- eguchi2018
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Masters, Roger D. (1989) The Nature of Politics, Yale University Press. 「生物学と政治学の最初の堅固でバランスの取れた綜合」(E. O. ウィルソン)らしい。最近80sにハマっている私…シーナ・イーストンみたいな(笑)社会生物学の勢いが徐々に萎んで、90年代に進化心理学が現れるまでの端境期
2019-02-06 06:16:59「二重の皮肉がある。第1に、政治哲学の伝統は、今我々の大学や知的生活でなされている厳格な[政治学と生物学の]区別をしない思想家たちの手で始まり花開いた。…第2の皮肉…人類は初めて、遺伝子工学に従事する能力を得たのに、社会科学は概ね生物学の研究者によってタッチされないままだ」xi-xii
2019-02-06 09:27:14「我々の種—アリストテレスがかくも正しく『政治的動物(zoon politikon)』と名付けた—の行動は、多くの重要な点で自然界でユニークだ。だが、生物学を無視するか、ヒトの研究での使用はイデオロギー的に動機づけられると想定する社会科学者たちとは異なり、私の分析は断絶を克服しようとする」xiii
2019-02-06 09:54:50著者の師レオ・シュトラウスや、アラン・ブルームが構想していた政治学と自然科学を関連付ける試みを引き継ぐ書であると。xiii シュトラウスやブルームはそういう位置づけでええの?
2019-02-06 10:08:35「私は本書において、ヒトの本質…と国家…についての積年の理論的問題への『自然主義的』アプローチの基礎づけを進める」xiii-xiv
2019-02-06 10:13:17「生物学の現在の研究を基にしてアリストテレスに近い見解に回帰するというのは、極度に不可解なことに思われるだろう。一方で教科書は、アリストテレスがどうも進化の概念に敵対的だったらしいと述べている。他方で彼の政治的・生物学的理論はしばしば、反科学的正統派を支持するために使われる」xv
2019-02-06 13:08:00ソフィストのアンチフォンは「ヒトは個人的利得や快楽を求めるのが自然で、協力や利他主義はただ社会的習慣の結果として説明できるだけ」としたが、これに反論したアリストテレスは「社会的協力の発達ないし進化的説明」をした…「協力は自然で…利他主義や共有…の徳はヒトの本性の十全な発達」pp.3-5
2019-02-07 06:44:27「社会的行動は、種とその環境の間の複雑な相互作用に言及することなしに、個体の形質に還元したり、あるいは個体の形質から完全に導出したりすることはできない。…個体の動機づけを、集団や種の性質から演繹すれば、それも正しくないだろう」p.16.
2019-02-07 11:22:06「妊娠した母親と他の集団メンバーの間の新しい形の社会的協力が、過去50万年のうちに起きたらしいという仮説……大きなヒト科の脳は社会的協力の結果、とりわけ子ども誕生時の死亡率を下げるために母親を教育ないし援助したことの結果であるという仮説」pp.24・26.
2019-02-07 14:22:38ルソー『社会契約論』の一節「人間は自由に生まれるが、しかしどこでも彼は鎖につながれている(L'homme est né libre, et partout il est dans les fers.)」の曖昧さ。p.27.
2019-02-07 14:23:58「フランスでも米国でも、顔の表現がライバルよりもより[複数の感情が]混じり合っていると知覚された[政治的]リーダーは、潜在的な支持者にポジティヴな感情を伝えることができなかった。他の霊長類と同様、恐れや不安感の手ががりを表に出すヒトのリーダーは、リーダーとして効果的になれない」64
2019-02-08 02:13:15P. マックリーンの「三位一体脳(triune brain)」…脳幹(「R-コンプレックス」、爬虫類で出現した自動的反応)はプラトン的ソクラテスの「食欲」に、辺縁系(哺乳類で出現した感情的・社会的つながり)は「精神性」(thymos)に、大脳皮質は「理性ないし発話」(logos)に対応。pp.67-8.
2019-02-08 06:25:48「ヒトの本性は複雑であるが、科学的方法論を使って理解し得る。そのことは、ソフィストのアンチフォン、ホッブズ、ロック、そしてスキナーのような現代の行動主義者を生んだ快楽ー苦痛計算の概念が、単に馬鹿げていることを意味しない」p.68.→
2019-02-08 06:30:43承前「そうした理論家たちは、種の進化レベルで機能する個体的プロセスに置き換えているのだ。にもかかわらず、社会が完全にヒトの意志や合意の結果であるとか、あるいは我々の社会的行動の可塑性がヒトの本性の欠如に帰着するとか(実存主義者も主張したように)想定するのは、もはや適当でない」p.68
2019-02-08 06:37:44「積年の理論的疑問には、ヒトの表出的で社会的な行動のレパートリーが生物学に基づいているという証拠によって答えることができる。すなわち、競争と協力の双方は、我々の種にとってまさに本性なのだ」p.69.
2019-02-08 06:42:12「有機体進化と社会文化的進化の間の驚くべきアナロジー…ヒトの学習を通じた文化的行動の伝達は…遺伝を通じた適応的形質の伝達とパラレルでありアナロガスな進化的メカニズムである。…この点でヒトの文化がユニークであるべき理由を見るのは難しい」pp.71-2. 今日的に見るとややゴリゴリかと(笑)
2019-02-09 04:15:52「[旧世界ザル・新世界ザルの進化と]同じ、似たような生態学的条件への独立だがパラレルな適応が、ヒトの文化でも『複線進化』として叙述されてきた」p.73.
2019-02-09 04:31:14「全てではないにしても大部分の動物の言語からヒトの言語を分ける1つの特質は、[音素と形態素の]『パターン化の二重性』と呼ばれてきた。…4つのヌクレオチドの『遺伝的アルファベット』に基づく遺伝的コードも、これと同じパターン化の二重性を持つ」p.81. ヤコブソンもコドンと音素の類似に言及
2019-02-09 22:00:37「遺伝子と言語学的シンボルは同じ構造的属性を持っていると言えるだろう。すなわち、離散的で無意味な構成素(音素ないしヌクレオチド)が、『示差的な特徴』を通じて『二項対立』へと構造化され、より長くて機能的な『ひも』ないしメッセージを作る意味のある単位へと結合される」p.83. 安易だのうw
2019-02-09 22:08:43動物のコミュニケーションはアナログ的、ヒトの発話はデジタル的なる対比。86-7 「音の頻度の連続的な変化はヒトの音声装置によって生み出されるので、我々の音声言語は、連続的に変わり得る物理的生育環境と記号それ自身の間での異なるレベルの無意味でデジタルな構成素(音素)の出現を反映する」87
2019-02-10 03:39:10「三者パターン化(triadic patterning)…文あるいは語の連なりあるいは形態素、発話の第3のあるいは最も複雑なレベルは、アナロジカルなコミュニケーションを提供する」p.87. ここ何が三者なのかようわからん
2019-02-10 04:09:29