刀剣の男子と一般人の俺が運命の出会いをしてラブラブになった訳だが

そう…パチモノAVだよ!!!!!!!!
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帽子男 @alkali_acid

「っていうか通報すればいいじゃん通報。まとめて逮捕…」 携帯を出したところで圏外。Wi-Fiもなし。 「伊東まじあいつ性格悪いな…外出てやろ」 だが入口付近では美形同士が舞踏のごとき滑らかな動きで撃剣を重ねている。 「あ、ふーん」

2019-01-30 21:25:32
帽子男 @alkali_acid

しかも気づいたが、刀剣の男子。伊東より腕が落ちる。動きは速いが技は粗削りだ。足運びも古臭い、近代以前の武術のそれで無駄が多い。 「…ははは!どうした刀斬り!!その棒きれで俺に勝てるか」 殺人鬼の声がひずんでいる。額から鼻にかけて、手に持つ直剣と同じ血管の模様が浮かんでる。

2019-01-30 21:28:16
帽子男 @alkali_acid

不意に警棒が半ばから断ち落とされる。 男子は鍔迫り合いを避けていたが、伊東は幾度も食らいつくようにしてまず武器を奪いに行き、とうとう成し遂げたのだ。とはいえ金属でできている得物をあっさり二つにする膂力と切味は驚嘆すべきものがあった。

2019-01-30 21:31:18
帽子男 @alkali_acid

「刀斬りができるのはお前だけではないぞ…俺も…女の骨と肉以外に歯ごたえのあるものが欲しかったところだ…さあ…来い」 伊東はよく分からないおしゃべりをしている。男子は追い詰められている。 「よーしよし。はい分かりました」 デブが手を上げる。 「決着をつけよう伊東君!」

2019-01-30 21:33:15
帽子男 @alkali_acid

「黙っていろブタめ」 「中学時代一度も俺に勝てなかったくせに偉そうだなあ」 「…っ…ほざけっ」 「喘息がなけりゃ高校もそこから先も俺の方が上だった。自分でも分かってんだろ。速攻の土方に勝ち逃げされたって」 「…まけおしみだ!!」 「今はっきりさせてやるよ」

2019-01-30 21:35:43
帽子男 @alkali_acid

土方くんは踏み出す。軽やかな足取り。フェザータッチステップ、デブ。 「ほら。来い」 男子には、さっさと逃げて警察でも呼んでくれと念じながら。 「土方さんっ!」

2019-01-30 21:37:09
帽子男 @alkali_acid

突っ走ってくる。男子が。外とは逆方向に。デブの方へ。 「は?」 跳躍し、宙で回転した男子はそのまま煌めく一振りの刀になる。 「うわ、こわっ」 奇跡に近い幸運で柄をつかみ取る。

2019-01-30 21:38:30
帽子男 @alkali_acid

「僕を…あなたの佩刀になさって下さい」 「!?いや抜き身で飛んでくるのめっちゃ危なくない?」 「すいません…」 咆哮を上げて元エースが補欠に襲い掛かる。 「ほぎゃあああ!?」 鍔迫り合いになる。

2019-01-30 21:39:49
帽子男 @alkali_acid

打ち合うたび、直剣と刀が軋みを立てる。 苦痛にもがく獣のように、伊東の体さばきが乱れる。 「刀斬りぃい!!!!」 「…ぶひー…ぶひー…ぶ…あれ?苦しくない」 素早く間合いをとる土方くん。なぜかいつもより呼吸が楽だ。 「僕があなたを支えます」 刀が鞘なりをさせて歌う。

2019-01-30 21:42:30
帽子男 @alkali_acid

「あ、ふーん」 「…やつは処刑の直剣。多くの罪人と…無辜のものの首を落とし…血に穢れ、魔性となった刃です」 「こわ…」 「ですが僕は刀斬りの太刀。多くの罪ある刀と…その使い手を斬り伏せてきました…僕が刀の姿をとって戦える限り…そしてあなたのような使い手がいる限り、負けはしません!」

2019-01-30 21:45:07
帽子男 @alkali_acid

「なにそれこわ…」 「えっ」 噛み合わない主従に、全身に血管を浮かび上がらせた剣鬼は撃ちかかる。 デブは胸いっぱい深く息を吸い、迎えるように地摺りの刃を放った。

2019-01-30 21:47:54
帽子男 @alkali_acid

刀斬りが処刑の直剣に食い込み、鋼鉄の背骨を食い破り、強引に断ち切った。 魂消(たまぎ)るような絶叫を発し、刃に憑つかれた男は冷たい床に堕ち、四肢をばらばらにうごめかせてもがいた。 「あぎ…あああ!!!」 「きもちわるっ…!?」 飛びのく土方くん。

2019-01-30 21:50:03
帽子男 @alkali_acid

「お見事です。土方さ…土方様」 「ふっ…速攻の土方…こういう体力使わないでやる斬り返しも得意だから…」

2019-01-30 21:52:09
帽子男 @alkali_acid

いつのまにかスーツ姿に戻った男子、刀斬というべきか、美人だけど男の、なんだか分からないそいつが、デブのIT土方にしがみついていた。 「…不思議です…あなたからは剣客の薫りがしないのに…」 「ちょ、え、近…」 「僕は…」 佩刀は主人のぶあつい顔をほっそりした指で捉えると、唇を奪った。

2019-01-30 21:55:04
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 地下駐車場でなんかすごいことになった伊東が見つかり、固く握りしめた折れた直剣から別人の血液が検出された。ベトナム人プログラマーのそれと一致し、まあ動かしようのない証拠という感じになった、らしい。

2019-01-30 21:57:06
帽子男 @alkali_acid

「あのへんな剣と出会わなければあいつもな…」 「魔剣はふさわしい使い手を求めます。伊東さんは今の世には珍しい真の剣客でいらした。故にこそ血の飢えに抗えなかったのでしょう」 デブがベッドの中で携帯をいじっていると、うしろから美形がぴったりと寄り添って囁く。二人とも裸。

2019-01-30 21:59:37
帽子男 @alkali_acid

「おうふ…耳…ちょっ…噛まないで…」 「申し訳ありません…戦のあとはいつも昂りが抑えられなくて…」 「腹を…腹を揉むな…んぉ…なにこれちょっと気持ちいい…」 「くすくす…」

2019-01-30 22:01:24
帽子男 @alkali_acid

また飽かず戯れを始める刀斬に土方くんはどぎまぎしながらも、たどたどしい愛撫を返した。

2019-01-30 22:02:55
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ "もう酒が飲める。付き合え" というメッセージがまだ未読なのをにらんで、ベトナム人プログラマー、ちなみにスアンさんという名前だが、長い黒髪をかきあげた。 「…めずらしい」 ほかに友達がいない土方はいつもならすぐ反応するのにどういう訳だろうか。

2019-01-30 22:06:10
帽子男 @alkali_acid

白龍の鱗のお守りだとかいう謎の欠片を手にとって眺める。 日本の迷信だろうか。意味不明だが面白い。きれいに磨いて、いつもは財布に入れておいて、時々眺めるようにしている。軽く接吻してから、またしまい、まぶたを閉ざす。あえかなおとめの唇には、やがて穏やかな笑みが浮かんだ。

2019-01-30 22:10:57
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