感覚としては分かるのですけれども、逆にいえばそうしたわがままを言わなければ変わらない世の中というのは、障害者運動の中では例えば「青い芝の会」というとても有名な。 渡:もうそこから始まったといっても過言ではないですよね。
2019-01-25 21:31:57荻:そうした団体が、社会に対して「正当なわがままをなぜ叶えないのか」ということを言い続けてきたがゆえに、私たちの社会はいろいろ便利になっている面もあるわけですよね。
2019-01-25 21:31:57渡:本当に豊かになっていく、その先駆けをつくってくれたのが青い芝の会ですよね。というのは、それまでは介護という問題は障害児であれば母親がするものだったし、高齢者であればいわゆる嫁がするものだ、要するに介護は家庭の問題で、社会が考えるべき問題じゃないというのが、
2019-01-25 21:34:56よく日本型福祉社会といったりしますけど、それに対してお母さんが障害児を殺してしまうという事件が相次いだのですよね。1970年代ですけど。それに対して青い芝の会が立ち上がって、介護は社会の問題だろうということをいろいろな側面から訴えていって、今介護の社会化とよくいわれますけど、
2019-01-25 21:34:56それは介護保険制度にも先駆ける考え方だったと思うし、介護はやはり社会全体で考えるべき問題だという。地域自体も、バリアフリーだとか駅にエレベーターが付いているだとか、それらもすべて自然の流れでできたわけでもなく、鉄道会社が思いやりで作ってくれたはずもなく。
2019-01-25 21:34:56荻:バスも乗ったし、今度は「乗りまーす」ということをあらかじめ連絡して乗るっていうことも現代でも一つのデモンストレーションとしてやっていて、実はそうした抗議が研修になっているという面も。
2019-01-25 21:34:57渡:そうです、今では。だから2週間前に予約しなきゃ乗れないとか、付き添いがいなきゃ乗れないとか、本当に「今度来たら階段から突き落とすぞ」みたいなことを言われながらも、それでも負けずに彼らが外に出ていって、
2019-01-25 21:34:57エレベーター設置運動、駅の段差をなくしてほしいという運動を30年以上続けてきた結果、我々はそれを全く知らずに……私も今札幌在住なんで今は東京に出張に来ていますが、重たいキャリーバッグをズズズと引いて、やっぱりエレベーターなしには移動も大変で。
2019-01-25 21:34:57荻:私たちはみんなね、「マイノリティのわがままだ」と当時バッシングされていたものにタダ乗りしているんですよね。実は。だから「障害者はなぜ生きているのか」みたいなことを問われることもありますけど、この本ではそうしたことに対して、
2019-01-25 21:36:40真正面からいろいろいな人との出会いなどを通じて「いや、そうした人と社会をつくっていくことが豊かな社会なんだ」という答えを出していますよね。
2019-01-25 21:36:41渡:むしろ彼らの存在によって、社会が助けられている側面が非常にたくさんあるってことをみんな忘れているというか。だから、「なぜ税金を重くしてまで障害者とか高齢者を助けなければならないんですか」みたいな素朴な問いがネットなんかにはよくあるんですけど、それは逆で、
2019-01-25 21:36:41彼らが社会を助けてくれたり豊かにしてくれている側面もたくさんあるということをぜひ知ってほしいなと思います。 荻:視点を変えてほしいと思いますね。(了)
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