(裁判例はなってないので実務の結論は出てない)もあるらしいのだが。
2019-01-25 10:53:14資料2、81ページ脚注筆が滑ってない?要約すると「冤罪・自白強要が起きてもそれは刑事実務の課題で著作権法の問題ではない」とか書いてる。
2019-01-25 11:07:56そーいった課題を避けるため、録音録画のダウンロード違法化の際には国会において付帯決議が行われたし、文化庁と警察庁の協議の上に警察庁から通達が出た(からこそ弊害が避けられた) と認識してるんだが。
2019-01-25 11:10:02だからさー、24年改正が議員立法だからあまりそこに踏み込むと文化庁の解釈の信頼性に疑いが出てくるので踏み込みたくないって、それは審議会の委員として怠惰だと自己紹介してるようなものだろう。よく恥ずかしげもなくそんなことが言えるな。
2019-01-25 12:18:0912:30 閉会。第二章(ダウンロード違法化)を丸々削って継続審議にとの慎重意見が多く示されたけど、海賊版対策として緊急性が高いのでとのことで、今回の意見を受けての文言修正は主査一任で報告書に残る形になった。
2019-01-25 12:33:41違法ダウンロード拡大。委員5人連名の意見書が机上配布されるなど、根本的な疑義が出されるも、スケジュール最優先の事務局が押し切りました。
2019-01-25 13:11:14主査と事務局のあいだで報告書の書きぶりを一部改め、書面で委員の了解を取って来月13日の親委員会に報告の流れ。
2019-01-25 13:16:40